天変
日本では442年ぶりとなる皆既食の天体ショーに沸いた。だが何の前情報もなかった安土桃山時代の人たちは、いつも見ている月がどんどん欠け、不気味な色の満月になることにさぞ驚いただろう
▼「天変」とは天空に起こる異変をいう。中国古代・中世史での天変地異の意味は「君主への警告」。天変からの戦況一転や、それを契機に民衆を扇動して王朝を倒す流れもある。研究材料として興味深い
▼例えば三国時代。曹操が大敗した赤壁の戦いの少し前に日食は起こり、群雄の1人である董卓の専横開始や呉王朝の滅亡前には流星群やほうき星が発生。いずれも為政者が天の警告に対応できなかった、と映る
▼さて現代。岸田政権は旧統一教会問題と円安・物価高対応で世論調査の支持率は徐々に下降している
▼電気料金の負担軽減策は全国民が喜ぶ良策と思ったら、北海道では北電が素早い追加値上げで“中間搾取”。恩恵は限定的となり政権浮揚の足を引っ張った。山際大臣問題は辞任後すぐ要職に付ける悪手で火消しに失敗。あとは被害者救済法の中身次第か
▼天変には「瑞祥(ずいしょう)」もある。五色の雲や竜の出現の他、解釈の仕方で月食や流星群も後々吉兆にできる。ただ住民の生活不安を取り除き、幸せになれる方策を示して結果を出すのは時のトップの役目。再び皆既食と惑星食が起こる322年後の未来でも、きっと変わらない。