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羅刹の紅(小説投稿)第七十七話Part2

前回までのあらすじ

町で悪行を繰り返す赤虎組に狙われることになった普通を愛する高校生「最上偉炎」は対抗するために校内に一般部を作った。一般部には素性が全く分からない顧問の「切風叶」と偉炎の親友で馬鹿力を持っている馬鹿な「北条優雷」がいる。そして新たな仲間として同じクラスメイトでかつてこの国のトップである「五大財閥」に君臨していたが、祖父の謎の死によってその地位をはく奪された今川家の令嬢「今川雪愛」が加わることになったのだが彼女は入部する交換条件で一般部に依頼をした。それは祖父が雪愛に遺した財宝が教会にあるためそれを探してほしいとのことだった。しかし、その財宝にも赤虎組の手は伸びており、偉炎たちは赤虎組と教会に戦うことになった。戦況が有利になった偉炎たちだが、そんな中で偉炎は再びあの世界に入ってしまうのだった。

 
 大聖堂での状況だが、時間が経つに連れて偉炎たちが有利になっていった。敵は最初の方こそ人数は多かったが次第に死傷者が増えていき、気が付けばまともに動ける人数は二十人もいなかった。武器も大した物を持っておらず、できることは物陰に隠れながら攻撃している偉炎たちに突撃するぐらいであった。一方、偉炎たちは大聖堂という戦場に置いて圧倒的攻撃力を兼ね備えていた。まず偉炎は持っている拳銃がとてつもない存在を持っていた。近づいてくる敵に対して引き金を引きだけで確実に敵を戦闘不能にしていった。そして、ハイテンションの彼にそれを行う抵抗はない。次に雪愛はナイフという本来は飛び道具でない武器で相手を仕留めていった。そして、彼女の身のこなし方が見事なものでその機動性を活かして偉炎の攻撃のサポートをしつつ優雷の守備固めをした。最後に優雷だが教会の事務室から持ってきた応急キットで血を流している司祭たちの応急処置をしつつ、近づいてくる敵には持っている槍、通称「蜻蛉切」で逆に敵に血を流させた。もちろん、優雷のバックには雪愛のサポートもある。
 創設したての「一般部」ではあるものの、その目に見えない団結力は確かに強く大きくなって敵に襲い掛かった。そして、あまりいい意味に捉えて欲しくないが一般部の三人はこの状況を少しずつ楽しいと思い始めていた。
 
 勝負は決した。偉炎はおそらく最後であろう敵に向かってその兇悪な銃口から死の弾丸を放った。その時、彼の身にも変異は起きていた。いや、そもそも戦闘中に笑っている時点で頭がおかしいのは重々承知だ。ただ、そのような神経を通り越して偉炎の視界は真っ白に変わっていたのだ。単純に気を失ったということではない。そう、これは偉炎がかつて迷い込んだことのある真っ白な空間であった。体育館の屋上での戦闘の時や裏路地で御影と戦った時に入った場所と同じであった。ただ、今回は気絶して入ったというのではなく本人が勝手に入りこんでしまったという感じだ。
「・・・ここは・・・また来てしまったのか?」
 偉炎は再び来るこの白しかない空間にうんざりしていた。
「何だっていうんだよ・・・いま戦闘をしていたのに・・・」
 まるで命がかかっている戦闘をまだやっていたいと言わんばかりの口調で不満を漏らした。ただ、そこで偉炎は気づく、自分が今とんでもなくおかしなことを言ったということに。
「今僕はなんて・・・!」
 しかも、その瞬間に白しかない空間に黒い場所ができた。それも前回よりもさらに大きくなっていたのだ。
「僕はなんておかしなことになっていたんだ・・・僕は普通になりたい・・・!なりたいだけなのに・・・」
偉炎は白い地面を大きく叩いた。現実世界は手に持っていた黒い拳銃もいまはそこにない。ただ、目の前には拳銃とは真反対の白い空間とその中に一か所だけある拳銃よりも黒い空間だけであった。偉炎はそんな場所でただ一言、本音を漏らした。
「あいつらに・・・会いたい。」
 その瞬間、黒い空間が偉炎を襲った。もちろん、偉炎の視界は黒一色に染まるのであった。
 


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