りょ

俳句結社「秋草」|第14回石田波郷新人賞|第5・6回笹井宏之賞最終候補、第66回短歌研究新人賞最終候補|X→ @yakou_haiku

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最近の記事

「秋草」2024年10月号

 「秋草」の山口遼也です。  11月号が届いたので10月号の話をします。寒いです。  一句目、冷奴にほどよい驚きがある。外の景から一気に手元の豆腐にカメラが切り替わり、最後まで読んで初めて「松の木が見える食事の一場面」という全体像を引きの画で捉えることができる。取り合わせのゆかしさを楽しめる一句だ。松の木に美醜があるという主観的な把握が、生活感のある冷奴に飛躍するためのある種の伏線としても働いている。食べながらも松を見比べるところに意識があるというのも、冷奴らしい感じがする

    • 「秋草」2024年9月号

       お久しぶりです。「秋草」の山口遼也です。何食わぬ顔で再開します。  これは「秋草」の最新号が届いたタイミングで最新号の一つ前の号の句を紹介するnoteです。1年ほど前の私いわく、  真理だ。  とはいえ最近は「秋草」会員の句集がぞくぞくと出版されているのでそちらも近いうちに取り上げたいです。  では、10月号が届いたので9月号の話をします。  一句目。対句表現でありながら互いの要素は意外と遠くない。夕焼が冷めてゆくとともに宵が始まってゆき、そこに発酵のイメージが心地よ

      • 「秋草」2023年11月号

        「秋草」の山口遼也です。 明けてます。今年もよろしくお願いいたします。 12月号がかなり前に届いていたので11月号の話をします。  重なったバケツから一つとって、墓参りに使う。ちょっと力が要る感じとかバケツの抜けたときの気持ちよさとか、素朴だけど深く共感できます。それに「バケツからバケツを抜く」というのは意外と盲点というか、言われてみれば面白いことをしていたことに気付かされる。発見の句というより再発見の句というか。再認識?難しいことは分からないのですが……。  この句は一物

        • 「秋草」2023年10月号

           「秋草」の山口遼也です。  11月号が届いていたので10月号のことを書きます。  好きな句だが、かなり感覚的な取り合わせだ。概念的なフレーズと季語を並べた句のふしぎな魅力はなんだろう。〈雪舟は多くのこらず秋螢 田中裕明『花間一壺』〉など裕明の有名句のいくつかや〈雪折や遺伝子学者易学者 山口昭男『木簡』〉なんかもそうだ。  セクト・ポクリットの「コンゲツノハイク」で主宰は掲句を自薦句として挙げている。少なからぬ自信があるということだろう。  こういうタイプの句では、季語の

          「秋草」2023年9月号

          「秋草」の山口遼也です。 10月号が(ひと月前に)届いたので、9月号のことを書きます。 のんびりしている間に11月号も届いてしまいました。矢の如し。  沸騰の水の音や薬罐の口の甲高い音が非常に端的に表現される。「滾った水が入った薬罐」というところからの省略が巧みだ。季語は「今年竹」、若竹のこと。丈は十分に高いけれどみずみずしい。ふしぎと納得させられる、よろしい取り合わせ。  同じ号の〈鷺草の孔子の如く咲いてをり〉では鷺草のたたずまいに見合った見立てが成功している。  自然

          「秋草」2023年9月号

          「秋草」2023年8月号

          「秋草」の山口遼也です。 9月号が届いたので8月号の句のことを書きます。  明瞭なのに新鮮。水鉄砲は最後まで水を出し切ることはできない。残った水は傾けて注ぎ口から出したり、蒸発するに任せて放っておいたり。  五月さんは俳人にも見落とされてきたことをきれいに拾う。たとえば2023年5月号の〈桜餅つまむ指切しない指〉。季語の新しい側面をさりげなく提示している。大仰じゃない、ともすれば当たり前に思えるような詠み方がよい。明瞭だからこそしみじみとした味わいがある。  湖を見渡した

          「秋草」2023年8月号

          「秋草」2023年7月号

          ひと月前の「秋草」に載っている句をご紹介。 好きな句をいろいろな人に読んでほしい、という気持ちで書きます。なので句だけでも読んでいただければそれでいいかも。 「秋草」に載っている句って基本的には「秋草」でしか読めないもんな。なんだってそうですが……。 主宰句より。  一句目、時間的な「間」なのか、空間的な「間」なのか。どちらにしろ作者が体験した時空間の広がりや奥行がよい意味で不親切に詠まれる。「その」の一語も相まって、実感や一回性が強い。こういう句は作者のいた場所を追体験し

          「秋草」2023年7月号