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司法試験・予備試験用 経済法論証集(無料)

こんにちは。
焼石会計(やけいし れじ)と申します。
タイトル通り、司法試験・予備試験用の経済法論証集を無料で公開させていただきます。
みなさまの学習に少しでも役立つものになれば幸いです。

本論証集に登場する条文は、特段の指摘の無い限り独占禁止法の条文を意味しています。
また、本論証集の作成に当たって主に参考にさせていただいた資料・文献及びその略語は以下の通りです。
白石忠志『独占禁止法 第4版』(有斐閣、2023年) 白石
金井貴嗣・川濵昇・泉水文雄編著『独占禁止法 [第6版]』(弘文堂、2018年) 金井ほか
金井貴嗣・泉水文雄・武田邦宣編『経済法判例・審決百選[第2版]』(有斐閣、2017年) 百選
公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(平成16年5月31日) 企業結合ガイドライン
公正取引委員会「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成7年10月30日) 事業者団体ガイドライン
公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日) 流通取引慣行ガイドライン
公正取引委員会「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」(平成21年12月18日) 不当廉売ガイドライン

なお、本論証集では、重要度に応じて論証をA+~Cの4段階に分類しています。その意味は以下の通りです。
A+ ほぼ毎年出題されるので暗記しないと詰みます。
A   なるべく暗記してください。
B   暗記必須ではないですが、覚えておいた方が有利です。
C   多分出題されません。暇だったら見てください。


独占禁止法の基礎概念

公営事業に独禁法は適用されるか(C)

国や地方公共団体が営む公営事業に独禁法を適用することはできるだろうか。
この点につき、公営事業に独占禁止法を適用すると、採算性を犠牲にし、住民の福祉を追求するような事業運営が妨げられるおそれがあるため、適用できないと考える見解がある。
しかし、このような見解に立つと、公営事業運営の競争制限効果が大きい場合にも、公営事業に対し独禁法を一切適用できなくなり、妥当ではない。また、2条1項は独禁法上の「事業者」を「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」とのみ規定しており、営利性があることは必要とされていない。
したがって、公営事業を営む者も2条1項の「事業者」に含まれ、独占禁止法が適用されると解すべきである。(都営芝浦と畜場事件参照)
[参考文献:百選1の解説1~3、金井ほか21頁]

「事業」(2条1項)の意味(C)

独占禁止法2条1項の「事業」とは、なんらかの経済的利益の供給に対応し反対給付を反復継続して受ける経済活動を指し、その主体の法的性格は問わない。(都営芝浦と畜場事件参照)
[参考文献:百選1の判旨]

市場画定(A+)

一定の取引分野とは、競争が行われる場である市場を意味する。市場は、商品範囲・地理的範囲などに関して、基本的には、需要者にとっての代替性という観点から画定される。また,必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮される。
[参考文献:企業結合ガイドライン第2の1]

ハードコアカルテルにおける市場画定(A)

一定の取引分野は、具体的行為と無関係にあらかじめ画定されるものではなく、当該行為の競争への影響を判断することにより、個別具体的に画定されるものである。
そこで、いわゆるハードコア・カルテルにおいては、当該行為が実効性をもって行われているのであれば、通常の場合には、当該合意が対象とする範囲が一定の取引分野であると言うことができる。
他の地域や商品と代替性がないからこそ、競争制限的な合意を事業者が行うのであり、仮に代替性があれば当該合意を行うことは行為者の不利益にしかならず、事業者がそのような不合理な合意を行うはずがないとの経験則が働くからである。
[参考文献:百選2の解説2、百選3の解説1、白石58~59頁]

競争の実質的制限(A+)

「競争を実質的に制限する」とは、競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に競争変数を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすこと、すなわち市場支配力の形成・維持・強化を意味する。
[参考文献:金井ほか30頁]

入札談合における競争の実質的制限(A)

「競争を実質的に制限する」(2条6項)とは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい、入札談合の場合には、基本合意の取決めによって、事業者らがその意思で当該入札市場における落札者および落札価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいう。(多摩談合事件参照)
[参考文献:百選20 解説4]

公正競争阻害性(A+)

公正競争阻害性とは競争の実質的制限に至らない程度の競争阻害を意味し、①自由競争減殺、②競争手段の不公正、③自由競争基盤の侵害という3つのタイプがある。
①自由競争減殺は、競争回避と競争排除の2つの方法で行われるものであり、競争の実質的制限に至らない程度の自由競争の制約(競争の実質的制限の前段階ないし萌芽的段階)を意味する。
②の競争手段の不公正は、市場における競争が価格・品質・サービスを中心とする能率競争を本位として行われることを妨げるような、競争手段自体が非難に値するものの場合に認められる。
[参考文献:令和5年度司法試験採点実感、金井ほか31~32頁及び266頁、令和4年度司法試験採点実感]

正当化事由(A+)

独占禁止法1条の究極目的に照らして正当化事由が認められるか否かは、①目的の正当性、②手段の必要性・相当性及び③他により競争制限的でない手段によって当該目的を達成する可能性の観点から判断される。
[平成29年度司法試験採点実感]

私的独占

「排除」(2条5項)の意義(A)

本件行為が2条5項の「排除」に該当するか否かは、①自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり、②競業者の市場への参入を著しく困難にするなどの効果を持つものといえるか否かによって決すべきである。(NTT東日本事件参照)
その判断に当たっては、(i)市場の状況、(ii)行為者及び競業者の市場における地位及び競争条件の差異、(iii)商品の特性、(iv)本件行為の態様、(v)継続期間等の諸要素を総合的に考慮するべきである。(JASRAC事件参照)
[参考文献:百選7の判旨、百選8の判旨]

「支配」(2条5項)の意義(B)

「支配」(2条5項)とは、他の事業者の意思決定を制約し、自己の意思に従って事業活動を行わせることを意味する。
[参考文献:百選14の解説3]

不当な取引制限

ハードコア・カルテル(B)

ハードコア・カルテルとは、客観的に反競争効果が明白で、しかも、これを補うような競争促進効果ないし正当化理由を持ちえないことが外見上明らかなカルテルを意味する。
これに対して、非ハードコア・カルテルは、行為の外見上の特徴のみから競争の実質的制限のみを目的とするとは断定しがたく、反競争効果を補うような競争促進効果ないし正当化理由が存在する可能性が否定しきれないものを指す。
[参考文献:金井ほか 39~40頁]

入札談合(A)

入札談合は、基本合意とその後の個別調整からなる。
入札談合においては、基本合意が成立したときをもって、意思の連絡、相互拘束、競争の実質的制限の各要件に該当し、個別調整等の基本合意成立後の事実は、基本合意の成立時点での各要件該当性を推認させる事情である。
[参考文献:令和元年度司法試験採点実感]

実質的競争関係(A)

不当な取引制限における「事業者」(2条6項)は、同質的取引関係にある者や取引段階を同じくする者に限られるとする見解がある(新聞販路協定事件参照)。
しかし、このような見解には賛成することができない。2条6項では「事業者」の範囲について何らの限定も付されていないし、このような見解は違反行為の実態に合わないからである。
そこで、不当な取引制限における「事業者」の要件を満たすためには、実質的競争関係が認められれば足りると解すべきである。(シール談合刑事事件参照)
[参考文献:百選18の解説2、百選19の判旨]

「事業者」「他の事業者」該当性(A)

独占禁止法2条6項の「事業者」「他の事業者」に該当するためには、独立の事業者であること及び競争関係にあることを要する。
[参考文献:令和3年度司法試験採点実感]

「共同して」の意義(A+)

「共同して」(2条6項)とは、事業者相互に意思の連絡が存在することを意味する。そして、意思の連絡とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味する。
(一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当である。(東芝ケミカル事件参照))
[参考文献:令和3年度司法試験採点実感、百選21の判旨]

「意思の連絡」の推認(A+)

意思の連絡を直接示す証拠を入手し立証することが困難な場合や、黙示的な合意が成立したにすぎない場合には、意思の連絡は、間接的な証拠の積み上げによって立証される。そのような間接的な証拠としては、①事前の連絡交渉、②連絡交渉の内容、③事後の行動の一致が挙げられる。
[参考文献:金井ほか49頁、百選21の解説4、百選22の解説2、平成30年度司法試験出題趣旨]

意思の連絡の具体的内容(B)

意思の連絡の認定においては、競争への影響をもたらし得るような内容の合意等を認定できればよく、それ以上の詳細な内容の合意まで存在することについて立証される必要はない。
[参考文献:白石232頁]

意思決定権者の関与の要否(B)

ある事業者において価格等の意思決定権を持たない者が、他の事業者と連絡をとる場合、「意思の連絡」があるというためには、連絡内容が事業者の意思決定権者に報告され意思決定に影響を及ぼしたことが必要である。(奥村組土木興業東京地裁判決参照)
[参考文献:白石234頁]

「相互にその事業活動を拘束し」該当性(A+)

「相互にその事業活動を拘束し」(2条6項)の要件を満たすためには、①拘束の相互性及び②拘束の共通性を要する(新聞販路協定事件参照)。
もっとも、①拘束の相互性については合意を遵守し合う関係があれば足り、②拘束の共通性については、拘束の内容がすべて同一である必要はなく、共通の目的に向けられたものであれば足りる。
また、「拘束」の程度としては、合意の実効性を確保するための制裁等の定めがあることまでは必要でなく、各社の自由な意思決定が制約されて、事業活動が事実上拘束される結果となれば足りる。
[参考文献:令和3年度司法試験採点実感、百選18の解説4、流通取引ガイドライン第2部第2の3注2、百選20の判旨及び解説3]

不当な取引制限の成立時期(B)

不当な取引制限の成立時期については、争いあるものの、合意時と考えるべきである。何らかの競争制限的な内容の合意が成立すれば、潜在的には競争の実質的制限が生じていると評価できるからである。
[参考文献:百選29の解説1及び2]

不当な取引制限の終了時期(B)

不当な取引制限の終了時期は、各事業者が当該拘束から解放されて自由に事業活動を実施することとなった時点(例えば公正取引委員会の立入検査が行われた日)と解すべきである。(モディファイヤー排除措置東京高裁判決参照)

どのような場合に合意からの離脱が認められるか(A)

離脱者が離脱の意思を参加者に対し明示的に伝達することまでは要しないが、離脱者が自らの内心において離脱を決意したにとどまるだけでは足りず、少なくとも離脱者の行動等から他の参加者が離脱者の離脱の事実を窺い知るに十分な事情の存在が必要である。(岡崎管工事件参照)
[参考文献:百選30の判旨]

非ハードコア・カルテルにおける競争の実質的制限(A)

非ハードコア・カルテルの事例においては、当該行為によってもたらされる競争促進効果と競争制限効果を比較衡量して、競争の実質的制限の有無を判断する。(※論文式試験における論じ方としては、まず競争制限効果に関する分析を的確に行った上で、競争促進効果を比較衡量しつつ結論を導くという論理構成をとることが適切である。)
[参考文献:令和5年度司法試験採点実感]

事業者団体

事業者団体の決定(B)

事業者団体の何らかの機関で決定がされた場合において、その決定が構成員により実質的に団体の決定として遵守すべきものとして認識されたときは、その決定を団体の決定ということができる(大阪バス協会事件参照)。

8条1号と8条3号ないし5号の関係性(B)

8条1号に該当するというためには、市場競争が実質的に制限され、価格等の取引条件をある程度自由に左右することができる力としての市場支配力の形成・維持・強化が必要であるのに対して、3号ないし5号はそれに至らない程度・態様の競争の阻害で足りる。
[参考文献:令和2年度司法試験出題趣旨]

「一定の事業分野」(8条3号)の意義(B)

「一定の事業分野」(8条3号)とは、一定の取引分野とは異なり、相互に競争関係にある供給者群、需要者群のいずれか一方の事業活動の範囲を意味する。
[参考文献:百選37の解説3]

8条3号(B)

8条3号の規定は、競争の実質的制限に至らない場合にも事業者の数を制限する行為を禁止の対象とすることに独自の意義があり、8条1号の予防規定の役割を果たす。
8条3号における「数を制限する」とは、既存の事業者を排除し、あるいは新規参入を阻止することをいう。
[参考文献:百選37の解説3、百選38の解説3]

8条4号(B)

「構成事業者……の機能又は活動を……制限すること」(8条4号)とは、構成事業者の価格、生産数量、販売数量、取引先、販売方法など基本的な競争手段を制限するものが中心である。
また、「不当に」(8条4号)とは、正当な理由なく市場支配力の形成・維持・強化に至らない程度・態様において競争を阻害することを意味する。
[参考文献:令和2年度司法試験出題趣旨]

8条5号(B)

「事業者」(8条5号)は、事業者団体の構成事業者に限られない。
また、争いあるものの、「不公正な取引方法に該当する行為」(同号)は、行為要件だけでなく弊害要件つまり公正競争阻害性をも満たす行為に限定して解釈すべきである。そのように解釈することが、条文の論理的な読み方に忠実だからである。
「させるようにすること」(同号)は、強制がなくとも勧奨で足りる。
[参考文献:令和2年度司法試験出題趣旨、白石533~534頁]

企業結合

「こととなる」の意義(A)

「こととなる」(10条1項等)とは、企業結合により、競争の実質的制限が必然ではないが容易に現出し得る蓋然性があることを意味する。
[参考文献:百選47の解説3、企業結合ガイドライン第3の1]

水平型企業結合による競争の実質的制限(A)

水平的企業結合の事例においては、単独行動と協調的行動それぞれの観点から競争の実質的制限の有無を判断する。
単独行動による競争の実質的制限は、市場シェア、市場集中度、既存競争者の増産可能性、新規参入の可能性、輸入、隣接市場からの競争圧力等を総合的に考慮して判断する。
協調的行動による競争の実質的制限は、市場集中度の高さ、競争者の対称性、商品の同質性、市場の透明性等を総合的に考慮して判断する。
[参考文献:金井ほか216~230頁]

垂直的企業結合による競争の実質的制限(A)

垂直的企業結合の事例においては、単独行動と協調的行動それぞれの観点から競争の実質的制限の有無を判断する。
単独行動による競争の実質的制限は、投入物閉鎖または顧客閉鎖により生じ得る。
協調的行動による競争の実質的制限は、企業結合当事者らが競争者の価格等の情報を入手し得るようになる結果、それらの間で協調的に行動することが高い確度で予測できるようになることにより生じ得る。
[参考文献:令和2年度司法試験出題趣旨]

問題解消措置(B)

企業結合事例における問題解消措置には、「構造的措置」(競争者への事業譲渡等)と「行動的措置」の2種類がある。
水平型企業結合における問題解消措置は、企業結合が実施される以前の競争状況を維持するようなものである必要があり、そのために、「構造的措置」が原則として採られるべきである。また、問題解消措置そのものが構造的措置である場合には、それ自体も新たな企業結合となるため、問題解消措置自体が新たな競争上の問題を惹起させることがないか検討する必要がある。
[参考文献:令和元年度司法試験採点実感、企業結合ガイドライン第7の1及び2、金井ほか249~251頁]

不公正な取引方法

「正当な理由がないのに」「不当に」の意義(A)

「正当な理由がないのに」「不当に」は、公正競争阻害性を意味している。

共同取引拒絶における「共同して」の意義(B)

「共同して」(2条9項1号柱書き、一般指定1項柱書き)の要件を満たすためには、当該取引拒絶行為を行うことについての『意思の連絡』が必要である。
『意思の連絡』とは、複数事業者が同内容の取引拒絶行為を行うことを相互に認識ないし予測しこれを認容してこれと歩調をそろえる意思であることを意味する。(着うた事件参照)
[参考文献:百選53の解説2]

単独取引拒絶(一般指定2項)(C)

一般指定2項の「不当に」とは、公正競争阻害性を意味している。
そして、事業者は一般に取引先選択の自由を有しているから、単独取引拒絶を行い、これによって相手方の事業活動が困難になる恐れが生じたとしても、それのみでは直ちに公正競争阻害性は認められない。
しかし、独占禁止法上違法な行為の実効性を確保するための手段として取引を拒絶する場合や、競争者を市場から排除するなどの独占禁止法上不当な目的を達成するための手段として単独取引拒絶を行い,これによって取引を拒絶される事業者の通常の事業活動が困難となるおそれがある場合には、例外的に公正競争阻害性が認められる。(東京スター銀行事件参照)
[参考文献:百選54の判旨及び解説1]

不当廉売(B)

「供給に要する費用」(2条9項3号)とは総販売原価を意味する。
そして、可変的性質を持つ費用を下回る価格は、「供給に要する費用を著しく下回る価格」であると推定される。このような価格設定は、廉売対象商品の供給が増大するにつれ損失が拡大する、明らかに経済合理性のない価格設定であり、当該行為者と同等以上に効率的な事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるからである。
[参考文献:不当廉売ガイドライン3(1)ア(ア)~(エ)]

抱き合わせ販売(A)

当該行為が抱き合わせ販売として一般指定10項に該当するためには、「従たる商品」が「主たる商品」に対して別個の商品であることが認められなければならない。
また、「購入させ」( 一般指定10項)とは、ある商品の供給を受けるのに際し、客観的にみて少なからぬ顧客が他の商品の購入を余儀なくされているか否かによって判断される。(藤田屋事件参照)
抱き合わせ販売の公正競争阻害性(「不当に」)は、自由競争減殺と競争手段の不公正の2つの側面から認められる。
[参考文献:百選54の判旨及び解説1]

「拘束」の意義(A)

「拘束」(2条9項4号、一般指定12項)の要件を満たすためには、契約上の義務として定められていることまでは必要でなく、事業者の何らかの人為的手段によってその実効性が確保されていれば足りる。
[参考文献:百選66の解説2、流通取引慣行ガイドライン第1部第1の2(3)]

再販売価格拘束(B)

再販売価格拘束は、事業者の事業活動における最も基本的な事項である販売価格の自由な決定を拘束するものであり、流通業者間の価格競争を減少・消滅させることになることから,このような行為は原則として公正競争阻害性(「正当な理由がないのに」(2条9項4号柱書き))が認められ違法となる。
[参考文献:流通取引慣行ガイドライン第1部第1の1(1)及び2(1)]

値引き表示の制限(B)

小売業者の値引き表示を制限する行為は、事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定するという事業者の事業活動において最も基本的な事項に関与する行為であるため、原則として公正競争阻害性が認められ、一般指定12項の拘束条件付取引に該当する。
[参考文献:金井ほか340頁、流通取引慣行ガイドライン]

販売方法の制限(A)

事業者が販売方法等について有する選択の自由は原則として尊重されるべきである。
そこで、メーカー等が小売業者の商品販売方法に制限を加えることは、①その制限がそれなりの合理的な理由に基づくものであり、②他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り、公正競争阻害性が認められず、拘束条件付取引(一般指定12項)には該当しない。(資生堂事件参照)
[参考文献:百選71の判旨及び解説2]

拘束条件付取引の公正競争阻害性(B)

拘束条件付取引で問題とされる自由競争減殺には、①販売地域制限等を通じて価格維持効果を生じさせるもの(競争回避効果)、②他の事業者を市場から排除したり、新規参入を妨げたりするもの(競争排除効果)、③他の事業者が代替的な取引先を容易に確保することができなくするもの(市場閉鎖効果)といった類型がある。
そのような公正競争阻害性の有無を判断するに当たっては、①ブランド間競争の状況、②ブランド内競争の状況、③当該行為を行う事業者の市場における地位、④当該行為の対象となる事業者の事業活動に及ぼす影響、⑤当該行為の対象となる事業者の数及び市場における地位を総合的に考慮する。
[参考文献:百選74の解説2、令和3年度司法試験出題趣旨、流通取引慣行ガイドライン第1部の3(1)、百選65の解説5]

課徴金

入札談合の場合の「当該商品又は役務」(7条の2第1項)(B)

「当該商品又は役務」(7条の2第1項)とは、入札談合の事例においては、本件基本合意の対象とされた商品又は役務であって、本件基本合意に基づく個別調整の結果、具体的な競争制限効果が発生するに至ったものをいう。(多摩談合事件参照)
[参考文献:百選102の判旨及び解説1]

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