NEWS 「NO,9 中国の新たな時代」
1, 緊迫劇
閉幕が目前に迫った時、会場が異様な雰囲気に包まれた。突如、胡錦濤(Hu Jintao)前総書記が係員に連れられて会場を去った。病気説と強制退場説が浮上しているが、今回はどちらの可能性が高いかを検証したい。
Twitter上にある一連を捉えた動画は先ず係員が胡氏に対して退席を促すシーンからである。この係員は胸に出席証を付けていないためヒラ係員である。後からもう一人やって来るが彼は胸に出席証を付けているためそれなりの役職者であろう。次にヒラ係員が胡氏の両脇に手を入れ立ち上がらせようとするも胡氏は拒否をする。その表情には困惑が見える。習近平氏の左手にある書類を手に取ろうとするも習氏とヒラ係員よって阻止されるが、これは習氏の書類であり胡氏の書類は栗戦書(Li Zhanshu)氏の手にある。その後、胡氏は立ち上がるが抵抗をしている。同時に栗氏が額をハンカチで拭きスーツのボタンを閉めて立ち上がろうとするも王滬寧(Wan Huning)氏により止められている。胡氏は最後に習氏に何か声をかけ李克強(Li Keqiang)氏の肩を叩いて退席した。
終始、胡氏は退席するのを拒んでいた。つまり、少なくとも胡氏の意思によって退場させられた点については明白である。更に、栗氏が額をハンカチで拭ったことや立ち上がるのを止められたことや最前列の長老や最高指導部のメンバーが退場する胡氏に対して心配そうな視線を向けていないことなどを勘案するに胡氏は強制退場させられた可能性がある。
2,強まる習一強体制
さて10月23日に次の5年間の新執行部が発表された。メンバーを見ると習氏の元部下やブレーン(王氏)が政治局常務委員に選出された。李氏や汪洋(Wan Yang)氏などの共青団派(共産主義青年団)は最高指導部から姿を消した。新体制の多くは習氏に対してイエスマンであると共に年下である。これまでは年上や幼馴染の幹部が最高指導部に存在し習氏に意見していたと考えられる。しかし、言わば「重石」がとれ身軽になった習氏が一層独裁体制を築く可能性がある。
3,原因
此処まで、習派で固めなければいけない理由がいくつかある。まず初めに、西側諸国と対峙するためには一枚岩であったほうが都合が良い。昨今、中国に対する視線は厳しさを増している。アメリカも政権が変わって唯一変わらないのは対中政策である。また、オーストラリアも以前は親しい関係にあったとされた労働党政権になっても対中は強行姿勢を貫いている。この様に、西側諸国と対峙するためには身内で固めた方がやり易いのである。
次に、習氏自身の求心力である。一帯一路も停滞気味であり香港については実績として強調しているも胸を張れる状態ではない。反腐敗キャンペーンも一種の恐怖政治であり求心力を低下させない為の方策である。14億人のトップとして強い権力を維持するためには側近には腹心がいた方がいい。
習氏以前の中国は虎視眈々と世界の覇権を取りに来ていた。しかし、習氏は野望を隠さず世界と対峙している。世界第2位の大国に相応しい身の振り方とは思えない。異例の3期目に突入した習氏の今後に注目である。