NEWS「共産党員除名事件」
● 発端
今回の騒動はある共産党員が現行の共産党党首の選出方法について意見を述べたことに端を発する。松竹伸幸氏は共産党の党首選について公選制の導入を年明けに刊行した自著である「シン・日本共産党宣言」で主張した。この主張の背景は志位和夫党首が22年間にわたって日本共産党の党首を務めていることにある。その後、都内で会見した際に「国民の常識からかけ離れている」と批判している。
松竹氏の主張に対して共産党は自身の機関紙である「しんぶん赤旗」において藤田健編集局次長名で真っ向から反論している。志位氏も反論が掲載された後の会見で除名処分の妥当性を主張している。
共産党が「民主集中制」による集団指導体制を採用している背景は。戦後に激しい路線闘争をしていたことが挙げられる。この時代は明らかに共産党にとって汚点であり、これを防ぐために民主集中制を採用していると考えられる。
● 噛み合わない主張
この除名問題に関して、朝日新聞及び毎日新聞が共産党の対応を批判している。朝日新聞は2月8日の社説で「共産党員の除名 国民遠ざける異論封じ」と題し、共産党の閉鎖性を指摘し、支持者離れが進み党勢が先細りすると論じた。毎日新聞も「共産の党員除名 時代にそぐわぬ異論封じ」と題した社説を発表し、自由闊達な議論が出来ない政党は退潮して行くと論じている。
他方、共産党はルールの遵守という観点から松竹氏の行動を批判している。党内で第一声を発するのではなく、外部の媒体を使用して党首選定プロセスに対して“攻撃”をしていると主張している。
朝日新聞及び毎日新聞は「声を挙げた」党員に対して即座に除名処分を行うのは現代の感覚として受け入れられないとの論調に対して、共産党としては綱領や規約に同意して入党した党員がそれらに反する行動をとった場合に除名処分を下すのは適切であると反論している。つまり、新聞2社の主張と共産党の主張は噛み合っておらず、国民からの心象が悪化した共産党としては有効な反論はできていない。間も無く統一地方選挙が控えるが、このままでは党勢拡大は不可能である。
● 同属界隈からの意見
「表現の自由」にも関わる問題であるだけに、左派界隈からも共産党の対応に反対する意見が出ている。山口二郎氏はツイッターで「大変残念な話」として「自らも市民社会の常識を共有する政党になる必要がある」としている。また、ある共産党所属の地方議員からもより開かれた政党でなければ次の100年はないと発言している。
統一地方選挙を目前に控えたこの時期に降って湧いて出た問題は、図らずとも共産党の特異性を炙り出した。