旅は人の本性を映し出す鏡
ひとり旅がすきな人も多い中、わたしは複数での旅がすきです。根が寂しがりやなのもあるけど、新しい発見、はじめての体験、見たことのない景色、どれも人と共有できるのはおもしろいものです。そんな複数での旅、言わば「マルチ旅」の醍醐味について考えてみます。
あなたは誰と旅に出ますか。家族や恋人、友達でしょうか。旅の思い出は刺激的なものばかりですが、良くも悪くも人間の本性がむき出しになる、諸刃の剣ではないでしょうか。
【CASE1】心から人に頼れますか?
マルチ旅の場合、大抵は企画を任される側(以下、プランナーとする)と任せる側(以下、フォロワーとする)の両方の立場の人がいることが多いと思います。わたし自身、Aさんと行くときはプランナー、Bグループで行くときはフォロワーと言ったように、ジョブチェンジすることもあります。ただしこのフォロワーは常にその立場を貫き、従順に身を委ねることはできるでしょうか?慣れない環境ではトラブルは付き物。そう言った際に文句を言いだす人(以下、クレイマーとする)も必ずいます。プランナーからしたらこんなクレイマーがいるとやるせない気持ちにもなるでしょうし、ひとり旅の方が気楽でいいやなんて思うかもしれません。日常的な生活の中ではストレスも少なく、フォロワーの皮をかぶって過ごすクレイマーはたくさんいます。マルチ旅は、そんな隠れクレイマーをあぶり出す、一種の踏み絵的側面があります。おとなしいフォロワーも旅という鏡の前に映る姿は、獰猛なクレイマーかもしれません。
【CASE2】冒険する余裕はありますか?
プランナーの中には、自分の思い通りにならなくなったときにテンパってしまう人もいます。特に海外だと想像もできない状況になることもありますよね。わたしの体験ベースで説明しますね。あるときベトナムのホーチミンでトランジットをした際に、6時間ほど乗り継ぎ時間がありました。そこで空港から市内までタクシーで出て、町歩きをしたものの、帰ろうと思っていた時間になってタクシーを探すも、中心街であるにもかかわらず全く捕まらない、普通に21時とかですよ?結果的には1時間遅れで無事タクシーは捕まり、次の便にも間に合ったものの、プランナーの友人はテンパり全くの無口になってしまうタイプ(以下、ペシミストとする)だったのに対し、フォロワーのわたしは「まあ、最悪飛行機乗り過ごしてホーチミンで一晩を明かす経験も悪くないかも?」くらいに思う楽観的なタイプでした(以下、オプティミストとする)。ペシミストなプランナーは、完璧に計画できておらず、フォローにも迷惑をかけた自分の姿を鏡に見ているのでしょうか。逆にフォロワーがペシミストかつクレイマーだった場合、オプティミストなプランナーは火に油を注ぐことになるかもしれませんね。
【CASE3】人の真価を目撃しませんか?
日常生活ではお目にかかれない、潜在能力を発揮する人(以下、ポテンシャリストとする)に契機を与えてくれることもあるものです。これもわたしの経験で、グループで香港を訪れた際のことです。格安ツアーで泊まった先で、友人が深夜に部屋のトイレのノズルを回したところ、なんと部品が折れて水が流れなくなってしまったのでした。時刻は0時を回ったところ、フロントには日本語は愚か、英語すら話せるスタッフは常駐しておらず、当の本人も語学堪能とはお世辞には言えない人でした。しかしポテンシャリストとしての友人は結果的に無事業者の人にトイレを修復してもらうことに成功しました。トイレが壊れたのが利用前であったことも、友人の潜在能力のなせる技かもしれませんね。火事場の馬鹿力とはこのことでしょうか。きっと本人は洗面所の鏡に映る自分の姿の背後に、潜在能力のオーラを感じ取ったに違いありません。
ここまで旅を通して垣間見える3つの側面を見てきたら、何というか、非日常ゆえに人は丸裸になってしまうようですね。ただ注意したいのは、一義的に〇〇ストが良い・悪いといった単純な解はありません。千差万別、1通りの旅はありませんから。
旅を活かすも殺すもあなた次第。
人の本性を暴く手段として旅を捉えてみるのもおもしろいかもしれませんね。
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