【yakouの戯言】innocent
「あの空の色を何と呼ぶか、君は知ってる?」
インディゴが言った。
「さぁ?オレンジじゃないかな。」
「違う、違うんだ。
見ているだけでなんだかこう、胸が熱くなるというか。自然といろんなことを思い出して、嬉しいような、寂しいような…」
気がつけば彼の目は涙でいっぱいになっていた。
「こんなに心を突き動かす色の名前を僕はまだ知らないんだ。
あぁ、なんて僕は無知なんだろう!」
インディゴは大袈裟に頭を抱えて唸った。本気で悔しがる彼を見て、僕は少しだけ羨ましく思った。
しばらくそのまま、名前の知らない夕陽をふたりで眺めた。光は波に反射してキラキラと眩しく、水平線に沈んでいく太陽は、まるで命が輝くように、僕らを赤く染めた。
「なぁ、シエラ」
インディゴが再び口を開いた。
「僕たち、あの水平線の向こうまで行けるだろうか」
いきなり何を言い出すかと思えば、突拍子もない発言が飛んできて思わず笑ってしまった。それにつられて彼も笑った。
「行ってどうするの?」
「どうもしないよ。ただ、こんなに綺麗な空の中を鳥のように飛べたらきっと気持ちよくて、あの水平線の向こうにどんな景色が広がっているのかって考えたら、確かめたくなっただけさ」
もちろん、僕らの背中には羽なんて生えていない。
出来ないことを考えたって意味がないだろう。そう言いかけて、それはあまりにもつまらない返答だと思ってやめた。
「そうだね、僕たちなら行けるかも。」
根拠なんて今はなくていい。ただそう信じていたかった。
それに、インディゴが一緒なら、本当に叶いそうな気がしたんだ。
ずっと遠くの、水平線の向こう側で待っている景色に希望がありますように。
僕たちはそんな願いを込めながら、眺め続けた。
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