【詩】 あなたがくれる花束
寝る頃に 寝室のドアがあき
子どもが入ってくる
おやすみ と言いながら
ほんのちょっとだけのためらい
そして 手を横に広げ
ハグ と言って 近づいてくる
なんかあった 今日?
大学に行かないかもと 言う子どもに
葛藤をもつ自分に気づき
自分で自分に苦笑
私って 思うより 心狭い オープンじゃない
きめつけが きらいなのに
きめつけに しばられて
自分がいちばん きめつけてる
自分では 気がつきもせずに
大学行くのは だいじなことだと
どうして 思うの?
私が 行ったし?
私の親が そう言ったし?
みんなが行くし?
学歴いるし?
ないと苦労するし?
私が 行ってほしいし?
子どもの母の役をして
ひろげてもらった私の視野
ほぐしてもらった固い頭
あんたがいなかったら
わたしは自分で思いもせず
人を決めつけ
学歴差別し
仕事に偏見もってたのかも
だけど私も元々はブルーカラーの出でとか言って
わかります の顔した
鼻持ちならないヤツだったのかも
何してもいいよ
おかあさんは 腹をくくった
やっと腹がくくれた
心から言うよ
あんた してみたいことがあるんなら
してみなよ 応援するよ
大学行ってもいいし 行かなくてもいい
あとで行ってもいいし 行ってやめてもいい
料理を始めた子どもの話を
おばあちゃんにしたら
ええが さすがじゃが だって
大学行かんかもしれん と言うと
ええが 行かんでも
料理人にでもなったら ええが
自分の店でも持って ええことじゃが
ガールフレンドができたことも
おしえてあげると
かわいくて頭もよくて すごくいい子で
と言っただけで
おばあちゃんは さえぎるように言う
そりゃあ やっぱり あの子がええ子じゃけえじゃが
あの子がすばらしいけえ そんないい子が惹かれるんじゃが
おかあさん そんなことパッと言うの
おかあさん わたしも はやく 「おばあさん」になりたい
「おかあさん」はしんどい
「おばあさん」になって
あの子に感心だけしていたい
あの子の心配をしたくない
それも いらない心配を
ママ おやすみ と
ハグのからめを解きながら
すこうしニキビの 子どもが言う
部屋を出ながら あっち向きのまま
彼がくれる 言葉の花束
小さい声で
ママ ありがとう と