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道警「ヤジ排除」事件、裁判やります。

 さて、日々寒くなりゆく毎日ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。もうすぐ「ヤジ排除」事件から5ヶ月が経過しますが、未だに道警から法的根拠に関する説明は一切ありません。ヤジポイの面々はこたつに入ってミカンを食べています。食べながら怒っています。道警と、警察庁と、そして安倍の不正義に。

 このような状況の中が続く中で、ただ待っているだけではラチがあかないと考えた私たちは、12/3付で新たな行動を起こしました。裁判です。古風な表現を使えば、法廷闘争です。

(裁判の訴状、告訴状はこのページの一番下にアップロードしてあります。お急ぎの方はそちらからどうぞ)



裁判の種類

 一般的に、裁判には民事と刑事があります。

 今回行う裁判は、民事裁判の一種である国家賠償請求訴訟(国賠)というものです。国家権力の違法行為などについての責任を問い、その被害について賠償を求めるものです。これについては、訴状を札幌地裁に提出しました。

 そして、今回提起したもう一つは、告訴です。こちらは刑事事件に関する手続きで、札幌地検に提出しました。
 一般的な刑事事件の流れとしては、当事者の被害届や、事件についての情報を元に警察が捜査を開始し、(現行犯、あるいは逮捕状に基づいて)容疑者を逮捕・勾留し、取り調べ、それを元に検察が起訴するかどうかを決める。逮捕・勾留されても起訴されなければ、釈放されておしまい。
 しかし、事件を起こしたのが警察のような立場の場合、警察に被害届を出すというのはあまりにバカらしい話です。道警に行って、道警の警察官による被害を訴えて、道警の警察官から事情聴取を受ける。それで公正な処理がされるとはとても思えないからです。

 そのため、警察が積極的に動かない事案について、捜査し、刑事罰を与えることを求める場合、「これこれこういう被害を受けたので、その事件について捜査しろ。容疑者を起訴して、裁判しろ」と求める手続きが必要になります。それが「告訴」です。「刑事告訴」と呼ぶ場合もあります。今回、告訴状は札幌地方検察庁に提出しました。これがきちんと受理され、そして捜査が進めば、道警を裁く刑事裁判に移行するはずです。

(これまで札幌地検に提出されていたものは、ヤジ排除の被害について第三者が訴える「告発状」でした。被害を受けた本人が提出する場合は「告訴」、第三者が出すものは「告発」となります。こういうことも一つ一つ勉強している最中です)

 ややこしい話ですが、今回はこの二つの手続き(民事事件としての国賠提訴と、刑事事件としての告訴)をまとめてやった形になります。なお、今回は最初に強制排除された大杉雅栄の一名のみの提訴・告訴ですが、今後、追加提訴などをすることも計画しています。

論点(1) 告訴の場合

 では、今後裁判を行うにあたって、何を問題として争っていくのか。まず刑事告訴について。

 刑事告訴に関しては、警察官によって行われた「ヤジ排除」という行為が、犯罪行為であることを主張しています。具体的に言うと、「特別公務員職権濫用罪(刑法194条)」、そして「特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条)」に該当していると考えます。前者は、公務員が行った違法な逮捕・監禁行為を問題とし、後者については公務員が行った暴行などを問題としています。

 7/15に札幌で行われた「ヤジ排除」は、私服・制服の警察官が、こちらの身体の自由を奪って排除していましたが、身体の自由を奪う行為が「逮捕」にあたり、また「暴行」であるということです。

 法律に詳しくない私たち一般人には違和感がありますが、人の身体の自由を物理的に奪い、動けなくすることは、法律用語としては「逮捕」にあたります。手錠をかけられたり、警察署に連行されたりすることだけが逮捕ではないのです。そして、身体接触を伴って危害を加える行為が、暴行となります。このような理屈で、「ヤジ排除」を刑事事件として扱うことを、検察庁に求めます。

(もちろん現行犯など、逮捕に相当する事由があれば、逮捕行為は正当化されますが、今回はそれが見当たらないために、違法な逮捕となります)

告訴の問題点

 今回の件については、7月に提出された告発状に基づいて捜査は既に動き出しており、そこでは札幌地検の特別刑事部(特刑)という部署の検事が担当しています。これは、政治家の汚職や、大企業の不祥事などをターゲットとする特捜部(特別捜査部)の地方版です、よくニュースで「東京地検特捜部が~」というのを耳にすることがあると思いますが、アレです。このような機関が重い腰を上げて動いていること自体に、少しワクワクします。

 「ヤジ排除」については、映像や画像などの証拠が豊富です。実行した警察官の顔も特定できている。であれば、普通それを実行した者たちは起訴され、裁判を経て有罪となる。これが法治国家としての原則のはず。


 が 、 し か し ! !


 起訴するかどうかを決める検察という組織は、(三権分立でいうところの)行政権力の一部。警察も同じ。しかも、両機関は、普段から緊密な連携と情報共有をしながら仕事をしている関係です。検察が、本来求められるべき独立性と専門性を保持してしっかりと捜査し、警察組織の非を追及することができるのか。不安がないと言えば嘘になります。
 検察庁のみなさんには、政権の意向やなれ合いなどから、毅然とした態度で距離を保った上で、忠実に職務を執行することを期待したいです。

 もちろん、不起訴となった場合、そこへ異議を申し立てる手続きもできますが、やはり裁判に持ち込めないことには話が始まらない面はあります。
 

 また、うまく起訴の流れに乗ったとして、刑事事件で裁くことができるのは、あくまで個人であり、(うまくいっても)現場の警察官のみと思われます。これまでの記事でも述べてきたように、今回の件は道警(あるいは警察庁)という組織の指示があったと考えるのが自然で、現場の警察官は、その指示に従って排除を実行しただけであると推測されます。そうした事情を考慮した時に、現場の警察官のみを裁くことが、今回の事件の本質とは思えません(もちろん、指示に従っただけであるとしても、指示が違法なら、それを実行した人も違法行為に加担していることは間違いないので、免罪はしません)

論点(2) 国賠の場合

 そこで、刑事事件としての扱いとは別に、民事裁判で行政組織としての責任を問うていきます。それが国賠訴訟です。国賠は公務員個人ではなく、あくまで組織に対して行うものです。北海道警察は地方公務員なので、今回は道(=北海道)が対象となります。

 裁判の過程においては、当日の警察活動の詳細や排除の根拠について、彼らは言い分を述べることになるはずです。この中で、警察による違法行為が認定されれば、「政治家にヤジを飛ばす市民の行為を、警察が強制排除するのは違法」という判例を残すことにつながり、違法な警察活動への抑止力となります。また、「ヤジ=選挙妨害」という誤った認識を持っている人の考えを塗り替え、「政治的な表現の自由の一つとしてのヤジ」を守ることにもつながるわけです。


が 、 し か し ! !


 国賠訴訟は9割は国が勝つというクソ制度。しかも、こちらが勝訴したとしても、賠償金自体は微々たるものになると予想されます。


 ↑この記事は、作家の目取真俊さんが海上保安庁に逮捕されたことを不当であるとして争った最近の裁判についてのもの。裁判では「逮捕は違法だった」と認定されたものの、賠償金はたったの8万円でした。なめとんのか、という話です。

それでもやる

 しかし、別にこちらもお金が目的で裁判を行うわけではない。それよりも権利とか、自由とか、そういうことが重要なわけです。

 もう相当ダメになってしまったこの国の民主主義が、ギリギリのところで踏みとどまり、少しでもマシな方向に戻れるように、裁判を通して闘いたいと思います。総勢8人の弁護団のみなさんも、ほとんど手弁当で協力してくれる形になり、感謝にたえません。

 関心のある方は、裁判の傍聴やカンパ、ニュースのチェック・拡散などでご協力をお願いしたいと思います。世論が味方することが、裁判の結果にも大きく影響しますので、どうぞよろしくお願いいたします。


 裁判所、検察庁に提出した訴状・告訴状の詳細は以下をどうぞ。今回のヤジを飛ばす行為が、なんらの法律にも抵触していないことなども解説されています。

訴状(国賠)

告訴状


新聞記事データ(2019年12月16日追記)

 親切な方が今回の提訴等を伝える記事のデータをくれました。抜粋して掲載しておきます。朝日の記事が分量が多くてすごかったです。


ヤジポイの会はカンパ(寄付)を集めております。いただいたカンパは、この「ヤジ排除」の問題に取り組む際に使わせていただきます。民主主義を守るための闘いを支える、あたたかいご支援お待ちしております。