徹底的に現実主義なタスク管理術
「なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?」
働いている人にとっては普遍的すぎる問い。この問いに対する処方箋が本屋さんにはあふれていて、でも、そのどれもが効かなかった先(あるいは試してみる元気すらなくなった先)の愚痴が飲み屋にあふれてる。
ここで紹介されているタスクシュートというのは、数多ある処方箋のひとつです。ただちょっと他と違うのは、一般的なタスク管理手法や時間管理手法が、「いかにたくさんのことをこなすのか」という膨張的(それは得てして夢想的)な視座から設計されているのに対して、タスクシュートは、「『この時間の中では、自分はもう、これだけのことしかできない』という冷たい事実をいかにして知るか」という、徹底した現実主義に貫かれています。
私自身タスクシュートを愛用していて(というか、タスクシュートというOSのうえで仕事をしているのですが)、これを人に勧めたときの反応でいちばん多いのは、「やろうとしていることを全部やるにはこんなにも時間が足りないのか」という驚きであり、そして多くの場合、「じゃあ、どうすりゃいいいの…」という落胆です。でもこの落胆というか、ガツンと頭を叩かれたような問題意識が芽生えないことには、「なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?」という問いに対する、夢想的ではない処方箋というのは得られないと思うのですね。
この本でも紹介されていますが、「タスクシュート」というのはあくまで方法論、考え方であって、その方法論に則った実際のタスク管理や時間管理は、「TaskChute」というエクセルベースのツールを使って実現されます。
と、説明するときには「タスクシュート」が先で、「TaskChute」が後になるのですが、実際の出自は逆です。付録の「TaskChute誕生秘話」にあるように、実際の業務上の必要に迫られて作ったエクセルベースのタスク管理ツールを「TaskChute」と呼ぶようになり、「TaskChute」の設計思想をあとから書き起こしたものが、「タスクシュート」になります。
「TaskChute」は公式サイトから無料でダウンロードしてすぐに試してみることができます。使い方についても、ネットに情報はありすぎるほどあります。たしかにちょっと癖があってとっつきにくい方法論・ツールではあるけれども、極めて本質的な思想に貫かれており、なにより「仕事の成果」を超えて「心の安寧」をもたらしてくれるものだと思うので、もっと広まってほしいなと個人的に思っています。