羅刹の紅(小説投稿)第九十三話
○あらすじ
普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃たなければならなくなったのだ。そしてそれぞれが準備を整え、ついに体育大会の当日を迎えた。
正午になった頃、偉炎がミスをしてしまい赤虎組は学校の近くまで接近してしまう。それに対し一般部は総出で立ち向かう。ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。しかし、人数的に不利な一般部はついにフォーメーションが崩れた。
〇本編
もはや万事休すだ。雪愛も優雷も苦戦している。赤虎組は容赦なく学校に向かっている。偉炎は結局何もできていない。一般部による広星高校防衛作戦は失敗したかに見えた。そしてそんな姿を見るためか雲に隠れ隠れだった太陽が顔を出し始めていた。
しかし、この太陽はどうやら転機の現象だったようだ。一般部においてある人物を忘れている。赤虎組の構成員は命を賭けているかもしれないが彼女はくぐっていた修羅場の数が違う。赤虎組なんて赤ん坊同然なのだ。
「くそ・・・!間に合わない!」
偉炎は必死に弾丸を放っている。だが七連射しかできない彼の拳銃はすぐに弾切れを起こす。
「早くリロードを!早く早く!」
自分が自分に言い聞かせている。焦りが生じてしまい中々マガジンに弾を入れることができない。そしてそれが彼をさらなる絶望につなげる。
(ヤバいヤバい・・・!どうしよう・・・!このままだと誰も守ることが・・・できない)
偉炎は汗を流しながら、背筋が凍っていくのを感じた。
(頼む・・・!誰でもいいから!誰でもいいから助けてくれ!)
彼の救世主は・・・いた。
私をなめすぎではないか?
切風がそこにいた。彼女はプロモーターを最大限活用させ、偉炎が仕留めそこなった赤虎組の構成員を次々に倒していった。
「・・・切風。」
「君には失望したよ。私が守っている場所を心配してくれるなんて。そこまで君は強いのかな?」
切風は赤虎組に対して、そして偉炎に対して負のオーラを出した。それは簡単に言えば・・・殺意だ。
「・・・ごめん。」
「まぁ、君の気持ちもわからんでもないよ。敵が迫ってきたらパニックになるからね。だから今回は大目に見てあげよう。とにかく君は雪愛と合流し右側を守ることだけに専念しな。」
「分かった。」
偉炎は顧問の言うことに従った。
それに・・・我々には味方もいるのだよ
「・・・え?」
「レッツゴー、東沙座!」
切風がよく分からないこと言った途端、森の周辺から謎の集団が現れた。彼らは赤虎組ではない。なぜなら、着ている服が緑だけであるからだ。
「新たな敵なのか・・・?」
偉炎が目をかすめながらその姿を確認する。
「いや、だから味方だよ。」
切風は静かに敵の中に突っ込んだ。緑色の集団は緑一色であったため、森の中で見つけることは難しそうだったようだ。そして、切風が指示したことによってその正体を現したのだ。
その緑の集団は切風に合流すると赤虎組の構成員を次々に倒していった。しかも、何がすごいかというと彼らは全員、プロモーターをつけているのだ。そして、持っている武器もサプレッサーの電気銃(電流を発砲し、当たってしまうと電流が体に流れる。スタンガンの進化系といっていいだろう。)である。装備が万全であり、使っている物も最新鋭であるのだ。
「切風・・・」
偉炎は何とか彼女に質問する。
「ん?あぁ、彼らは私の部下だよ。とりあえず五十人派遣した。」
「部下!?五十人?」
「そんなに驚くことでもないだろう。」
彼女は戦いながら、長い緑色の髪をかきあげながら言う。いや、普通は驚く。保健室の先生でありながら多彩な戦闘技術を持ち合わせており、しかも部下を五十人以上も携えている。そんな彼女の正体を知りたくない偉炎ではなかった。
「切風・・・やっぱり聞いておきたい。あんた何者なんだ?」
「ん?そんなに気になるかい?それなら仕方がないね・・・」
そう言うと切風は部下に任せて、偉炎の方に向かっていった。
「なら少しだけ教えてあげよう。」
彼女の化けの皮を自分で剝がそうとしていた。