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『恋する星屑 BLSFアンソロジー』って何?SFレーベルから出る異色のBLアンソロ

この記事では、SFマガジン編集部によるBLアンソロジー『恋する星屑 BLSFアンソロジー』について紹介しています。

『恋する星屑 BLSFアンソロジー』は、『SFマガジン 2022年 4月号』『SFマガジン 2024年 04 月号』に掲載された「BLとSF特集」を書籍化したもので、漫画・小説共に豪華な面々が名を連ねています。

この本が異色なのは、BLレーベルからではなくSFレーベルから出るアンソロジーという点で、BL作家とSF作家、両方の作品を一気に読めるアンソロジーになっています。

特に宇宙SF好き、オメガバース好きは楽しめると思います。

生々しい描写はほとんどないので、BL初心者の方にもオススメ。


『恋する星屑 BLSFアンソロジー』執筆陣まとめ

執筆陣は以下。

榎田尤利(別名義:榎田ユウリ)……BLのみならず多彩なジャンルを手掛ける小説家。代表作に「魚住くんシリーズ」「交渉人シリーズ」「宮廷新刊物語シリーズ」「妖奇庵夜話シリーズ」など。

小川一水……主にSFジャンルで活躍する小説家。代表作に『第六大陸』『老ヴォールの惑星』『天冥の標』など。

高河ゆん……同人誌発のBL漫画家。代表作に『アーシアン』『超獣伝説ゲシュタルト』『LOVELESS』など。『機動戦士ガンダム00』のキャラクターデザイン担当でもある。

おにぎり1000米……2023年デビューの新進BL小説家。代表作に『今夜だけ生きのびたい』『月の影と竜の花』『モフモフに変身したら部下に嗅ぎつかれてしまいました』など。

竹田人造……主にSFジャンルで活躍する小説家。代表作に『人工知能で10憶ゲットする完全犯罪マニュアル』『AI法廷の弁護士』など。

・琴柱遥……主にSFジャンルで活躍する小説家。代表作に「讃州八百八狸天狗講考」、「夜警」など。

尾上与一……様々なジャンルのBLを生み出す小説家。代表作に『天球儀の海』から始まる「1945シリーズ」、「花降る王子の婚礼シリーズ」など。

吟鳥子……様々なジャンルで活躍する漫画家。代表作に『きみを死なせないための物語』『アンの世界地図~It's a small world~』『架カル空ノ音』など。

吉上亮……濃密なSF小説で人気を得ている小説家。代表作として『泥の銃弾』『テトラド 統計外暗数犯罪』など。アニメ「PSYCHO-PASSシリーズ」のオリジナルスピンオフ小説も担当。

木原音瀬……シリアスな作風で様々なジャンルで活躍する小説家。代表作に『箱の中』『美しいこと』「パラスティック・ソウルシリーズ」「吸血鬼と愉快な仲間たちシリーズ」など。

樋口美沙緒……切ないBLが得意な小説家。代表作に『愛の巣へ落ちろ!』から始まる「ムシシリーズ」、「パブリックスクールシリーズ」など。

一穂ミチ……BL小説家としてデビューして直木賞まで受賞してしまった偉人。代表作に『雪よ林檎の香のごとく』「イエスかノーか半分かシリーズ」『スモールワールズ』『光のとこにいてね』『ツミデミック』など。

表紙は中村明日美子先生です。

『恋する星屑 BLSFアンソロジー』あらすじまとめ

ここからは、『恋する星屑 BLSFアンソロジー』に収録されている作品のあらすじを紹介していきます。

ネタバレはしないように気を付けていますが、気になる方はご注意ください。

小説「聖域サンクチュアリ」 榎田尤利

舞台は、人間の生活がロボットによってコントロールされるようになった世界。人間は老いや病や怪我を事前に回避することで長寿を手に入れました。

そんな世界で、精巧に作られたヒューマノイドと被虐趣味者マゾヒストの科学者の恋を描いた作品です。

暴力が排除された世界で痛みを求める人間と、主人を傷つけることは許されないヒューマノイドの恋が見どころ。

小説「二人しかいない!」 小川一水

宇宙旅行中の大学生と社長が異星人に拉致され過酷な環境で観察されるという話です。

「セックスしないと出られない部屋」のSFバージョンですね。

読み味は比較的軽めです。

漫画「ナイトフォールと悪魔さん 0話」 高河ゆん

とあるバーチャル空間でナイトフォールというエルフのようなアバターと、悪魔さんという人間のアバターが淡い恋を育む話です。

1日にたった5分だけバーチャルの世界でしか会えない2人の、なかなか進まない関係が可愛い作品。

小説「運命のセミあるいはまなざしの帝国」 おにぎり1000米

思春期を迎えた男性の一部が、超男性的な特徴を持つセミ(いわゆるαに近い存在)と、その配偶者であるニンフ(いわゆるΩに近い存在)に変異する世界を描いた話です。

セミとニンフは生涯を通して生殖のみを行い子育てはしないという設定や、セミは変異の前に11年の眠りにつき、再度目覚めてから7年しか生きられないという設定がおもしろい作品。

小説「ラブラブ⭐︎ラフトーク」 竹田人造

「ラフトーク」というAIが人間の生活に深く入り込んでいる世界で、世界一の大富豪に惚れられてしまった平凡なサラリーマンを主人公にした話です。

「ラフトーク」の暴走を止めるためには主人公が大富豪と結婚しないといけないという設定がおもしろい作品。

ギャグ要素強めで読みやすいです。

小説「風が吹く日を待っている」 琴柱遙

1960年の北インドから始まるオメガバースを描いた話です。

風土史と絡めたオメガバースということで、αやΩの発生に説得力をもたせているところがおもしろい作品。

純愛BLとしても完成度が高いです。

小説「テセウスを殺す」 尾上与一

人間が脳をデータ化し他人の体へと乗り移ることができるようになった世界で、死刑囚の追跡と死刑執行を担う軍人の恋を描いた話です。

死刑の執行には人々の魂の核とも言える意志の中核テセウスを壊す必要があり、そのための弾丸として死んだばかりの誰かの意志の中核テセウスが使われるという設定がおもしろい作品。

尾上先生のnoteで続きのSSが読めます。※本編のネタバレがあるので読了後に読むのがオススメ。

尾上先生の他の作品も読んでみたいという方はこちらをどうぞ。

漫画「HabitableにしてCognizableな意味で」 吟鳥子

1980年代に小学生だった男同士のカップルが、実際にBL業界がたどってきた変遷を追いながら愛を深めていくメタ的な話です。

姉が持っているBLを恋愛の教科書にしているバジルと、SF好きのサフィークが、時代時代のBLとSFについて教えてくれる仕様になっているのがおもしろい作品。

小説「聖歌隊」 吉上亮

海から襲ってくるムシの脅威がある世界で、コロスを武器に唯一ムシを撃退できる聖歌隊ヒエロス・コロスという組織を描いた話です。

聖歌隊ヒエロス・コロスと彼らを守護する枯枝との絆が見どころ。

おそらくこの本の中で最もSF色が強い作品です。

小説「断」 木原音瀬

精子の死ぬ音が聞こえるようになってしまった男の苦悩を描いた話です。

BL要素の方が強めなので、SF初心者の方でも比較的とっつきやすいと思います。

木原先生の他の作品も読んでみたい方はこちらをどうぞ。

小説『一億年先にきみがいても』 樋口美沙緒

地球人が他の星に移住して長い年月が経った世界を舞台にしたオメガバースBLです。

ほとんどの地球人が異星人との混血になってしまった中で、αとΩという属性を作り出したことで地球人の純血を守り続けてきた一族という設定がおもしろい作品。

純愛BLです。

樋口先生の他の作品も読んでみたい方はこちらをどうぞ。

小説「BL」 一穂ミチ

BL好きの女性に恋をした天才科学者が、男性が男性にしか恋をしない世界を実際に作ってしまう話です。

SFとしてもBLとしてもおもしろい作品。

どちらかというと切なめです。

なお、「BL」は一穂先生の短編集『うたかたモザイク』にも収録されています。

一穂先生の他の作品も読んでみたい方はこちらをどうぞ。

まとめ

『恋する星屑 BLSFアンソロジー』は、SF好き、BL好きのどちらも楽しめるアンソロジーです。

もともとSFとBLは親和性が高いジャンル同士なので、両方を取り入れることでよりおもしろい作品ができるのかもしれません。

BL初心者の方、SF初心者の方にもオススメの1冊です。

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