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ミレパが海外(アメリカ)の音楽シーンを制する鍵とは?

ども、やきこいもです。

ココ最近で海外進出する日本のアーティストがどんどん増えてきています。アジアツアーをするのも最近のJ-POPアーティストではもはや既定路線という感じ。YOASOBI、藤井風、King Gnu、羊文学…etc。Adoに関してはワールドツアーを開催しました。K-POPの世界的活躍を受けて日本の音楽業界も国内だけに留まらずに攻めていこうという流れになってきていて、これ自体は喜ばしいことだと思います。ただ現状、その先の世界を眺めるのは厳しいところがある、というのが個人的な見解です。

海外進出の現状

YOASOBIのCoachellaでのパフォーマンスはなんというか、これ以上は広がらんだろうなと思ってしまいました。新しい学校のリーダーズ含めて日本のカルチャーを背負って出ていこうというのは伝わる。しかし、YOASOBIを好きで観に来てくれる人達にとっては当然の演出でしかなく、想像を超えてくる「何か」を感じられない。LIVEパフォーマンスに関しては、ずっと真夜中でいいのにの方が遥かに優れていると思う。

YOASOBIの映像ビジュアルって借り物なんですよね。MVにしてもアニメ映像を編集しただけ。個人的にはカルチャーを背負ってというより、カルチャーを利用している感じがして受けつけない部分があります。日本の既にあるカルチャーを利用するだけで、そこから新しいものを生みだすという視点が欠けている。パフォーマンスもまだ新しい学校のリーダーズの方が好感が持てましたね。

YOASOBIの悪口はさておき、現状アメリカの音楽シーンに手をかけられたのは1963年にビルボード1位を獲得した坂本九「SUKIYAKI」やアニメ「チェンソーマン」のタイアップ、King Gnu/MILLENNIUM PARADE・常田大希との共作で大きな話題を呼んだ米津玄師「KICK BACK」のみといえる。日本をルーツにもっているという意味だけでいえばMitskiやJojiといったアーティストが商業的にも評価を得ていますが、日本国内でそのことが話題になることはありません。

海外音楽シーン、特にアメリカは圧倒的スターの時代でバンド形態で売れているのは旧世代の残りという感じです。最近だとManeskinが一番上手いこと売れている印象。そういう意味では藤井風に優位性があるようには感じますし、実力的にも申し分ない。ですがやはり難しいのは言語でしょう。英語という全世界で共有される言語に慣れきった人達にとって他言語であるということ自体が大きな抵抗感に繋がる。

「何を言っているのか分からない」

実際これで海外の音楽を聴かないという日本人も多いでしょう。というか殆どの日本人は国内音楽だけで満足してしまってわざわざ洋楽を聴こうとは思わない。日本国内にとってはK-POPが洋楽に取って変わったというのもあるとは思うんですけど、このような方程式がアメリカ国民の意識にもほぼ当てはまっていると考えていいと思います。更に言えばアメリカにとってアジア人は透明な幽霊みたいなものだ。日本のカルチャーにリスペクトを持つ米アーティストはそこそこいるが…ミーガンに関しては千葉雄喜とコラボしてるし。

とはいえアメリカ全体となると話は全く別で、日本好きな人間は変わり者である。それに、日本の文化が愛されることと日本人が愛されないことは両立する。教育格差からくる偏見もあり、アジア人は大体中国人だと思っているし、犬を食うと思っている人も多い。殆どのアメリカ人にとっては中国や韓国、日本の違いも分からない。少なくとも日本=クールなんてイメージは一般的ではなく、寧ろダサいものといえる。

アメリカの同調圧力

BTSのようなK-POPはゲイポップと揶揄され、マッチョイズムの強いアメリカでは聴いていることがバレればバカにされるどころか、虐めの対象になりかねないという。別にK-POPじゃなくても男らしさを感じないものは受けつけない。男は女々しいものは受けつけない、というような同調圧力があるのだ。勿論アメリカとひと口にいっても広いし、治安の良い地域になれば多少変わってくるのだろう。

ただ傾向としては確実にあるという話だ。だからアメリカ社会の問題を映すHIPHOPが流行る。これを聞くと日本ではHIPHOPが流行らないというのも半ば良いことのように思えやしないだろうか?

それはさておき、そういった人達がマジョリティを占めるアメリカでどうすれば日本=クールというイメージを持ってもらえるのだろう?

日本の音楽が世界に出ていくには

日本は意図しないところで成果を上げてきたという印象が強く、シティポップブームもまさにそれでした。Indigo la end、ゲスの極み乙女・川谷絵音は「K-POPのようなやり方は日本には難しい」「意識してないものが発見されて輸出されていくことが多い」と指摘している。しかし、米津玄師のような例外も存在します。

彼の場合、チェンソーマンという作品のアメリカ受けの良さも含めた成果だったと思います。MVを観ても明確にアメリカを意識した描写が見受けられますし、必ずしも狙ったものが外れるという訳でもないということ。

藤井風は英語も堪能ですし、歌唱スキルの高さと圧倒的なピアノのスキルも持ち合わせている。現状一番可能性が高いかもしれない。アニメタイアップというコースを使わずに海外に曲が浸透していったのも現状彼くらいだし、「死ぬのがいいわ」のように今後何かの契機でSpotify米チャートで1位という未来も考えらなくはない。

ただ、ここまでの話では何が当たるのかは結局分からないということが分かるだけだ。

アメリカは自由の国ではない

こういう話になると自由とは何なのか?というのも進撃の巨人を絡めて話しておきたい。そもそも進撃が自由を一つのテーマに描いているのもアメリカに対する当てつけだよなという話で。苦労して壁の外(アメリカ)に出てきたのに、そこにいたのは同じ人間。結局どこへ行っても何かに縛られている。日本の音楽業界がどうとかこうとか言う人もいるけど、別に海外の音楽シーンが完璧かといえばそんなことはない。別の問題を抱えてるのだ。

常田大希がエレンのセリフを引用してインスタのストーリーに挙げていたことがあった。

進撃の巨人におけるエレンの自由とは、未来はあらかじめ確定しており自由意志が存在しないという「決定論」を前提とした考え方であるといえる。どんな未来や結末になろうとも全ては自分が望んだこと。行為の責任を自覚し引け受けることがエレンの「自由」である。エレンは自身の根源的な願いを叶える為に進み続けた。

常田大希はインタビューにてこう語っている。

~ 昔の方がアートに対しては成熟してる。だから海外で制作していくにあたって、もう一度そこを引っ張り出す作業が必要になるって感じはしてるかな。昨日のBjorkもそうだけど、あんな彫刻みたいに曲作っていいんだったらめちゃめちゃやりてえわ!ってなるけど、あれを日本でやったとてって感じじゃん。あれが成立するのはBjorkのカリスマ性ありきでもあるし

MUSICA2023年5月号

ただ、ああいうものだって本来は俺の持ち場だから。そういうこともやっていかなきゃなって、観て思いましたね。所謂、日本で曲とされているフォーマットを逸脱した形というか。まあ結果、誰しもそこに向かっていくんだと思うんだけどね。坂本龍一さんを見ていても思うけど、自分がアーティストとして成熟していくことで、ポップスとは遅かれ早かれ離れていくと思うんだけど

MUSICA 2023年5月号

King Gnuとしてもミレパとしても自身の根源的なものを吐き出す覚悟が出来ているのだろう。合わせてこちらの記事を読んでもらうとより常田大希に対する理解度が深まると思う↓

ManeskinとChappell RoanのLIVEによる人気拡大

ここで注目したいのがManeskinChappell Roanの存在である。

どちらも1970年代に人気を博したグラムロックの影響を受けたファッション性というところも面白くはあるのだが、やはり注目すべきはLIVEによって人気が拡大していったということ。このようなムーヴメントは数十年単位で見られなかったことであり、非常に興味深い。

Maneskinは2017年に出たオーディション番組「Xファクター(イタリア版)」にて2位を獲得し、イタリア国内で人気を博す。2021年には楽曲「Zitti e buoni」を引っ提げ出演したサンレモ音楽祭(イタリア歌謡祭)で優勝。更にイタリア代表として出場したユーロヴィジョンソングコンテスト2021で優勝したことで世界的に人気が爆発した。

結成当初は路上でのLIVEパフォーマンスをメインに活動していた彼らだが、その経験がLIVEバンドとしての下地を築きあげたといえる。日本国内ではSUMMER SONIC2022に出演し圧倒的なLIVEを披露。SUMMER SONIC2024ではヘッドライナーとして招待されるなど勢いを増している。

そして、Chappell Roan
彼女は2024年で最も話題のアーティストといっても差し支えないかもしれない。2024年、Olivia Rodrigoのワールドツアーでオープニングアクトを務め、そのパフォーマンスが大好評。そして4月にはCoachellaのパフォーマンスでまたまた大ウケ。そんなこんなでLollapaloozaでは史上最大級の観客数を記録し、数ヶ月前にリリースした楽曲がSpotifyの全米チャートで一位になるなどとにかく凄まじい勢いなのだ。

このようにLIVEパフォーマンスによる人気拡大というムーヴメントが再興し始めている訳だ。

ここで2019年時点での常田大希の発言を見てみよう。

今カルチャーとして世界に出ていけている日本人って、あんまりいないと俺は思っていて。劇伴だと坂本龍一さんとかいますけど。アイドル文化とか、アニメタイアップを取ってアニメのヒットとともに海外でツアーをする、それが海外進出だ、って日本の音楽業界はやっているところがあって。でも自分はその姿勢とか、ルートには違和感がある。そういうものが、洋楽まがいのことをして海外に出ていくより圧倒的に面白がられるのもわかるんだけど。

https://www.excite.co.jp/news/article/RollingStone_32032/

川久保玲さん(ファッションデザイナー。「コムデギャルソン」の創始者)が『パリコレ』で『黒の衝撃』と言われるような形で乗り込んだみたいに、俺らも『これだ!』というものをやるべきだと思っているんですよね。

https://www.excite.co.jp/news/article/RollingStone_32032/

そのためには海外の人も体験としても楽しめて、惹きつけられるものが絶対に必要。そこの壁を破るにはどうしたらいいのかなって考えたときに、3Dだとか、演出面で個性を持って丸ごと飲み込めるようなことをしないとなって

https://www.excite.co.jp/news/article/RollingStone_32032/

常田大希の目の付け所、嗅覚には驚かされる。現在の欧米音楽シーンはHIPHOPが徐々に勢いを失い始め、カントリーやハウスが盛り上がり始めている。死んだといわれるロックも存在感を取り戻し始めている。レコード会社も何を売り出せばいいのか分からない「カオス」の時代ともいえる。インターネットやサブスクの普及によってより細分化していく人々の趣向が特定のジャンルでは容易に縛れなくなってきている昨今、日本から常田大希が出てくることに何か運命じみたものを感じてしまう。

ミレパは2021年時点でのパフォーマンスも素晴らしかったし、フジロックでも話題になった。そこから進化させていけば順当に海外で話題を呼んでもおかしくはない。そもそも楽曲も全然出ていない内にワールドツアーをやるくらいですから、客が全く曲を知らなくても圧倒できるという自信があるのだと思う。

とはいえそう簡単に行くとも思えない。当然といえば当然だがそれだけ海外の壁は厚い。それでもミレパの海外進出というタイミングで成功例が出てきているという事実には希望を感じる。アニメーションでいえばGorillazという前例もある。

勿論楽曲も重要だから、今後常田大希がどう自身の音楽性を解放させて海外にぶつけていくのかも注目どころだ。ワールドツアーの映像が楽しみ。期待して待ちます。

ここまで読んで頂きありがとうございました🙏

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