「ヤジ排除」道警の議会答弁 全文文字起こし
2020/02/26 北海道議会 総務委員会にて
「ヤジ排除」についての道警の説明+質疑応答
入手した録音データから、ヤジポイの会が文字起こしを行いました。
(「**」表記は録音の状態から聴取困難だったもの)
議会答弁
道警本部長・山岸直人:
昨年7月15日の札幌市における自民党安倍総裁による街頭演説にかかり、警護警備中の警察官の取扱いが「ヤジの市民を道警が排除」などと報じられた件につきまして、北海道警察における事実確認結果を報告いたします。
事案の発生から本日の説明まで半年以上を要したことについては、告発状などが札幌地検に提出され、その処理の状況を踏まえつつ、事実確認を行う必要があったことなどからやむを得なかったものと考えております。道民の皆様をお待たせしたことにつきましては率直に申し訳なく思うところであります。
一般的に要人による街頭演説の際は、多数の聴衆が集まり要人が不特定多数の方と接触することが多いことから、警察においては主催者側と連絡を取りつつ、犯罪や事故につながるようなトラブルやこれに**する現場における混乱を未然に防止し、要人の安全を確保するため、必要な警察措置を講じております。今回の街頭演説に伴う警護警備においても、現場の警察官がそれぞれの現場の状況を踏まえ必要と判断した措置を講じたところであります。
北海道警察における事実確認は、7月15日の安倍総裁来道にかかる警護警備の中で、報道・意見書等さまざまな機会にご指摘いただいたことを対象にして行いました。警察官が講じた措置の類型ごとに説明いたします。
警察官職務執行法4条+5条
一つ目は、警察官職務執行法第4条および第5条に基づく措置であります。警察官職務執行法第4条においては、「警察官は、人の身体に危険を及ぼすおそれなどのある危険な事態がある場合においては、関係者に必要な警告を発し、また、特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者を、必要な限度で避難させることなどの措置をとることができる」とされております。また、警察官職務執行法第5条においては、「警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の身体に危険が及ぶなどのおそれがあって、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。」とされています。
7月15日の警護警備においては、次の二件の取り扱いが挙げられます。
一件目は、札幌駅前にて大声を上げた男性を移動させたものであります。聴衆の中で大声を上げた男性に対し、周囲から反発の声があがり、他の聴衆から拳で上腕を強く押されるなどの行為も発生するなど、小競り合いから犯罪行為が発生するような緊迫した状況となっています。警備に従事していた警察官が当該男性に大声を出さないように注意しましたが、聞き入れられなかったことから、警察官は当該男性を、警察官職務執行法第4条に基づき避難させ、かつ、警察官職務執行法第5条に基づき制止する必要があると判断し、当該男性を聴衆の中から移動させました。
二件目は、札幌駅前において大声を上げた女性を移動させたものであります。女性は興奮状態で大声で叫びながら、聴衆が密集している場所に進んでいこうとしたため、警備に従事していた警察官が近寄って声をかけましたが、当該女性は警察官を振り払うようにして、さらに前に進もうとしました。周囲からは、大声を上げる女性を睨んだり、批判的な声も上がり始めており、雑踏事故が起こったり、聴衆との小競り合いから犯罪行為が発生したりするような緊迫した状況となっていました。警察官が再び声をかけましたが、当該女性は叫びながら聴衆のほうへ進もうとしたことから、警察官は、当該女性を避難させ、かつ制止する必要があると判断し、当該女性を聴衆の中から移動させました。
警察官職務執行法5条(単体)
二つ目は、警察官職務執行法第5条に基づく措置、すなわち、犯罪を予防するための警告・制止であります。7月15日の警護警備においては、次の三件の取り扱いが挙げられます。
一件目は、三越前において大声を上げた男性を押しとどめたものであります。先程申し上げた、札幌駅前で大声を上げた男性が要人の登壇している街宣車の直近に現れ、要人に向かって大声を上げつつ、さらなる接近を図ろうとしました。警備に従事していた警察官は、当該男性が大声を出しながらさらなる接近を図ろうとしたことから、要人に危害が及ぶおそれがあり、急を要するものとみとめ、当該男性を制止する必要があると判断し、押しとどめました。
二件目は、女性の所持していた携帯電話を払いのけた男性を移動させたものであります。先程申し上げた、札幌駅前で大声を上げた男性が、北5条沿いの駐車場の金網に登って、大声を上げ、当該男性に同行していた女性が周囲の様子を携帯電話で撮影していました。かたわらにいた男性が、大声で叫ぶ男性に「選挙妨害はやめろ」と申し向けるとともに、女性の携帯電話を払いのけ、さらにその携帯電話に手をかけようとしたことから、警備に従事していた警察官は、携帯電話を払いのけた男性を制止する必要があると判断し、当該男性を女性から引き離すべく移動させました。
三件目は、三越前における安倍総裁の演説中、大声で叫んだ男性に対して、聴衆の男性がつかみかかろうとしたことから、警備に従事していた警察官が割って入り、聴衆の男性に警告を行ったものであります。
警察官職務執行法2条
三つめは警察官職務執行法第2条に基づく措置であります。警護警備の現場において、なんらかの不審な挙動をした者にたいし、警察官が、警察官職務執行法第2条に基づき、この者を停止させて質問するなどの措置を講じる場合があります。7月15日の警護警備においては、次の二件の取り扱いが挙げられます。
一件目は、地下歩行空間において、安倍総裁に背後から近づき、大声を上げた男性にたいし、警備に従事していた警察官が停止を求めて質問したものであります。
二件目は、新札幌駅前における、安倍総裁の街頭演説中、聴衆エリア内で座り込んでいた男性が所持品を背中のほうに隠そうとしたため、警備に従事していた警察官が不審とみとめ、職務質問したものであります。その際、周囲の聴衆の好奇の目にさらされないよう、男性に移動を促し、約10メートル先の店舗前において、質問を継続しております。
警察法2条
四つめは、警察法第2条の目的を達成するための措置であります。警護警備の現場において、犯罪や事故につながるようなトラブルや、これに起因する現場における混乱を防止し、要人の安全を確保するため、警察官が要人の移動経路を確保することについて、任意の協力依頼をするなどの措置を講じる場合があります。7月15日の警護警備においては、次の二件の取り扱いが挙げられます。
一件目は、警備に従事していた警察官が、プラカードをかかげていた女性にたいし、「上にあげると危ないですよ」等と注意喚起をしたり、要人の移動経路を確保するために、周囲の歩行者等に対し一時的に止まっていただいたりするなどの協力をお願いしたものであります。
二件目は、札幌駅前で大声を上げた男性がその後もトラブルを起こすおそれがあったため、警備に従事していた警察官が、それまでその男性と一緒にいた別の男性から話を伺いながら同行したものであります。
まとめ
以上の通り、7月15日の警護警備中の警察官の取り扱いは、いずれも現場の警察官が、それぞれの状況を踏まえ、法律に基づき、必要と判断した措置を講じたものであります。警察においては、不偏不党かつ公平中正を旨として職務を遂行しているところであり、特定の意見の表明を否定することはございません。このことは、意見の表明の手法によって変わることはありません。
しかしながら、これらの取り扱いに関し、告発状などが提出されたことも事実でございます。警察としてはこのことを真摯に受け止め、今後とも第一線において「状況に応じた適切な警護警備」が行われるよう、平素から警護警備に関する教養や実践的訓練を積み重ねてまいります。また、より丁寧な協力要請などにより、警護警備に対する道民の理解と協力が得られるよう、より一層努力をしてまいります。以上でございます。
傍聴者:
違法な排除あやまれ!
質疑
道議・山根理広(立憲民主党北海道連合):
いま報告のありました案件に対しまして、質問させていただきます。この問題に関しましては、本日記事にも出ておりましたけれども、私は私の立場で質問をいくつか、させていただきます。道警察は昨年、7月15日に起きた事案に対し、その後総務議員会および本会議での我が会派の質問にたいして、一貫して回答を控えてまいりました。現総務議員会で事実関係を九つの項目について説明を受けましたが、この九事案にたいする法的根拠は、以下4つと考えます。警察官職務執行法第2条、警察官職務執行法第4条、同5条、そして、警察法第2条だと考えます。また、これまでの私どもの質問に対し、「トラブル防止の観点から措置を講じた」と、繰り返し答弁してきたこと、そして、「事実確認を継続中であり、その結果を踏まえ、できるだけ早い段階に必要な説明を行う」と答弁してきたこと、また、7月15日から現在にいたる経過を踏まえながら、以下、伺ってまいります。
まずはじめに、本事案発生後7カ月以上の時間が経過していますが、なぜ今報告することになったのか。その判断と経緯についてお伺いいたします。また、報告を受けた九事案に関わった警察官は何名になるのか、まずはお伺いいたします。
道警警備部長・原口淳:
報告の判断と経緯等についてでありますが、本件につきましては、告発状などが札幌地検に提出されたことを踏まえ、その処理の状況を踏まえつつ、慎重に事実確認を行ってきたところであり、事実確認が終了したことから報告した**であります。また、事案に関わった警察官の人数につきましては、具体的な警備体制に関わるものであり、今後の警備に支障が生じる恐れがあることから、お答えを差し控えさせていただきます。
立憲・山根:
再度お聞きしますが、事案の事実関係、それも、道警察内部の事実関係の確認に7か月以上も時間がかかることは、残念ながら、道警の操作能力に疑念を感じざるを得ません。慎重に確認を行うのは当たり前ですが、すべてのつじつまが合うように時間をかけたとしか思えません。道警察が行った行為は7カ月間も確認がかかるというよりも、裏付ける法的な根拠を満たすことが難しい行為だったと解しますが、見解をお伺いいたします。
道警公安第2課長・岡田昭広:
報告の経緯についてでございますが、繰り返しになりますが、本件につきましては、告発状等が札幌地検に提出されたことを踏まえ、処理の状況を踏まえつつ、慎重に確認を行ってきたところであり、事実確認が終了したことから、本日報告したものでございます。以上でございます。
立憲・山根:
次に、7月の参議院選挙では、札幌市だけではなく、全国各地で同様の事案が惹起しておりました。参議院選挙を前に、警察庁から全国の警察に対し、警備や警護についての通達やマニュアルが配布されていたのか、お聞きします。
道警・岡田:
警察庁からの指示についてでありますが、通常、国政選挙等の前には、警察庁から選挙における警備諸対策に関する指示が出されるところであります。昨年の参議院議員通常選挙における警備につきましても、通例と同様に、警護および警戒措置の徹底、テロ等の未然防止に資する**活動の強化などの他、警護にあたっては、警護措置の内容や濫用に細心の注意を払い、警察の政治的中立性に疑念を抱かれることのないよう十分に配意する指示が出されているところであります。
立憲・山根:
再度お聞きしますが、どの選挙でも行われる同様の指示だったとのことですが、これまでの選挙で総裁に対して発せられたヤジに対しても同様の対応が取られたのか、安倍総裁以外の場合にもそうだったのか、お聞きします。さらに、全国で行われた街頭演説で、野党の党首に対してヤジがあった場合でも同様の措置をとったことがあるのか、整合性のある答弁をお聞きいたします。
道警・岡田:
警察庁からの指示についてでありますが、これまでの警護警備においても、現場の警察官がそれぞれの状況に応じて、法律に基づき、必要な措置を講じております。なお、各県における警護警備の措置については承知しておりません。
立憲・山根:
次に、7月15日の安倍総理の街頭演説にあたり、当日の具体的な警備方針や、想定される事案にたいする対処マニュアルなど、道警察として事前に計画し、現場に配置される警察官等に指示していたのかを、お伺いいたします。
道警・岡田:
現場警察官への指示についてでありますが、本件警護警備におきましては、事前に警護計画を策定するとともに、警備諸対策推進上の留意事項に係る通達を発出するなど、警備に従事する警察官に対し必要な指示をおこなっております。
立憲・山根:
最後の質問をしますが、現場警察官にたいして、警備上の必要な措置について指示をしたということは、当然、「ヤジがあったら拘束・排除を行うように」と組織的に指示をしたということになるが、それでもよいのでしょうか。
(こそこそ…こそこそ…こそこそ…すごく長い、こそこそ…)
道警・岡田:
現場警察官への指示についてでありますが、警護対象者の安全の確保や、警察の中立性の確保など、通例と同様の方針であったと承知しており、ヤジに厳しく対応するという方針ではございませんでした。以上でございます。
立憲・山根:
次に、説明を受けた九事案について、身体を拘束しその場で強制的に排除した行為を、警察法と警察官職務執行法を根拠としていますから、本事案について、公選法に想定される選挙妨害には該当しないと道警察が判断した、と解しますが、そのような理解でよろしいでしょうか。
道警・岡田:
本件事案に対する判断についてでありますが、一般論として、特定の行為が刑罰法令に触れるか否かは、犯罪捜査に関わる事柄であり、お答えを差し控えさせていただきます。
立憲・山根:
再度お聞きしますが、道警察が**の事案、まさしく現場の警察官が行った行為を、警察法と警察官職務執行法を根拠にしているということは、当然として、公選法上の選挙妨害ではないことを**に認めていると解しますが、一般論で逃げているのではないかと感じざるを得ません。そして、犯罪捜査に関わることは、今回のヤジを犯罪と捉えていれば関わる事柄であるが、今回の事案は公選法に依拠していないというのが道警察の説明で明らかでありますが、公選法の選挙妨害にたいする法的な解釈を含めて、明快な答弁をお願いいたします。あわせて、プラカードについて、当日総裁を応援するプラカードを持っていた方も多かったが、それも選挙妨害になるのかお聞きするとともに、なぜその方々と違う対応を行ったのか、不偏不党・中立公正な対応だったのか、お聞きいたします。
(こそこそ…こそこそ…こそこそ…)
道警・岡田:
本件事案にたいする判断についてでございますが、繰り返しになりますが、一般論として、特定の行為が触れるか否かは犯罪捜査に関わる事柄であり、お答えを差し控えさせていただきます。いずれにしても警察としては、刑事事件として取り上げるものがあれば、法と証拠に基づき、適切に対処をしてまいる所存でございます。なお、いずれも現場の警察官がそれぞれの状況に応じて法律に基づき必要な措置を講じてものであります。以上でございます。
立憲・山根:
一の説明についてですが、警察官職務執行法第4条1項および第5条のどの部分が適用要件に該当するのか伺います。また、その男性と聴衆とのあいだで、具体的にどのようなトラブルが発生していたのか、お伺いいたします。
道警・岡田:
資料10の1の事案マル1の、警察官職務執行法の適用要件等についてでありますが、警察官職務執行法第4条第1項では、「人の身体に危険を及ぼす等の虞のある危険な事態がある場合であって、特に急を要する場合に、危害を受ける虞のある者を、必要な限度で避難させることができる」と定めているところであります。男性は、意見の異なる多数の聴衆の中で、自らの見解を叫び続けており、それによって、現に周囲の聴衆とのあいだでトラブルが発生しており、当該男性の身体に危害が及ぶおそれのある状況であったことから、「危険な事態がある場合」と認めたもので、さらに当該男性は、意見を異にする多数の聴衆に囲まれた状況であったところ、多数の聴衆とのあいだで小競り合いに発展した場合には、収拾がつかなくなる可能性があり、その危害を回避するためには、ただちに対処する必要があったことから、「特に急を要する場合」と認めたものでああります。
また、警察官職務執行法第5条では、「犯罪がまさに行われようとするのを認めたときであって、急を要する場合に、その行為を制止することができる」と定めているところであります。当該男性は、興奮状態で、現に、周囲の聴衆とのあいだでトラブルが生じており、小競り合いをきっかけとして、暴行・傷害等の犯罪行為に発展するおそれがあったことから、「犯罪がまさに行われようとするのを認めたとき」に該当すると判断し、ただちに制止しなければ犯罪行為が行われてしまうおそれがあったことから、「急を要する場合」と認めたものであります。なお、具体的に発生していたトラブルとしては、大声を上げた男性に対し、他の聴衆が拳で上腕を強く押すなどの行為が認められたほか、周囲の聴衆から、大声を出している当該男性に対する批判的な言動が認められたものであります。
立憲・山根:
さらにお聞きしますが、警察官職務執行法第4条第1項は、まず第一に「その事物の管理者」すなわち主催者にたいして必要な警告を発することになっています。それを行ったのか。また、場所を変えて街頭演説が行われたが、駅前で起きた事案を踏まえ、主催者側に必要な警告を発し措置を講じたのかをお聞きします。さらに、ヤジの声を上げた者にたいし、周囲の者が危害を加えようとした場合、危害を加えようとした者にたいして何らかの措置を講じたのか、お聞きいたします。
次に第5条に関し、「犯罪が行われたとき」に該当すると判断したとお答えになりましたが、一方で、「ただちに制止しなければ犯罪行為が行われるおそれがあった」という答弁をしましたが、犯罪が行われるという判断、いわゆる既遂を想定するのと、犯罪行為が行われる恐れがあった、いわゆるそれ以前の未遂段階では、事の性格がまったく違うことになるが、見解をおききします。また、他の聴衆がヤジを飛ばした者に対し拳で上腕を強く押したということでありますが、そういったことがあれば、その行為を行った者にたいして必要な措置を講じたのか、お伺いいたします。
(こそこそ…こそこそ…こそこそ…こそこそ…なっげぇこそこそ)
道警・岡田:
警察措置についてでありますが、警察官職務執行法第4条第1項の「特に急を要する場合」と認め、主催者に対しては警告を発したり措置を命じたりすること無く、警察官が必要な措置を講じたものであります。また、いずれも現場の警察官が、それぞれの状況に応じて法律に基づき必要な措置を講じたものであります。
立憲・山根:
次に、テレビ映像では、その男性を警察官が取り囲み、強制的に連行しているように見えますが、事実の関係はどうだったのかお伺いいたします。
道警・岡田:
資料10の事案マル1の警察措置についてでありますが、聴衆とのトラブルに起因する危険な事態を回避し、犯罪を予防するため、警察官職務執行法第4条第1項および第5条に基づき、その男性を含む、人の身体に対する危険を避けるべく、必要な限度で措置を講じたものであります。
立憲・山根:
次ですが、2の説明についてでございますが、警察官職務執行法第4条第1項および5条のどの部分が適用要件に該当するのかお伺いします。またその女性と聴衆とのあいだで実際にトラブルがあったのか、お伺いいたします。
道警・岡田:
事案マル2の警察官職務執行法の適用要件等についてでございますが、女性は興奮状態で、大声で叫びながら、聴衆が密集する前方へ向かっており、そのままその聴衆の中に入らせれば、当該女性と聴衆との間で小競り合いが生じ、または、その聴衆と接触することをきっかけとして、暴行・傷害などの犯罪行為に巻き込まれ、当該女性の身体に危害が及ぶおそれがあったことから、警察官職務執行法第4条第1項の「危険な事態」があるものとみとめたもので、さらに、当該女性は興奮状態で大声を上げながら、声掛けをおこなった警察官を押しのけて、密集状態の聴衆の方へ向かっており、その聴衆とのあいだで小競り合い等に発展した場合には、収拾がつかなくなる可能性があり、その被害を回避するためには、ただちに対処する必要があったことから、警察官職務執行法第4条第1項の「特に急を要する場合」と認めたもので、また、当該女性は、警察官を押しのけて、前方の密集状態の聴衆へ向かっていこうとするような興奮状態であり、このままでは周囲の聴衆との小競り合い、または、その聴衆に後方から接触することをきっかけとして、暴行・傷害等の犯罪行為に発展するおそれがあり、その女性が、密集する聴衆の直近まで迫っていたことも考慮して、警察官職務執行第5条の「犯罪がまさに行われようとするのを認めたとき」に該当すると判断し、ただちに制止しなければ犯罪行為が行われてしまうおそれがあったことから、警察官職務執行法第5条の「急を要する場合」と認めたものであります。
なお、具体的に発生していたトラブルとしては、大声を上げる女性に対し、周囲の聴衆が睨みつけ、かつ、批判的な言動が認められたものであります。以上でございます。
立憲・山根:
再度お聞きしますが、女性にたいする排除についてですが、思想信条が違う者は、お互いその考えを主張する権利があります。安倍総裁もその場にいた参議院議員候補も、自らの思いを主張していたはずでありますから、その行為は認められなければならないと思います。またその行為に批判的な言動が存在するのは、常であります。街頭演説を行おうとすれば、その声も有権者の声として受け止めなければなりません。この場合も主催者にたいし、何らかの警告や措置を講じるように命じ、主催者側がなんらかの防止策を講じたのか、お伺いいたします。
(こそこそ……クソ長い…こそこそ…)
道警・岡田:
ご質問の警察措置についてでありますが、警察官職務執行法第4条第1項の「特に急を要する場合」と認め、主催者に対しては、警告を発したり措置を命じること無く、警察官が必要な措置を講じたものであります。以上でございます。
立憲・山根:
次に、テレビ映像では、その女性が複数の警察官に取り囲まれ、もみ合いになったように見えますが、事実関係について伺います。また道警察はこの街頭演説の主催者にどのような警告を発し、必要な措置をとらせたのか、お伺いいたします。
道警・岡田:
資料10の1事案マル2の警察措置等についてでありますが、聴衆とのトラブルに起因する危険な事態を回避し、犯罪を予防するため、警察官職務執行法第4条第1項および第5条に基づき、その女性を含む人の身体にたいする危険を避けるべく、必要な限度で措置を講じたもので、また、警察官職務執行法第4条第1項の「特に急を要する場合」と認め、主催者に対しては、警告を発したり措置を命じること無く、警察官が必要な措置を講じたものであります。以上でございます。
立憲・山根:
次に、1から5の説明についてでございますが、事案の現場は、「まさに犯罪が行われようとする」状況にあったのかをお伺いします。また、法は、「その行為を制止させることができる」と規定されている通り、その範囲にとどめられているのにもかかわらず、拘束や強制的な排除を行った法的根拠をお伺いいたします。
道警・岡田:
警察官職務執行法第5条の措置についてでありますが、事案マル1におきましては、男性が興奮状態で、現に周囲の聴衆との間でトラブルが生じており、小競り合いをきっかけとして、暴行・傷害等の犯罪行為に発展するおそれがみとめられました。
事案マル2におきましては、女性は、警察官を押しのけて、前方の密集状態の聴衆へ向かっていくような興奮状態であり、このままでは、周囲の聴衆との小競り合い、またはその聴衆に後方から接触することをきっかけとして、暴行・傷害等の犯罪行為に発展するおそれがみとめられました。
事案マル3におきましては、札幌駅前で避難・制止の措置を講じた男性が、三越前の街頭演説場所で、安倍総裁の登壇する街宣車の直近に現れて、突如大声を出した上、さらなる接近を図る様子がみとめられたため、その態様からして、安倍総裁に物を投げつけたり、街宣車を蹴って破壊したり、安倍総裁をはじめとした周囲の人物との間でトラブルを起こして危害を加える恐れが認められました。
事案マル4におきましては、女性の携帯電話を払いのけた男性が、さらにその携帯電話に手をかけようとし、器物損壊等の犯罪行為に及ぶおそれがみとめられました。
事案マル5におきましては、三越前において大声を上げた男性に対して、聴衆の男性がつかみかかろうとしており、暴行・傷害等の犯罪行為に及ぶおそれが認められました。
いずれの事案も「犯罪が行われようとする状況」と認められ、事案マル1、マル2につきましては、警察官職務執行法第4条第1項および第5条に基づく。また、事案マル3、マル4およびマル5につきましては、警察官職務執行法第5条に基づき、必要な限度で措置を講じたものであります。以上でございます。
立憲・山根:
次ですが、6,7の説明にたいして質問させていただきます。この事案について、警察官職務執行法第2条のどの部分に、適用要件に該当するのか、お伺いいたします。また具体的な行動のどの挙動が根拠となっているのか、お伺いいたします。
道警・岡田:
資料10の1事案マル6およびマル7の警察官職務執行法の適用要件等についてでございますが、警察官職務執行法第2条は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問させることができる」と定めているところであります。
事案マル6につきましては、男性は安倍総裁に背後から接近し、その直近で突然大声を出し、安倍総裁への危害のおそれがあったことから、当該男性を警察官職務執行法第2条の適用要件に該当するものと認めたものであります。
また、事案マル7につきましては、他の聴衆が全員立って演説を聞いているなか、一人だけ公道の縁石に腰かけている男性をみとめ、警察官が近づいていくと、当該男性がやにわに膝の上に抱えていた袋を背中の方に隠そうとしたことから、何らかの危険物を所持しているのではないかと思い、当該男性を警察官職務執行法第2条の適用要件に該当するものと認めたものであります。以上でございます。
立憲・山根:
次の質問ですが、説明の8,9について質問いたします。警察法第2条2項ですが、「その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」とされていますが、当日の拘束・強制的排除は、この法の規定を順守する立場で行ったと言えるのか、とお伺いいたします。また、「警察法第2条の目的を達成するために措置を講じた」とした理由についてお伺いいたします。
道警・原口:
警護現場における警察措置等についてでございますが、警察におきましては、「不偏不党且つ公平中正を旨とし」て、職務を遂行しているところであり、本件につきましても、現場の警察官がそれぞれの状況を踏まえ、法律に基づき必要な措置を講じたものでございます。
資料10の1の事案8につきましては、女性に一時的につきまとって…あ、失礼しました、女性に一時的に止まっていただいたのは、まもなく安倍総裁が車両に乗るため、女性の前を徒歩で通過する予定であったことから、その移動経路を確保するため協力をお願いしたものでございます。また、別の場所においてプラカードをかかげていた女性に対し、「上にあげると危ないですよ」と声をかけたのは、当該女性が大きなプラカードをかかげていたため、転倒のおそれや、風にあおられて歩行者にぶつかるおそれがあったことから、注意を行ったものでございます。
資料10の1の事案マル9につきましては、札幌駅前で大声を上げた男性が、その後もトラブルを起こすおそれがあると認められたため、それまでその男性と一緒にいた別の男性から話を伺いながら、同行したものでございます。以上でございます。
立憲・山根:
最後の質問になりますが、憲法第21条では表現の自由が保障されています。表現の自由は、道徳心と、いつどこで何を表現するかについては、表現者にも十分な考慮が必要と考えますが、道警察においては、今後選挙時における警備警護の現場において、ヤジやプラカードについてどう対応するのか、また今回の事案に対し、表現の自由の観点から、意見をお伺いいたします。
警備部長・原口:
7月15日の警護警備についてでございますが、当日の警備中の警察官における取り扱いは、いずれも現場の警察官がそれぞれの状況に応じて法律に基づき必要な措置を講じたものでございます。道警察としては、不偏不党且つ公平中正を旨として職務を遂行しているところでございます。特定の意見の表明を規制することはございません。このことは意見の表明の手法によっても変わることはございません。以上でございます。
立憲・山根:
再度質問しますが、この質問は表現の自由に対する道警察の見解を質問しています。そして「道警察として、特定の意見の表明を規制することは無い」と答弁していますが、なぜ、現場で拘束・排除された者が、「表現の自由を保障されている。何かの法に違反しているのか」と問うた時にたいし、それには答えず、「周りの迷惑になるから」と説明をしたのでしょうか。排除行為は、単に安倍総裁とその支持者に迷惑になるということのみであったことを、現場にいた警察官が認めたことになると考えます。また、ヤジがあったら排除することが、道警察の組織的な指示であったことを如実に物語る言葉であると思います。この問題は、本会議の代表質問等で再度質問することを申し上げて質問を終わらせていただきます。
傍聴者:
警察あやまれ!
(終了)
原田宏二さんによる解説
これで議会でのやりとりは終わりですが、これで終わりにするのも癪なので、元道警幹部の原田さんの朝日新聞でのコメントを引用させてもらうことで、ツッコミにかえたいと思います。
ヤジ排除問題をめぐり、北海道警の元釧路方面本部長で警察組織に詳しい原田宏二さん(82)が朝日新聞の記者とともに26日の総務委員会を傍聴した。
原田さんは委員会室のもっとも後方にある傍聴席に腰掛けた。六法全書から、警察官職務執行法の部分を切り取り持参した。「避難等の措置」「犯罪の予防及び制止」をそれぞれ定めた4、5条に蛍光マーカーで線を引いて、山岸直人本部長の答弁を聞いた。
原田さんは「警職法4条と5条を持ち出すのは、私は無理筋だと思っていたので出してきたのには驚いた」。理由として「4条では『警告』の要件を『極端な雑踏等危険な事態がある場合』などとしているが、現場にそうした状況はありましたか? まずそこがおかしい。まして4条の『避難させる』要件はもっと厳格で『急を要する場合』だが、急を要していましたか? 当事者の説明、動画、報道を見る限りそうした事実は確認できましたか?」と疑問を投げかけた。
道警が法的根拠とした5条についても首をかしげた。「この現場でまさに行われようとした犯罪とは何だ。道警は、しきりに暴行や傷害のおそれがあったと説明しているが、具体性、客観性に欠ける。警告の要件でさえあったとは思わない。さらに、ある程度の実力を使って制止するとなれば、人の生命、身体に危険が及ぶおそれがあり、急を要することが要件だが、そんな状況だったのか。無理やりこの条文にあてはめようとしていて非常に苦しい答弁だ」と批判した。
何より気になる答弁があった。「現場の警察官の判断だったと強調していた。これは組織として指示していないんだと言いたかったからだろう」。そして「警察官は上官の命令を受けて職務執行に当たるのが鉄則だ。ましてや首相の警護警備で現場の警察官が自分の判断だけで行動することはありえない。必ず命令で動いている」と説明した。
さらに現職だった約30年前、旭川中央署長として首相の警護を仕切ったことを思い出し、道警の組織性がないとの説明に強く疑念を抱いた。「当時の警備も計画段階から方面本部や道警本部などと準備して上からの指示で計画が二転三転したこともあった。組織的に計画するのは当然で、現場の警察官の判断でヤジ排除などができるような話のはずがない」と言い切る。
道警が法的根拠を示すまで7カ月以上かかったことについては「私の体験で言うと、事実関係を調べる内部調査は即日やりますよ。警察庁に報告しなければならないから。マスコミからの取材にも説明しなければならない。それをこんなに時間がかかっていたら話にならない」。そして続けた。「結局、答えようがなかったんですよ。事前に法的根拠なんか考えていなかった。だから説明も二転三転した。後付けなんです。警察が法的根拠のないことを平気でやる。これはある意味おそろしいことです」と話した。
原田さんが、答弁をメモしたノートは10ページ近くになった。「道警の説明は苦しいが、道議の質問も甘かったので白熱しなかった。はがゆく、がっかりしました」(朝日新聞道内版 2020年2月27日記事より)
(去年8月にやったデモのプラカード)
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