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羅刹の紅(小説投稿)第八十一話Part2

〇あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校でかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
一方で赤虎組は謎の敵対組織(偉炎たちのこと)から作戦を達成できないでいた。そして、その目的がついに赤虎組の五大幹部の一人である「御影」から語られるのであった。
時期は六月下旬、そんなことも知らない偉炎と優雷はもう一つの部活であるハンドボール部の大会に出場していた。

〇本編

(このままではあの方に渡す金がない。この町にある広星高校にいる王電家の御曹司からの身代金の要求も教会にある今川家の財宝も回収することができなかった)
 どうやら赤虎組がこれまで広星高校や教会を襲撃していたのは首都にいる何者かに金を渡すためだったかららしい。しかし、それは両方失敗に終わっている。
(このままでは赤虎組がまずい。このままだと怒りにふれ警軍が潰しに来る。それだけはなんとしても防がなければならない!)
 そしてその何者かは金を赤虎組が出さないと警軍をもって殲滅するだけの力があるらしい。
(そのためにも早く金をこの町で手に入れて首都にいるある方に渡さなければ囚人どもをいただいたのにこれ以上失敗するわけにもいかない。五大幹部である私が何とかしなければ・・・どこにある・・・どこに金はある・・・)
 御影は非道であるが誰よりも責任感の強い男だ。そして何事も一人で解決してしまおうとする。ただこれが彼の欠点でもある。
(・・・そう言えば広星高校は今の四大財閥中心の政治に反対で首都に献金を一切していなかったと聞く。それならばもし広星高校襲撃して金を奪っても四大財閥は何も知れ来ないだろう。なぜなら四大財閥のうちの一人はこの国の治安統治をしている警軍のトップだからな。)
 御影は色々と作戦を思いついた。そして、久々に口元を緩めながら静かに次のプランを発した。
「広星高校を襲撃し、金を強奪する。」
 御影の目に迷いはなく、そして殺意があった。それを見て屋敷にいたカラスたちが一斉に飛び立った。
「さっそく組長に相談せねば。」

 偉炎と御影・・・この二人がまた会う時は思ったより早そうだ。

雨上がりに見る青空がすがすがしい昨今、貴社におかれましてはご発展のことと存じます。時期としては六月の中旬でありそろそろ梅雨も明けそうだ。ただ、この日は曇り空と共に小粒の雨も降っていた。そんな中、偉炎と優雷はびしょびしょになっていた。
「ハァ、ハァ。」
 偉炎の息が上がる。それとともに彼の目はいつもと違って真剣であった。
「速攻だ!前に出ろ!」
 優雷も身体を動かし続けた。彼は本気で何かを手に入れようとしたのだ。
 場所は町から少し離れた総合体育館、ここでは近くの町々にある男子ハンドボール部による全国予選が行われていた。そして、二年生であるにもかかわらず偉炎と優雷はチームの先陣を切っていた。
 ちなみに偉炎のポジションはセンター、チームの司令塔としてボール回しや点を入れるための戦力をみんなに共有する。一方、優雷はポスト、一番ゴールの近いポジションでその分敵からの注意も多い。ただ、他の仲間ができるだけゴールを決めやすくするためにも敵との押し合いに競り勝ち、ゴールへのチャンスを作らなければならない。要は両名大変なのだ。
 偉炎がボールを回しながらゴールに近づく。それを見て相手は偉炎にファールをしようとする。(ちなみにハンドボールにおいて相手の攻撃を止めるためにファールは何回行ってもいい。)偉炎は相手に捕まれないようにするために一瞬で加速した。そして、敵陣のセンター付近でボールを受け取った。
「この!」
 その途端、相手のポストが偉炎を全力で止めにいく。
「・・・っふ」
 しかしこれも偉炎の戦力であった。基本的にハンドボールにおいて自分のポジジョンと同じ相手をマークすることになっている。つまり、これで味方のポストがフリーになったわけだ。偉炎はボールをノールックで優雷に渡した。
「よっしゃー!ナイスパス!」
 そのまま優雷は全力でボールをゴールに入れた。とんでもない威力だったため相手のキーパーは何もできなかった。
 この日、二試合あった予選を偉炎たち広星高校ハンドボール部は何とか突破することに成功した。ただ、やはり人数が七人しかいない。これはハンドボールをするための最小限の人数だ。そのため、一試合合計一時間をひたすら走り続けなければならなかったのだ。
 しかし、広星高校ハンドボール部は強かった。周りの先輩は全体的身体能力が高い。それに大会前から朝練や夜練習などを行い、持久力を上げてきた。これだけでも充分だが一番成長したのは偉炎と優雷であった。



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