羅刹の紅(小説投稿)第九十六話Part2
○あらすじ
普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。
体育大会当日、偉炎がミスをしてしまい赤虎組は学校の近くまで接近してしまう。それに対し一般部は総出で立ち向かう。ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。切風の部下を名乗る精鋭部隊も加わり有利に思えたが、相手はさらに人を増やしてきた。苦戦を強いられることを予想し、切風は一般部の三人に次の作戦を指示する。だが、赤虎組にも作戦があるそうで・・・
〇本編
(そうだ!あの日赤虎組の黒ずくめのやつが私に攻撃してきただろうが!?)
覚えているだろうか?およそ一か月前、優雷の妹である優香を救うため商店街の裏路地で赤虎組と戦闘になった際、御影と言われていた男が切風と互角の戦いをしたのだ。おたがい本気ではなかっただろうがただ者でないことは明らかである。
(もしあいつなら・・・金庫を突破されるかも。)
その瞬間、切風は全身に力を入れ二人の元に向かおうとした。プロモーターも使っているため、百メートルぐらい離れている距離を十秒もたたないうちに接近できる。そして、無慈悲にも日本刀でその二人の首を取ろうとした。
「いけませんね。子どもがこんなところで危ないことをしては。」
しかし、それが叶うことはなかった。あと数十メートルのところで今度は別の人間が切風に持っていた武器を正確にぶん回した。
「!?」
さすがの切風も驚いたのかすぐさま空中で方向転換してそれを回避、地面に身体を置いた。ただ、急だったため自身の身体の衝撃を軽減するため手足を使って猫みたいなポーズで着地したのだ。彼女が手を地面につけるシーンはかなり珍しいかもしれない。子どもに対してそんなことするとは・・・君も大人としてどうかなと思うぞ。」
切風は相手の姿を見る。彼女と違い大柄で非常にハンサムな顔立ちをしている。そして服からでも分かるその筋肉は他の赤虎組と比べても一番であった。
(こいつ・・・やばい。多分すぐには仕留められない。)
切風は色々と理解したからかわずかに焦った。もし、あの二人を学校に行かせてしまうとどんなことになるかは想像つく。それを阻止できるのはこの場では切風しかいない。しかし、目の前にはそんな切風を阻止する謎の大柄漢がいる。
「はじめまして。私は赤虎組で幹部をしております有坂です。以後お見知りおきを。」
有坂はわざわざ戦場の中で切風に挨拶したのだ。
「狙いは金庫ってことでいいわよね?」
「えぇその通りです。そしてあなたがリーダでよろしいでしょうか?」
「さぁね、子どもだからわからないわ。」
有坂がきちんと答えたのに切風は適当に冗談を言う。
「失礼、女性にこのような質問するのは無礼であると承知なのですが、あなた本当においくつですか?中学生ぐらいにしか見えませんがあなたからはとんでもないほどの血の臭いがします。」
「トップシークレット。」
そう言うと切風は有坂の目の前を通過し、二人を追おうとした。しかし、振り切れない。
「あー、ちょっと待ってくださいよ。話はまだ終わっていません。」
有坂は切風と並走するように近づくとそのまま拳で切風の横腹を殴ろうとした。それを察してか切風は日本刀で有坂の腕を斬ろうとした。