子どもの頃のぼくは、父に手紙を書いた。
ぼくは子ども頃、スーパーファミコンのロックマンが欲しくてたまらなかった。
なぜ、そんなに欲しいのか記憶の定かではないが、誰がこのゲーム持ってるとか友だちの見栄とかもあったと思うし、本当にロックマンがやりたかったのかもしれない。
ただ小学校のぼくでは、かんたんに手に入れるはずもないため、母に買ってとせがんだ。母は、いつもこういうぼくの頼みは「父に聞いてみて」が決まり文句だった。
ぼくは父に直接頼みに行くのが恐かった。
なぜ怖いのか?なぜ恐いのかと考えたら、となりの家にサッカーボールを窓にぶつけて、怒られた影響だと思う。そのときめちゃくちゃ怒られた記憶がある。障子にぶん投げられたような気がする。
子どもころにそんなことされたら、そりゃ話しかけるのも億劫になると、今考えれば思う。
そんなわけで、直接頼みにいくのが恐い。でもロックマンが欲しくてたまらないぼくは考えた。
直接言えないなら、間接的に言えばいいのではと、子どもながらにひらめいた。まずは、母から言ってもらうことに頼んだ。でも母に言っても自分で言わないと本当に自分が欲しいのかは伝わらないと言われた。
母から伝えてもらうこともできないので、ぼくはさらに考えて手紙を書くことにした。どんな文章か正確に覚えていないが、たぶんこんなところだろう。
お父さんへ
スーパーファミコンのロックマンが欲しいです。
ケータ
その手紙を直接渡すことなく、手紙は父の部屋に置き手紙で伝えた。
渡してから、ぼくは父の帰りを待つようになった。父が帰ってきたら、自分にゲームを渡すのを心待ちにしていた。でも、待てど暮らせどゲームが来なかった。そんな日が何日も続いたからか、ぼくは完全にあきらめていた。
あきらめたけど、ロックマンをしたい自分を押し殺して床についた。
目が覚めて、起きると枕元にリボンがついた袋が置いてあり、中を開けると、ぼくのロックマンが入っていた。
ぼくは大喜びで母に報告して、父にお礼を言ってねと言われた。
父に「お父さん、ロックマンありがとう」と言ったら、
「勉強がんばれよ」とひと言。
それから、欲しいものがあったら手紙を書くようになった。
欲しいものを手に入れるためというのもあるだろうが、
手紙を通じて、ぼくはもっと父親とコミュニケーションを取りたかったんだと思う。
PS
母と電話していて、ふと過去の記憶がよみがえったので書いた。