こたけ倫理観じゃん
もうすぐ配信が終わるというのにこの記事を書いてどうすんだと思いながら書いています。
こたけ正義感さんがYouTubeで期間限定で公開されている「弁論」について、
考察でもなんでもなく、ただただスゲーと思った点をいくつか挙げ、
その上で日本のエンタメと社会についてぼんやり考えていたことに触れたいと思います。
「能動的60分」すぎ
構成はいたってシンプルでした。
前回から変わった点はモニターを使って情報を補足する場面くらいでしょうか。
こたけさんの悲嘆フリップ芸みを感じたのと、途中でTEDみたいに見えてきて、
それがかっこよくて逆におもしろいゾーンに入りました。
ただ、あくまで「弁↓論」ですので、こたけさんの語りが全ての根幹です。
最前列の方に、ビスブラ原田さん、あるいは虹の黄昏かまぼこ体育館さんくらいの距離感をもってして
肖像権について詰めまくるという天国なのか地獄なのか分からない冒頭から、
こたけさんに空間を支配されていることが画面から伝わってくるのです。
そこからはシームレスに話題が繋がっていき、
笑ったり真剣に話を聞いていたらいつの間にか60分経っているんです。
「フリが長い」でおなじみ、ベートーヴェンの第九で換算すると、あの有名な部分にすら辿り着けません。それくらい60分は長いんです。
東京事変「能動的三分間」なら20周できちゃう。
展開綺麗すぎ
Aの話をしていて、笑っていて、その続きの話をしていると思っていたら、
既にA’→Bの道に乗せられていた。という場面が何度もあった。
話がひと段落して笑いが起きて、一息つく時間も用意されているけれど、
そこで「フ〜」と聴衆が椅子にケツ肉を馴染ませる余地はない。
先述しましたが、これも、こたけさんによる空間支配感を際立たせていたように感じました。
司法の問題をエンタメにしたという功績
うろ覚えですが、誰かが言っていた気がします。
「政治とお笑いの相性悪すぎ」的なことを。
いわゆる日本社会において「触れにくい」「意見が分かれる」「炎上しそう」等々、
様々な表現はありますが、分断が進み、弱者に八つ当たりをする人たちも少なくない、
そんな中で真正面から「袴田事件」を扱って、なおかつ「おもしろかった」こと。
それを共有して笑える空間が、あそこにあったこと。
言い過ぎだと思われても仕方ないかと思いますが、
私にはあの空間こそが「希望」だ、と感じました。
日本じゃスタンダップコメディはできない?できるじゃん。
やらない、あるいは冷笑する空気がやらせないだけじゃん。
出る杭を打つことにしか生き甲斐を見出せない日本人が多いのも事実ですが、
「うるせえ黙って『弁論』見ろ」と言いたい。
こたけさんが今後どのようなテーマを扱うか、
それは勿論こたけさんの関心やご自身の体験によって変わっていくものですが、
多分、数年後には教科書に載るレベルの冤罪事件を概要から経緯、
そして検察/弁護団の見解も含めた語りで「おもしろく」聞くことができた。
この体験は非常に価値があると思っていますし、感謝しています。
おわりに
普段は死ぬほど遅筆で、ラジオのメールも気が向いた時にしか送らねえような
不精人間がなぜ駆け込みでこんなnote書いたかというと、
「おもしろく社会問題伝えられるのすごいしうらやましいよ〜〜〜!!」
となったからです。
活字を扱う仕事をしているのですが、袴田さんを「イワちゃん」と呼ぶ仲だった
狭山事件の石川さんの思いを伝えたくても、
「この10字で汲み取ってもらえるのだろうか」
「この要素を切り捨てなければいけない」
という見出しの取捨選択と戦っても、そもそも読んでくれる人がいるのかとか、
オワコンメディアって言われすぎてるしな…などと思っているのです。
やっぱりエンタメは強いです。
あとこたけさんの漫談というか話すことが引っかかりなく耳に入ってくるのは
マジで「常識的な倫理観」を無意識レベルで持っておられるからだと思ってます。
どんなにおもしろいとされている方でも、ふと倫理観ないこと言ってると、
その瞬間にドッと冷めるしキモっとなるのですが、
こたけさんはラジオやゲーム実況でも、こちらがキモいと思う前に
「お前そんなん言うたらアカンぞ」「うわキモっ伝わってます?このキモさ」
など、アンテナの感度が強くて速いのでそういうところも個人的に好きです。