「ましろ」


去年12月、渋谷のディスクユニオンで「ゆうやみずかん」というアルバムのインストアイベントを行った。

人生初のインストアライブは、ケロシンの方やスタッフのみなさんのおかげで無事に終わり、来てくださったお客様のお手元のゆうやみずかんに、
一枚ずつ、一丁前に、わたしらみたいなもんが、サインをさせていただいた。

次々とサインを書き、ありがとうございました、と顔を見上げた時、
Twitter上で見かけたことのある、
いや何度も見たお顔をみて、思わず声をかけた。

団地ノ宮の「ましろ」という曲と「ずるやすみ」という曲でダンスを踊った動画を上げていた、「有希さん」というダンサーの方だった。

動画の中の有希さんは、ものすごくしなやかに、とても綺麗に、団地ノ宮の歌詞を汲み取り、世界の歪さや景色を、ダンスの拍のなかに落とし込んでいた。
私たちの曲を選んでくれたうれしさと、その踊りの美しさで何度も何度も再生した。
その有希さんだった。

その時多分、
「覚えていてくれてありがとうございます!」
みたいなことを言ってくれたと思うのだけど、いや、そりゃあもう、嬉しすぎて覚えてるし、多分私の方が会えて嬉しいし、踊ってくれて嬉しいのですけども…みたいな気持ちになった。
(実際、なにを言ったかが思い出せない…)

それから少しだけ時が流れてつい先日、有希さん本人からDMが来た。

「こんど団地ノ宮の曲で相方と二人でダンスを踊るので、よかったら観に来てください!」とのことだった。

その日の予定を即確保し(姉は休めなかったため血涙を流していた)、そして今日、そのダンスを目の当たりにしてきた。


場所は、インストアイベントのの場所でもあった「渋谷」。eggmanというライブハウスだった。

中に入る。まず、ダンスのイベント自体が初めてだったので、バンドや弾き語りのライブとは全く違うその雰囲気に少し圧倒されつつ、ぬるぬると見えやすい場所を確保しに前に進んだ。

ふたりの出番を待つ間も、楽しかった。
歌詞が動きで伝わるように踊る人、曲の解釈を全員でピッタリ共有して照らし合わせたグループ、なんかカクカクしててすごーーーーい。ぬるぬる動いててすごーーーーい。とか、アホみたいな感想を思い浮かべながら、イベント自体をとても楽しんでいた。

そして待ち望んでいた、有希さんと相方のamaneさんの演目が始まった。

「あなたの 生まれた朝 なんども繰り返す
あなたの 生まれた日を教えて おめでとう」

誕生日がコンセプトだった前作「11月3日」の一曲目からのスタート、そこから「ましろ」へと繋がっていった。

まるで2人の手が空に向かって発芽するようにダンスがはじまり、
「ましろ」の中にある人の脆さや、当たり前に生きることの苦しさを、それでも平坦に続く毎日が、
自分の書いた歌詞なのに、
2人の、しなやかすぎてきれいな身体の動きや振りに合わせて、強く跳ね返されるように浴びて、
気がついたら、涙を流してしまっていた。

人に一度預けた解釈がこんなふうに自分へ返ってくることがあるだなんて知らなかった。
この祈りの歌詞が、私に向かって響いてくるように、創作をして今日、プレゼントをしてくれたこと、

本当に本当に感謝しています。
有希さん、amaneさん、ありがとうございました。




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