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羅刹の紅(小説投稿)第七十八話

・あらすじ
町で悪行を繰り返す赤虎組に狙われることになった普通を愛する高校生「最上偉炎」は対抗するために校内に一般部を作った。一般部には素性が全く分からない顧問の「切風叶」と偉炎の親友で馬鹿力を持っている馬鹿な「北条優雷」がいる。そして新たな仲間として同じクラスメイトでかつてこの国のトップである「五大財閥」に君臨していたが、祖父の謎の死によってその地位をはく奪された今川家の令嬢「今川雪愛」が加わることになったのだが彼女は入部する交換条件で一般部に依頼をした。それは祖父が雪愛に遺した財宝が教会にあるためそれを探してほしいとのことだった。しかし、その財宝にも赤虎組の手は伸びており、偉炎たちは赤虎組と教会に戦うことになった。戦況が有利になった偉炎たちだが、そんな中で偉炎は仮想世界である白い世界に入ってしまう。それでも、彼の優雷と雪愛に会いたいという気持ちが彼を現実世界へと引き戻すのであった。

「・偉炎・・・偉炎・・・偉炎!!」
「は!」
 彼は現実世界で目を見開いた。視界にはガラス張りである大聖堂の天井が夕日に照らされてキラキラと輝いていた。
「大丈夫なの?あんたここで三十分以上気絶していたのよ!」
 天井を見ることを遮るように雪愛が顔をのぞかせている。どうやら偉炎は崩壊寸前の大聖堂の中にある比較的原形をとどめている長椅子に横になっていた。そして、それを見つめるように雪愛と優雷が近くにいた。
「おー目を覚ましたようだな。これで全員無事そうだな。」
「優雷!戦いはどうなった!?敵はもういないのか?ケガしていた人たちは無事に助けることができたのか?」
 分からないことがいっぱいだった。とにかく偉炎は現状の把握をしたくて仕方がなかったのだ。焦りが増す。なぜなら、ここで任務に失敗すれば普通を諦めてまで手に入れようとしている物さえダメになってしまうからだ。
「大丈夫よ。」
 偉炎が最も聞きたい質問に雪愛はしれっと答えた。
「敵なら何人か逃げたけどそれ以外は戦闘不能にしたわ。それに怪我していた協会の関係者たちも無事よ。馬鹿がもってきた医療キットで応急処置はしたし今も安静にしている。命の危険はないわ。」
「・・・そうか・・・よかったぁ~」
 偉炎は彼らしくない安堵した一言も漏らした。とにかく一難が去ったことに心から安心した。
「何!雪愛、今俺の事を馬鹿って言ったか?」
「?そうだけど?」
「当たり前のように言うな!」
 優雷はいつも通り感情を起伏しながら雪愛の言葉に不満を募らせた。それに対して雪愛は当たり前のように話を進めた。
「それよりもいいかしら?偉炎も横になりながらでいいから聞いてくれる?」
「どうした?まだ何かあるのか?」
「おい!まだ話はおわっ・・・」
「この教会に眠る今川家の財宝の事よ。偉炎、それこそあんたが眠っている間に大聖堂含め色々な所を探したわ。それでも結果として手掛かりすら見つけられなかったわ。」
「そうだ財宝のこと忘れた!」
 偉炎は肝心なことを思い出すとガバッと起き上がった。そう、彼は戦闘に夢中になりすぎていてなぜ教会にいるかという率直な疑問にさえ気づいていなかった。彼らがここに来た理由、それは雪愛が一般部に入る代わりに彼女の一族である今川家の財宝を教会で見つけることであった。
「そうだ、赤虎組と戦っていたせいで完全に忘れていた・・・」
「え!?さっきのやつら赤虎組だったのか?」
 偉炎が失念している中、優雷はさっきまで戦っていた敵の正体ですら忘れていた。
「あのな、優雷・・・さっき僕が司祭館で推論したろ・・・おそらく敵は赤虎組のチンピラ、もしくは関係者で間違いない。」
「そうだったのか・・・」
 優雷は唖然とした。それよりも知らない敵をぶった切っていた彼の心境はどのような物なのか気になる。
「それよりも!私たちはまだやらないといけないことが山ほどあるわ。戦いの後始末、戦闘不能の敵をどうするのか、教会の関係者を病院まで移動させる、今川家の財宝の在り方を探す・・・困難はまだ終わってないわ。」
「げ!やっと戦いが終わったのにまだやることあるのか・・・」


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