知を希むもの
知を希むものは歩いていた、
朝日を存分に吸収し、柔らかな感触の、
世界の手ざわりを、確かめていた、
誰かの正義をむげに扱うことはしなかった、
彼にも彼女にも、
相応の事情があったからだ、
知を希むものは泣いていた、
世界は人間では知り得ぬ
不思議に満ちていた、
その奇跡に泣いていた、
人類が試されていた、
転げ落ち、身体を打ちつけ、
簡単に死ぬ人たちの意味なんか問わない、
問えるはずがない
ただ、そのまぎれもない、
総体としての方向を、
見定めて、選び、
他を切り捨てることが、試されていた、
一週間でできた創世、崩すなら半刻、
止める、跳ねる、伸びる、
筆の筆致よ、その闊達さよ、
どうか宿る生命を、限りあるものとして、
知を希むものは家を建てていた、
質素な材料で、しかし頑丈な、
小さな家を 自らの手で作っていた、
一寸先に怯えるよりも、
今、身体を温め、暖をとり、
ゆっくりと眠るための家が欲しかった、
それは世界を描くコンパスのような、
何もない荒野に磁場が生まれ、
物差しとなる家だった、
知を欲し、希うものはみな、
頼りない身体と精神を抱え、
そこから、スタートしようとしていた、