私は不審者じゃない

私は煙草を吸う
20歳位から現在まで結構きつめの煙草を吸っている

メンソールの煙草とか吸ってればいい女感が出るんじゃないかと思った時もあったが、結局は今日も滅茶苦茶に煙草味な煙草を根本までしっかり吸っている
物憂げに細長え煙草ふかしてマティーニ飲むアメリカのエロい女みたいになりたいんですけどね
あと「喫煙者」じゃなくて「愛煙家」って自称するの滅茶苦茶にかっこよくて憧れるけど私はそこまで人間が出来てないから称せない悔しい

その辺はまあいいとして問題は駅前とかの喫煙所で煙草吸ってる時である

私には外で煙草を吸う時、吸殻を捨てるでかい灰皿に「ごちそうさまでした」と両手を合わせて一礼してしまう癖がある

これだけ読むと何かしら思想が強めのやばいやつみたいに思うかもしれないけどとりあえず聞いてくれ

灰皿という言わば公共のごみ箱に吸殻を捨てさせてもらっているからってだけだから
感覚としては飲食店への「ご馳走さまです」とかコンビニでの「ありがとうございます」と同義だから

しかしこれを喫煙所とかでやると思いっきり「うわ………」みたいな目で見られる
もう周りの喫煙者達の目からはなんだよこいつみたいな感情が溢れまくっている

いや分かるよ
一人で喫煙所来て一人で灰皿に手合わせて礼してる若い女とか何か怖いもの
やばい人なのかなって思うもの
仮に夜中にそいつと喫煙所で二人きりになったら居心地悪いもの

電車で一人で話してたり同じ道何往復もしてる「何だかやばそうな奴」には誰でも遭遇したことがあると思う
悪とは言わないけど、そういう人達が近くを通るとやっぱり少し身構える

でも私ごちそうさましただけじゃん？？？
ちょっと「ん？」とはなるかもしれないけど、みんなご馳走さまはするじゃん？？？？？
しかもあたい達は今や肩身の狭い喫煙者
言わば同志なわけじゃん？？？同じ宇宙船喫煙号の乗組員なわけじゃん？？？？？

なのに私が喫煙所に降り立ち、煙草を吸い、吸殻を捨て手を合わせた瞬間、喫煙所内には「やばそうな奴に遭遇した時」と同じ緊張感が生まれる
同志が横目でこちらを見る
2本目に火でもつけようもんなら即刻喫煙号を降りる乗組員もいる

自意識過剰なだけの自覚はあるが、喫煙所にはいつでも私1人が取り残されている気がする

強いこだわりも無いし変な自覚は重々の重々にあるので極力やらないようにしている
してるけどやっぱり癖ってものはふとした時に出てしまうから癖なのだよワトソン君…………
許してワトソン君…………

ここまでは私の気持ち悪い癖と自意識による自業自得似非不審者認定としてまあ甘んじて受けられる

問題はここからだ

私はよく平日の昼間に公園でブランコ漕ぐ

いや待って
分かる
分かるよ
言いたいことはとても分かるよ
だから1つずつ丁寧に言い訳をさせてくれ

まず有権者の皆々様に訴えたいのは、私が人気が無い公園を選んでいるという点である

流石にお子様が活発に遊んでいらっしゃる中で昼間からブランコ漕いでたらそりゃあもうって感じだし、そもそもお子様方を押し退けてまでブランコに跨ろうとする程私は外道じゃない

「人気が無い公園」、そしてメインターゲットである休日や下校後のお子様と使用時間が被らないように「平日の昼間」

完璧だ
周りに公園で遊びたそうなお子様も居なければ談笑するご老人も居ない人っ子1人居ない公園
20歳越えてブランコを漕ぎたい欲求を満たすためには公園探しと時間帯の配慮が必須なのだ
誰にも迷惑をかけていない
誰にも不快な思いをさせていない

なのに

なのになぜ犬の散歩中のご婦人は私を訝しい目で見つめる

なぜ買い物帰りと思しき青年は私を見て目をそらす

ただブランコに乗りたかっただけなのに
ただブランコが好きなだけなのに

いやしかし仕方がない
若い女が平日の昼間から1人でブランコ漕いでたら不審に思われてしまうのはもう仕方のないことなんだろう
虚ろな目で一心不乱にブランコ漕いでる大人なんて不審に決まっているんだろう
私がもっと笑顔で漕いでたらよかったんだろうか
いやそっちの方が怖いか

そう思って私はブランコを降りた
これで近隣の皆さんの平和が少しでも強固になれば私もうれしいです

でも「何今の人〜〜怖〜〜い😅😅😅」って言いながら通り過ぎて行った歩き煙草カップル、お前らだけは絶対に許さないからな

私は煙草を喫煙所で吸うし吸殻を道に捨てないので確実に奴らより人間が出来ているに違いない

私は不審者じゃない

今日から愛煙家だ