信楽焼展『Clay as Soft Power』ミシガン大学美術館(米国ミシガン州)2022年11月-2023年5月開催
概要
【プレスリリース(原文:英語)から抜粋・和訳編集】
Top Cover Photo by UMMA Staff
トップ写真 ミシガン大学美術館 職員撮影
ミシガン大学美術館(米国ミシガン州アンアーバー市)
2022年11月12日~2023年5月7日開催
特別展『Clay as Soft Power』
ーShigaraki Ware in Postwar America and Japanー
(日本語訳『ソフトパワーとしての陶芸』)
―アメリカ・日本戦後関係史における信楽焼―
日本人にとって、「信楽焼」と聞いて思い浮かべるのは、陶製のタヌキのコミカルな姿ではないでしょうか。アメリカにおいて信楽焼は、中世以来続く六古窯のやきもの産地(信楽他、備前、瀬戸、常滑、越前、丹波)のなかで、最も有名な焼締(やきしめ)陶(薪窯で焼成した無釉薬のやきもの)として知られています。メトロポリタン美術館、クリーブランド美術館などの大型美術館や、ミシガン大学美術館など大学付属美術館には、ほとんど必ず古い信楽焼の大壺が収蔵されています。またアメリカのセラミック・アーティストの中には、信楽に滞在した経験を持つ人が多数います。
当展覧会では、信楽焼がなぜアメリカで有名になったのか、戦後から現在までの日米関係、そして世界情勢の変化に照らし合わせ展観しています。
展覧会場の第一セクションでは、米国内美術館に収蔵されている、中世から近世初頭にかけて作られた大壺を、戦後やはり多く収集された屏風絵とともに紹介しています。このセクションの注目作品は、クリーブランド美術館所蔵の大壺です。豊かな丸みと豪胆な灰かぶりが美しい大壺は、かつて白州正子が所有し、名物館長シャーマン・リーが美術館のために購入しました。こういった焼締めの陶器は、戦後かつて敵国だった日本のイメージを「素朴で、コミュニティ(地域)を愛する」ものに変える目的で紹介された美術品でした。
第二セクションでは、1960年代に信楽で技術を習得した三人のミシガン在住セラミック・アーティストを紹介します。その時代さらに1980年代以降、日本が経済大国になってからは、日本政府や自治体が国際交流に資金を投入することになりました。1990年には、信楽に開館した陶芸の森には国際レジデンシー・プログラムが創設され、多くのアメリカの作家が制作活動で信楽に滞在するきっかけとなりました。
第三セクションでは、近年アメリカ個人コレクターが収集した信楽焼の現代作品を紹介しています。とくに2000年代以降、彼らの好みに合わせて、大型で彫刻的な作品がより多く制作されるようになりました。こういった個人コレクションは、各地の美術館で紹介され、アメリカの観衆が新たに信楽焼に興味をもつ機会となっていきます。
当展示は2022年11月12日から2023年5月7日まで開催されます。4月14日には、信楽在住の陶芸作家、髙橋美子氏を招いたイベントを開催します。古壺および現代作家の作品50点以上の陶芸作品を展示した会場では、さまざまな表情の信楽焼作品を鑑賞することができます。実際触ってみることで、信楽焼独特の触感を楽しめる作品もあります。信楽焼に焦点を当てた展覧会はアメリカで初となるもので、この貴重な展覧会にぜひ足をお運びください。
特別展企画担当
ミシガン大学美術館
アジア美術キュレーター
及部 奈津
図録『CLAY AS SOFT POWER』
米国・ミシガン大学美術館により、特別展『Clay as Soft Power(日本語訳「ソフトパワーとしての陶芸」)―アメリカ・日本戦後関係史における信楽焼―』の開催と同時に発刊。展示作品および解説論文が掲載されている。
以上
日本語訳編集/NOTE投稿
金子智慧美