羅刹の紅(小説投稿)第九十二話Part2
○あらすじ
普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃たなければならなくなったのだ。そしてそれぞれが準備を整え、ついに体育大会の当日を迎えた。
正午になった頃、偉炎がミスをしてしまい赤虎組は学校の近くまで接近してしまう。それに対し一般部は総出で立ち向かう。ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。しかし、人数的に不利な一般部はついにフォーメーションが崩れた。
〇本編
「優雷!」
生徒の危機を察したのか切風はすぐに優雷の元にかけよった。そして、背後にいる敵を来た勢いのまま斬りつけ、蜻蛉切に刺された構成員にもとどめを刺した。何事も問題はないと思う。しかし、その数秒が命取りになることは充分わかっていたのだ。
「左が空いたぞ!一気に攻め込め!」
優雷と切風が守っていた左側のフォーメーションがずれてしまったのだ。そう、優雷の事を切風がフォローしただけでこんなにも隙ができてしまったのだ。四人しかいないから仕方ないかもしれない。
「しまった!」
偉炎が状況を見て絶望してしまった。気づいたときには五人以上の赤虎組の構成員が自分と同じ高さの場所にいた。つまり、突破されてしまったのだ。もし、偉炎たちがこれを阻止できなかったら、まだ何も知らない無防備の高校に凶悪な集団が侵入してしまう。そうなってしまってはもうどうすることもできないのだ。
「右は任せた!僕は左に・・・!」
「無理よ!あなた一人で防げるほどの人数ではないわ。それより私たちは右側を守らないと!」
「でもこのままだとあいつらは確実に学校までたどり着いてしまう。そうなったら何もかも終わりだ!」
そう言うと偉炎は自身に取り付けているプロモーターを起動させた。
「偉炎!!」
雪愛の声も届かず彼は左から登ってくる赤虎組の構成員に対し向かっていきながら拳銃を向けた。確かに偉炎の行動も一理ある。敵が近くまで迫ってきて気にしない方がむしろ異常だ。それにフォローするのは作戦の内に入っている。彼は作戦通りに動いただけなのだ。ただ、それが仇となってしまうこともある。
「・・・っく!」
「雪愛!」
偉炎が左側に移動したため今度は右側にいた雪愛が危機に陥っていた。彼女はついに敵に近づかれてしまいナイフを両手に構えて戦わないといけなくなった。もちろん、そんなことをしている間にも敵は下からどんどんと登ってくる。
「ゾンビ・・・!」
雪愛は敵のことをそう言ってしまった。勘違いしているかもしれないが赤虎組は目の前で死んでいく仲間を見ても進み続ける様な集団である。目的を果たすために自分の命など二の次なのだ。そんな集団と戦っている時点で偉炎たちの結末は分かっていたのかもしれない。
「・・・もうだめなのか。」
偉炎は一人でも多く止めようとしたがそれでも一人でできることには限界がある。