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羅刹の紅(小説投稿)第九十九話

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。
 体育大会当日、一般部と赤虎組の戦闘が学校の近くの森で始まった。しかし苦戦を強いられることを予想した切風は一般部の三人に次の作戦を指示する。そして、赤虎組の幹部である御影と燿華が別働隊として学校に侵入をしたのだ。しかし、切風に指示されていた三人は先に学校に回り込み、学校にある地下金庫で衝突する。ついに最終決戦が行われようとしていた。

〇本編

御影たちが侵入してきた穴から太陽の光が金庫の中に差し込んだ。そして、偉炎の黒い髪と比較的白い顔が光に照らし出される。おそらく彼の人生の中で一番良い顔をしているだろう。
「・・・はぁ、分かったわ。その代わり危ないと思ったらすぐに撤退よ。自分の命一番って切風も言っていたし・・・そこにところよろしく。」
「分かった。」
 そう言うとお互いが同時にコマンドマイクをオフにした。そして、偉炎は御影の方を向いた。御影は着ている服で顔があまり見えていなかったが恐らくかなり起こっている様子であった。
「・・・お前が最上偉炎だな?」
「・・・そうだ。多分安藤と小山が僕のことを言ってしまったからもう隠す必要もなくなったけど。」
「ここ数か月、お前のしてきたことは大体把握している。特に、赤虎組の工場の破壊は俺もこの目で見たが・・・そこまでしてたてつく理由が分からない。」
「どういうことだ?」
「・・・お前は赤虎組という組織の怖さを知らない。今学校にいる戦力のほかにどれほどの手下がいると思っている?お前たち高校生だけで何とかできるレベルの話ではないのだ。」
 御影は話しながら自身の両手に再び赤い光を発現させ、周りの空気を手に集めた。御影の方はこんな話をしている時間はない。今は何としても偉炎を殺し、騒ぎになる前に金の入っているコンテナを外に持っていきたいところであった。
「知っているよ。そんなこと。」
 偉炎もちょうど弾切れだったためリロードをした。
「だけどもう逃げることはできない。僕がこの拳銃を手にしてしまった瞬間から、災厄の日常は始まっていた。引き返すことはできなかった。」
 拳銃のハンマーを下ろし、セーフティーを解除した。
「だから僕は未来にかける!お前たちをこの町から排除して僕は・・・普通を手に入れる!」
「・・・意味が分からん。」
 御影は手に集めた空気を偉炎に向かって放った。しかし、先制を仕掛けられると分かっていた偉炎は真っすぐ進まず右に移動し、それを回避した。そして、そのまま拳銃をニ発だけ放つ。
「・・・なんだその命中率の低さは?」
 ただ移動しながら撃ったため当然御影の体にかすりもしなかった。
(これでいい。ここであいつを倒す必要はない。このまま時間を稼げば僕の勝ちだ!)
 正面で戦えばおそらく偉炎に勝ち目はないが、偉炎と御影では圧倒的な違いがある。それはプロモーターの存在だ。充電満タンのプロモーターがあるお陰で御影よりも素早く行動できる。仮に、御影の攻撃が強くでも避けてしまえば問題はない。こちらは無理しない程度に拳銃で牽制すればいいのだ。(頼む・・・!このまま何も起こらないでくれ!)
 しかし、御影は至極冷静であった。中々当たらないため彼はどうすればいいのかを考える。その時間、わずか二秒。そして、行動を決めた所でちょこまかと逃げている偉炎に対してわずかに笑みを浮かべながら一言だけ伝えた。

 なめているのか?

 一方、少し離れた所では優雷と雪愛が燿華と戦っていた。
「あれ!?お前は確か、この町の商店街の裏路地で会ったやつだよな。あの時、肩に拳銃ぶっぱなしたけど・・・なんでそんな元気なの?」
「あ!お前か!あの時はよくもやってくれたな!」
 燿華と優雷は一度会っていた。それは優雷の妹が赤虎組の実験体にされていることを聞き、彼女を取り戻そうとしたが、燿華がいきない優雷に不意打ちをかけ、優雷と偉炎はその日優香を取り戻すことができなかったのだ。そして、その時の悔しさは今の優雷もしっかり持ち合わせている。
「てめーだけは許さねー!」

優雷はプロモーターを駆使して燿華に近づくとそのまま持っていた蜻蛉切(優雷の持っている槍、伸縮可能でスイッチを入れると強力な電気が流れる。)で斬り払おうとした。
「うひゃーーーー!今度は確実に殺してやるよ!」
 燿華も持っていた拳銃(ちなみにこの拳銃は偉炎と同じゴルトガバメント1911である。)を優雷に向けた。そして、そんな戦闘を雪愛はわずかに遠くから見ていた。
(くそ!あのバカが邪魔だ!)
 雪愛は遠距離から燿華の首を狙おうとするが接近戦をしている優雷が邪魔で仕方ないのだ。優雷の身長は百八十八㎝、一方で燿華の身長は百七十㎝前後だ。体格差があるためどうしても照準が定まらない。
(どちらかが油断した時に、一本投げる。それであのヤンキー不良みたいな赤虎組のやつを仕留める!)
 雪愛は時間を稼ぐというよりここで燿華を倒すことを計画していた。もし、後で誰が来ても「正当防衛でーす。」
 とか
「さっきの爆発でやられました。」
 とごまかすつもりである。ちなみに金庫の中にあった監視カメラは事前に目視できる部分で破壊してある。
 優雷の蜻蛉切を躱すとともに燿華は近くから拳銃を放つ。しかし、その前に優雷が燿華の拳銃のバレル部分を掴み照準をずらした。しかし、発砲の時の衝撃を手に受けてしまいしびれたような感覚になってしまう。

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