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『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』ってなに?研究者の視点から見たBL作品
この記事では、BL研究家の溝口彰子さんがBL作家の方々との対談を通してBL研究を深めていく『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』について紹介しています。
『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』の続編にあたる評論本で、レズビアンでもある溝口さんがホモファビア・ミソジニー的な観点を含めてBL作品を研究した画期的な本です。
対談だけでなくコラムや論文も収録し、総ページ数453ページという大ボリュームな作品となっています。
イラストは中村明日美子先生。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』 2017年刊行
出版社:宙出版→太田出版
同性愛の当事者でもある溝口さんは、アメリカの大学院でBLと女性のセクシュアリーズをテーマに博士号を取っています。
そんな溝口さんが、BL界を代表する作家陣やBL愛好家の著名人との対話を通してBL研究を深めているのがこの本。
現代においてBLがどのように消費されているのか、2000年代以降に急増した進化系BLのフェミニズム的な価値についてなどを掘り下げています。
研究書として濃密な作品ですが、対話パートは対談集としてもおもしろく読めるようになっているので、好きな作家さんの言葉を少しでも多く摂取したいという方は読んで損はないと思います。
出版社を変えて電子化もされています。
ここからは、インタビューに参加された方の紹介と、それぞれがどの著作について語られているのかをまとめていきます。
漫画家 ヨネダコウ
『どうしても触れたくない』でデビューし、『囀る鳥は羽ばたかない』などの代表作で知られる漫画家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、『どうしても触れたくない』や『それでも、やさしい恋をする』、『NightS』、『囀る鳥は羽ばたかない』についてお話されています。
漫画家 中村明日美子
『コーヒー砂糖いり恋する窓辺』でデビューし、「同級生シリーズ」などの代表作で知られる漫画家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、「同級生シリーズ」や『Jの総て』、『鶏肉倶楽部』についてお話されています。
小説家 岩本薫
『やるときゃやるぜ!』でデビューし、「YEBISUセレブリティーズシリーズ」、「発情シリーズ」などの代表作で知られる小説家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、「タフシリーズ」や『やるときゃやるぜ!』、「YEBISUセレブリティーズシリーズ」、「発情シリーズ」、「Prince of Silvaシリーズ」、「ロッセリーニ家の息子シリーズ」についてお話されています。
漫画家 トウテムポール
「東京心中シリーズ」でデビューし、『或るアホウの一生』などの代表作で知られる漫画家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、「東京心中シリーズ」や『或るアホウの一生』についてお話されています。
小説家 榎田尤利/ユウリ
『夏の塩』でデビューし、「魚住くんシリーズ」や「交渉人シリーズ」などの代表作で知られている小説家です。
BL作品は榎田尤利名義で、一般書は榎田ユウリ名義で発表されています。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、「魚住くんシリーズ」や「交渉人シリーズ」、『erotica』、「妖奇庵夜話シリーズ」についてお話されています。
「魚住くんシリーズ」についてはこちらの記事に詳しくまとめています。
漫画家 スカーレット・ベリ子
少女漫画家としてデビューしたのち、BL漫画家に転身した異色の経歴の持ち主で、「四代目・大和辰之シリーズ」、『ジャッカス!』などの代表作で知られています。
また、「マンガ家と作るデッサン集シリーズ」など漫画家向けのデッサン指南本も複数出版されており、精度の高いデッサンが魅力の漫画家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、「四代目・大和辰之シリーズ」や『女王と仕立て屋』、『ジャッカス!』についてお話されています。
漫画家 石原理
「38度線」でデビューし、『バーボンとハニートースト』や『あふれそうなプール』などの代表作で知られている漫画家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、『あふれそうなプール』や『できそこない』、『バーボンとハニートースト』、『カリスマ』、『犬の王』、『ひまわり』、『逆視眼』、『怜々蒐集譚』、『カプセル・ヨードチンキ』についてお話されています。
漫画家 羽生山へび子
『僕の先輩』でデビューし、『夜明けのブルース』や「晴れときどき、わかば荘シリーズ」などの代表作で知られる漫画家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、『僕の先輩』や「晴れときどき、わかば荘シリーズ」、『きゃっつ ~四畳半ぶらぶら節~』についてお話されています。
小説家 C・S・パキャット
イタリア系オーストラリア人の小説家で、英語圏のBLと言われている「M/M」小説をメインで手掛けている作家さんです。
代表作である『The Captive Prince Trilogy』は、冬斗亜紀さんの翻訳で『叛獄の王子』というタイトルで日本でも出版されています。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、『叛獄の王子』についてだけでなく、英語圏のBL事情についてもお話されています。
漫画家 よしながふみ
『月とサンダル』でデビューし、『大奥』、『愛すべき娘たち』などの代表作で知られている漫画家です。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、『きのう何食べた?』や『西洋骨董洋菓子店』、『ソルフェージュ』、『1限めはやる気の民法』、『執事の分際』、『ジェラールとジャック』についてお話されています。
哲学者 千葉雅也
『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』や『勉強の哲学 来たるべきバカのために』で知られる哲学者です。
溝口さんの前作『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』の書評を書かれた方で、『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』ではBL愛好家の視点からBLについて語っています。
BLビデオメーカー BOYSLAB
男性同士の恋愛を映像化しているAVメーカーです。
女性でも楽しめる映像がコンセプトで、近年BL愛好家のファンを増やしているレーベル。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では、映像制作の視点からBLを語っています。
三浦しをん
『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を受賞し、『舟を編む』や「神去なあなあシリーズ」など映像化されている作品も多数ある小説家です。
BL愛好家としても有名で、BL作家の方々との交流も盛ん。
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』では推しジャンルや推しカプも交えてBL作品について語っています。
まとめ
『BL進化論[対話篇] ボーイズラブが生まれる場所』は、研究書としてだけでなく読み物としてもおもしろい本です。
著者の溝口彰子さんは、漫画や小説から派生して映像のBL作品まで幅広く研究されているので、これを読むことで新しい視点でBLというジャンルを楽しめるかもしれません。
この本が気に入った方には前作の『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』もオススメです。