羅刹の紅(小説投稿)第七十九話
〇あらすじ
普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」が助けるが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」と切風の三人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
六月、偉炎と優雷は部活を作るには少なくとも三人の生徒が必要であることを突き付けられる。(切風は顧問)そのため偉炎たちは新たな部員として、不登校であるが同級生の「今川雪愛」を勧誘することにした。死ぬ気の説得もあり学校に来た雪愛は一般部に入る代わりに依頼を出した。それは町の教会にある今川家の財宝を探すことであった。偉炎、優雷、雪愛は町にある教会に向かうのであった。ただ、その財宝は赤虎組も狙っていたのだ。そして、同じ時間、同じ場所にいたそれぞれは戦闘状態になってしまう。連携がうまくいった偉炎たちは勝利を収めることができたが偉炎は気絶してしまう・・・結局今川家の財宝は手に入れることができなかったのだ。そのころ、切風は別の場所にいた。
〇本編
一方、ARコンタクトで会話を通話した切風はすぐに別の連絡先に電話をした。生温い風が彼女の髪を揺らす。本人が気づいていないかもしれないが、切風は危機に瀕していた。周りにはおよそ百人の敵が武器を構えている。もちろん狙いは切風という子供みたいな姿の人間。おそらく偉炎たちよりもあまた数も多い。にも拘らず、二回も電話するほど余裕をかましている。
「あれ~中々出ないなぁ。何してんだろ、東沙座は?あの人上司である私の電話を無視して彼女とデートか?今度会ったら冷やかしに行こう~。」
ただ、何回かコールがあったのち電話が繋がった。その瞬間、切風の態度が豹変した。
「おーーーーーーーーす!東沙座ぁ!私よ私♡みんな大好き切風ちゃんでーーーす。今日は何してたの????」
周りの敵が普通にビビっていた。
「早速でわるいけどォ!広星高校の屋上の時みたいにまた後始末お願いしたいですゥ。いいですかぁ?え?今彼女といる!!FUZAKERUNA!いますぐ急行しろ。場所は例の町の教会!!怪我人もいるからGO!」
ふざけているのか真面目なのか分からない命令が響いた。ただ、それだけ伝えると切風は電話を切った。
「・・・ふざけているのか?」
切風を取り囲んでいる敵の内一人が切風に向かって怒っていた。
「・・・・」
切風は無言を貫いた。
「この財閥の犬が・・・!いまの政府が間違っていることがまだ分からないのか?」
「お前みたいな奴は、正当を貫く我らが潰す。」
どうやら敵も敵で理由があるらしい。彼らも彼らで真剣なのかもしれない。
しかし、そんなこと切風には関係ない。いや、あるとしてもそんなことはどうでもいい。首都にいる限り、財閥に歯向かう人間がどういう末路をたどるのかは知っている。なぜなら、そいつらに引導を渡すのは切風の仕事だから。
・・・ふざけているのか・・・
切風は赤と青の目を光らせながら周りにいる人間のすべてに殺気を放った。
「お前らのような計画性もなくこの国をひっくり返そうとしている奴らがいるから私の夢がかなわない。全く・・・呆れてしまう!」
そういった瞬間、切風は懐から日本刀を取り出した。そして、自身の身体を回転させながら、敵の集団に入っていた。この日、夜はやけに静かになっていた。これらは全てこれから切風の行う処分の音に耳を傾けるためかもしれない。
数分後、切風の周りに立っていた者は誰一人いなかった。全員が血まみれになっており、この瞬間にも死んでいく者もいた。
「・・・なんて強さだ・・・」
右腕を斬られ地べたで悶絶している一人が切風の強さに感銘した。
「なぜだ・・・なぜそれだけの強さでいながら財閥や政府に味方する・・・」
「・・・」
切風はその質問に無言という名の返答をした。
「その隊服・・・警軍だろ・・・警軍なんて四大財閥の一角のしもべみたいなものだろう。なぜそれを不服に思わ」
最後に何か言う前に切風はそいつにとどめを刺した。
「・・・ごめんね。」
切風は周りに一人しかいない、一人だけしかいない環境にした後で淡々とつぶやいた。
「君たちの思いはまだ叶えない、叶わない。早すぎるよ。今はその時ではないことは誰にもわかるはずだ。」
何を言っているか全く分からない。唯一理解できるのは彼女の目は普段と違い、落ち着いていてかっこよかったことだ。
「君たちのはあくまで願い、それを叶えるのは・・・私だ。」
そういって切風は血まみれの道を外れた。この数分後、誰かが悲鳴を上げることになるが彼女にその声は届いていなかった。