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羅刹の紅(小説投稿)第九十四話 Part2

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。そして体育大会の当日を迎えた。
 正午になった頃、偉炎がミスをしてしまい赤虎組は学校の近くまで接近してしまう。それに対し一般部は総出で立ち向かう。ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。しかし、人数的に不利な一般部はついにフォーメーションが崩れた。もはやこれまでとなったが、切風の部下と名乗る集団が一般部に加勢する。その結果、赤虎組を退けたかのように見えたが、、、

◯本編

「報告します!下から新たな敵が二百、こちらに向かっています。赤虎組です!」

現実はうまくいかなった。緑色の森の中に気味の悪い赤色の服を着た集団がゾロゾロと登ってきたのだ。
「まじか!」
 最初に動揺したのは優雷であった。そして、事実を認識することが遅れた偉炎の顔はようやく理解するとすっかりと青ざめてしまった。
(ヤバイヤバイ・・・!さっきまで百人ぐらいの赤虎組にこんなに苦戦していたのに次は二百人!絶対に勝てない・・・)
 単純計算でさっきの倍だ。いくら味方が増えたといってもさすがにこの状況を切り抜けるのは困難かもしれない。
「・・・なるほど。」
 それに関して切風は冷静であった。彼女は赤虎組が二百人攻めてくることを聞いた時点からできる限りのことを考えていた。そして、結論も早かった。
「我々の部隊、【蜂】はただちに赤虎組と交戦の準備をしろ。基本的にはサプレッサー付きの拳銃で応戦するように。」
「「「了解」」」
 切風がコマンドマイク(ヘッドセットマイクの進化型。ARコンタクトとリストデバイスに接続することにより会話をする時のマイクになる。なお、コマンドマイクは耳に着ける状態ものが主流)から緑の集団、つまり切風の部下に命令するとすぐに了解された。
「そして東沙座、あなたたちは今すぐに子どもたち三人を連れて学校まで移動しなさい。」
「え?」
 偉炎は驚いた。なんと切風が一般部に退却を命じたのだ。
「ここまで来るとこっからは本当の戦闘になる。敵も死に物狂いで来るだろう。だからここは我々大人に任せて君たちは自分の事を考えなさい。」
「そんなの嫌です!」
 優雷が否定した。切風に頼りにしてほしいのだ。しかもここまで頑張って引き下がるのはさすがに嫌なのだろう。
 しかし、切風は知っていた。優雷はもう限界なのだ。彼女は優雷に近寄ると素早くズボンの裾を上げた。
「・・・それは・・・ひどいね。」
 優雷の足は血まみれだったのだ。彼は偉炎たちが来る前まで一人で百人規模の赤虎組と戦っていたのだ。プロモーターを駆使して右から左まで誰一人通すことなく踏ん張った。しかし、そのガタは必ず来る。敵は当然攻撃してくるだろうし、慣れないプロモーターを使いまくれば負担がかかる。彼はその場に立っているだけでもやっとなのだ。
「こんな体ではむしろここでは邪魔になってしまう。偉炎も雪愛も大きな傷などはないと思うが、武器もほとんど使ってしまっただろう。」
「ええ・・・これで最後だったわ。」
 そう言うと雪愛は着ていた体操着のジャージを大きく羽ばたかせた。そうすると地面に一本のナイフだけが落ちた。
「君たちはよくやった。ここからは私たちに任せなさい。」
「そんなの納得できない!そしたら今まで頑張ってきたことは何だったんだ!」 
 偉炎が言う。
「君たちはここでは使えない。やるべきことはしっかりやってくれた。」
「でも敵はまだそこにいる!もしここであの人たちが負けてしまったら学校は終わりだ。そんなの僕は嫌だ!」
 偉炎は指をさしながら本心を言う。ただ本人も分かっていた。自分の持っている拳銃の残り残弾数は五である。そんな二百人も相手にできるほどの武器を持っていない。もちろん疲労も来ている。まともに戦えるとは思えないのだ。
 緑色の森が赤く燃える太陽にさらされている。どうやら太陽が雲から現れたのは決していい兆しなのではなく状況が赤虎組に傾く予兆だったのかもしれない。学校では体育大会が引き続き行われている。わずかだか歓声も森まで届いていた。ただこのわけのわからない状況も実は切風は誰一人として味方を信じているのだ。
「フフッ、安心しなさい。我々、【蜂】を舐めてもらったら困る。それにこれぐらいの敵、五十人いれば充分だ。それに・・・」
 切風は瞳を大きく開いた。


 君たちも学校でやってもらうことがある


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