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羅刹の紅(小説投稿)第七十六話Part2

前回までのあらすじ
普通を心から愛する高校生「最上偉炎」は登校中に拾った拳銃で様々な事件に巻き込まれてしまい町で悪事を繰り返す「赤虎組」に命を狙われてしまうことになった。
それに対抗する目的で偉炎は学校内に一般部を作ることになった。部内には、途轍もない身体能力と頭脳を持ち合わせ、素性が全く分かっていない顧問の「切風叶」と、偉炎の親友で馬鹿力を持っている「北条優雷」がいた。そして、同じクラスでありながら不登校になってしまった「今川雪愛」を新たな仲間に入れようとした。雪愛はこの国でトップに君臨している五大財閥のひとつである今川家の令嬢であったが、祖父の謎の死によって財閥の地位をはく奪されている。そんな彼女の依頼として祖父の遺した財宝が眠っている教会を探すことになったが、その財宝を奪おうとしていた「赤虎組」の従者である首都の凶悪犯と衝突してしまうことになり、場所は教会の大聖堂まで移動した。



大聖堂でも戦いは続いた。おそらくここまで長い間戦闘したのはお互いに始めてだろう。例え凶悪犯でも三十分以上も走ったり、武器を相手に振り下ろしたり、野次を飛ばしたりすることもあるまい。一方で偉炎たちはそれぞれが比較的体力があるためなんとかこの苦しい状況を耐えていた。さすがに三人で五十人以上はいる大人と戦い続けているだけでも奇跡に近い。しかも、白兵戦なんてしたものだから、疲労はピークに近いだろう。それでも、彼らは戦い続けた。それぞれの目的を果たすためにはここで命を落とすわけにはいかないからだ。
 偉炎は大聖堂に存在するあらゆるものに隠れながら戦った。広場とは違いここには柱や長椅子など自分の身を隠せるものが数多く存在している。これは圧倒的少人数で戦っている偉炎たちにとってかなり有利に働くのだ。
「っ!相変わらず数が多いわね!」
 雪愛は不満を漏らしながらもナイフを敵に投げつけた。それを頸動脈に食らった敵は神に祈りをささげることもなく現世から離脱した。
「とにかく一人でも多く戦闘不能にしろ!!殺さなくていい!今は攻撃してくる相手の数を減らすことだけに専念してくれ!」
 偉炎は物陰に隠れながら雪愛に指示した。もちろん、偉炎も責務を果たさなければならない。彼は近くにある柱に移動しながら拳銃を二発放った。一発は外れたものの、もう一発は確実に敵の足筋に当たった。
「ぎゃあああ!」
 敵の断末魔が響く。それでも、偉炎は攻撃を続けた。残酷かもしれないが、他に方法がない。生き残るために彼は引き金を引き続けなければならないのだ。
 しかし、偉炎の感情は少しおかしな方向に向かっていた。そう、彼は今の状況を楽しんでいるのだ。再び彼の口元が緩む。明らかに狂気の沙汰だ。ただ、戦いの中で失いつつも得られるものがあった。仲間との連帯、戦い方のコツ、敵の行動を予測する判断・・・。そういう様々なものに対して心の底から喜びを感じていたのだ。
「・・・楽しい。」
 ついに、口に出してしまった。誰も聞いていなかったからいいものの、これ以上言ってしまうともう自分が自分でなくなってしまうのではないかと自身で危惧した。
 それでも、偉炎はこの感情を抑えることができなかった。楽しいものを楽しいと言って何が悪い。それに戦いでポジティブなのはこの場を生き残るためにも必要ではないか。
「・・・僕は・・・戦い続ける!!」
 彼は予備のマガジンをすぐに装備して、スライドを引いた。そして、装填が完了するとともにすぐに敵に銃口を向けた。割れたガラスの破片を踏み越えて襲ってくる敵に偉炎は容赦なく弾丸を撃った。
 
・・・彼に普通は訪れるのだろうか??

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