HealthX Innovation Programに参加してきました!

 はじめましてこんにちは。yakataです。

 今回の記事は昨日8/25に行われたKHXのイベントログになります。
 KHXは慶応大学の医療×Techグループで、今年出来たグループながらも既にプロジェクトがいくつも走っているパッションあふれるところでした。
 自分の所属しているMIラボも含め、医療×Tech系のコミュニティが増えてきたように感じます。
前置きもこのあたりにして早速本題を見ていきましょう!
イベントのFaceBookはこちら
(注:()内の文章は筆者yakataの意見や注です。ログが不十分で記事にできなかった項目もあります)

KHXとは

医療の課題を技術で解決する!をモットーに慶応の学生が今年作ったグループ。医学部・理工学部・SFC・薬学部の学生、計15人が所属している。
医療現場の課題を知っている医学生と解決策(技術)を知っている理工系学生で連携することで、医療の課題を解決出来るのではないかという試みだそうです。
今回のイベントは、プロジェクトリーダーが解決したい医療系のニーズをもとにプロジェクトを立ち上げ、プロジェクトを知ってもらう&メンバーを集めることを目標にした会でした。

ここで行われるプロジェクトは
 医療系学生+理工系学生でチームを組んで、
 メンター+医学部教授のサポートを受けられ、
 最大10万円の開発資金が提供され、
 権利一切はチームに所属し、
 慶応の施設(3Dプリンターとか)を使えて、
 特許取りたいときには慶応の税理士に頼める。
らしいです。(天国かな。)

イベントの構成

4人のプロジェクトリーダーによるプレゼン
 1:トラッキングを用いた労務管理支援と改善
 2:入院患者の持参薬自動確認システムの作成
 3:人工呼吸器関連肺炎患者数の減少を目指す
 4:ガイドラインを遵守するためのアプリケーション作成
東大の前田祐二郎さんの講演会
写真撮影
懇親会

トラッキングを用いた労務管理支援と改善

ニーズ
医療業界では過労が問題となっている。働き方改革はホットな話題だが、労務管理システムが貧弱であり対策が十分でない。まず医療関係者が教育、医療などにどれだけ時間を書けているのかがわかっていないので、それをまず知りたい。

原体験
GEヘルスケアの工場を見学したところ、ビーコンを用いた作業者トラッキングを行い、業務改善している現場を目にした。これは医療現場でも活用できるのではと考えた。

先行研究
監視カメラ映像を解析してトラッキングしているものは有るものの、患者さんのプライバシーが問題となることが考えられ、医療現場で活用するのは現実的ではない

何をするか
ビーコンを用いたトラッキングを医療現場でも行う。それにより労務環境の改善を行う。
医療現場特有の事柄(プライバシー、場所・設備の特殊性など)を考慮して広くスケールするためにUIをこだわる
実際に作ったものを実際に慶応病院で使ってみる(注;既に連携の準備は出来ているらしいです)。

入院患者の持参薬自動確認システムの作成

ニーズ
持参薬確認は薬剤師が1日あたり3時間かけているとてもウェイトを占める作業。ヒューマンエラーも問題となる。
カプセルや錠剤を飲めない人がいる。そのような人には脱カプセルや簡易懸濁などの方法(剤形変化と言う)が取られるが、どの薬剤でも出来るわけではない。これを毎回調べるのは時間的コストがかかっていて負担である。

先行研究
企業が20年以上書けて開発しようとしているがまだ出来ていない

何をするか
持参薬をスキャン&鑑別するシステムをつくる。機械学習による画像処理を考えている。
剤形変化可能かどうかを即時判断できるようにする。

人工呼吸器関連肺炎患者数の減少を目指す

人工呼吸器関連肺炎とは
 ICUで人工呼吸器をつけた患者の10-30%程度に発生。そのうち20-30%が死亡する病気。ICU全体の死亡者数の15%を占める。
 気管に細菌や異物が入らないようにするカフと呼ばれる構造が人工呼吸器にカフの圧をあげすぎると気管が損傷するため密着させることが出来ず、チューブの中や外から細菌が入ってくることで起こる。また、チューブに細菌が付着し、コロニーを形成することもある。

ニーズ
人工呼吸器関連肺炎によって医療コストや耐性菌、入院期間の長期化などが問題となっている。治療を目的としたICUにおいて15%の人が人工呼吸器関連肺炎という病気そのものではないことで亡くなっているのは矛盾を感じる。

何をするか
病院での意見聴取や視察、呼吸器内科との連携を行う。
具体的プロダクトを考えるところから募集する。

ガイドラインを遵守するためのアプリケーション作成

ニーズ
抗菌薬処方を最適化させたいニーズがある。抗菌薬はとても種類が多く、熟練した医師でも自分の專門臓器にしか適切処方するが出来ない。
抗菌薬はウイルスには効かないが、風邪(ウイスル性)にも出されることがあるという現状が有る。
プロジェクトリーダーが調べた範囲では
 スペクトラムの広い薬を使ってしまう
 弱すぎる/強すぎる抗菌薬の処方をしてしまう
 医師が経験的に処方している
 患者が自己判断で投薬をやめてしまう
 短時間しか診察できず、その間に適切な抗菌薬を見つけるのは難しい
という課題があった。これらの不適切な処方により耐性菌が発生し、(注:適切に使っても耐性菌は発生するので、発生速度・規模が大きくなるという意味だと思われます)WHOの試算によると、耐性菌による経済損失は最低230兆円だと言われています。
抗菌薬を処方するときに参考になるガイドラインは存在するが量が多く、毎回読むのはコストがかかる

やること

ガイドラインをアルゴリズム化して少量の入力で適切な抗菌薬がわかるようにする
デバイス系、検査機器の改良など、ハード面からニーズを解決する(こちらはやらない可能性も有り)

東大 前田祐二郎先生の講演

前田祐二郎先生とは(自己紹介)
ジャパンバイオデザイン 共同ディレクター
スタンフォードのバイオデザインの本を翻訳している
(その他多数経歴がございます)

良いビジネスのアイデアとは
解決策では無く、対象がしっかりしていること。つまり、このビジネスによって誰が幸せになるかわかっていること。

Solutionの質を高めたところで、Problemの質はあがらない
SolutionもProblemも低いところからProblemを高めてSolutionを高めるという順が必要。
どう差別化するのか?ということはアイデアの質には関係ない。

バイオデザインとは
Paul Yockが作ったプログラム
チームは2ヶ月臨床現場に張り付いて、フレッシュな視点で現場を観察する。
東大も同じことやっていて、公募をしている。

医療ベンチャーに必要なこと
医療の世界でなにかしようとするならば、医療現場感、クリエイディビディTech、ビジネスが必要。スタートアップは熱量を共有する限界から2-4人くらいでスタートする。だから、これら3つ全体を1人でやらなくてはいけない。

ProblemとSolutionから見た分野の棲み分けの話

(SolutionとProblemは落合さんも話していました。そのときの講演会のログはこちら。)

Solutionの質が高いところ(Unknown)は大学や企業の研究室(Discover)で行われる。

Solution Simple(Knownより下の質)はコモディティ化したものWebやプログラミングなど(Non-tech-startup)。この分野ではお客さんをいかに早く獲得するか、いかにフィードバックを得てサービスの質を上げるかが勝負。
例えば、Facebook。Facebookと似たサービスはFBが出来る前から既にあったが、フィードバックを得てサービスの質を上げるのがFBのほうが上手かったから競争を勝ち残れた。

Solution Known(特許は取れるかもしれないくらい。ある診療科は使っているが、全診療科には普及していないくらいの技術群。)
バイオデザインはここをやる。時間的コストが小さく(3年くらい?)学生のうちに終わるから。
医療の課題というだけでProblem Unknown。安全性などの面から他の分野に比べて敷居が高いから、理工学的な最先端の技術は医療には入らない。そのため、研究するのでなければここが一番Solutionの質が高い地点。

バイオデザインにおけるニーズの考え方
needsを考えるときは5分でProblem Poplulation Outcomeを伝えることが重要。
「AにとってBするために、Cする方法」の型がわかりやすい。
例、肥満女性にとって長生きするために体重を減らす方法
これをブラッシュアップしていく。
体重を減らす→脂肪を減らす→筋・脂肪比を改善する→体重・筋脂肪比の維持
肥満女性に→閉経後の女性肥満患者に→閉経後の女性肥満患者で急性心筋梗塞の家族歴のある人に
長生きするために→心血管疾患の発生率を減らすために→血圧を下げるために(この言葉の変換には論文レベルの根拠が必要。)

このようにして医療的に修飾していく。よくあるのは、患者さんにとって、看護師にとってといった抽象的な対象をとった課題。これをspecificにしていくことが重要で、課題を医学的に修飾できることに医学生がやる価値があると考えている。
こうやってアイデアを出すとアイデアが好きになる。それはアイデアのために誰を幸せにするのかという対象を見失う原因にもなる。そのため、プロジェクトを走る前に対象を明確にする必要がある。

最後に技術が診療科を横断するといいという話
医療従事者にニーズを聞くと「この機会のこの部分をこうしてほしい」といった、既に慣れた機器のマイナーチェンジになる。

いくつかの医療ベンチャーの紹介
(注:会社名を書ききれませんでした。知っている方コメントしてくださると助かります)
ベンチャー①
副鼻腔炎の治療として骨を削って副鼻腔をきれいにする手術が行われていた。骨をパキパキする手術だからとても受ける人が少ない。つまり、患者のニーズとして骨パキパキする手術したくないというものが有る。
あるベンチャーがガイドワイヤーを鼻の穴から自然孔に入れる手術とそのための装置を提案した。この会社は約700億円で売れた。

ベンチャー②
骨パキパキした後にステントいれると予後が良いらしい。ステントは心臓病治療で既に行われている技術だからSolution Knownである。上場して約550millionドルの時価総額

ベンチャー③
深部静脈血栓患者は肺塞栓症予防のための抗凝固療法のためにずっと薬を飲まなくては行けない。これを外科治療に代替できないかと考えた。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を司る神経は腎動脈の間にある。この神経を破壊する方法の一つとしてカテーテルで腎動脈まで行って、神経を焼く方法がある。これは心臓の手術で行われている技術であるからSolutionKnownである。

ベンチャー④
運動スポーツ、飛行機に乗ったときに脈が飛んでそうな気がする、と感じる人がいたとする。このようなときの検査として従来は24時間つけっぱなしの心電図が検査で使われていた。けれど、これをつけている間は患者さんは安静する傾向がある。
このベンチャーでは、3週間つけ続けられる心電図解析用端末を開発。データをこの会社に送ると解析してくれて次の病院に行く日までに病院に解析結果を送ってくれる。ベンチャー側はデータが集まるので、それをもとに機械学習をして解析技術を強化することが出来る。

ベンチャー企業紹介のまとめ
一度成功するとお金が集めやすくなる
技術的には難しくないし、君たちでも作れそうでしょ

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