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刑事事件としてのヤジ排除問題 の動向(検察審査会、付審判請求)

 ここ数ヶ月の間に、ヤジ排除問題にはいくつかの動きがありました。

概要

 ヤジ排除問題については、民事事件としての方向性と刑事事件としての方向性があり、民事事件としては国家賠償請求(国賠)訴訟に取り組んでいます。


 それとは別に、刑事事件については2020年2月および6月に、札幌地検によって「罪とならず」として不起訴処分が出ていました。「警察官による排除行為は適法のため、罪にならない」とのことです。


 しかし、このような決定には納得ができないので、不服を申し立てる手続きを2つとりました。一つは検察審査会への審査申し立て、もう一つは付審判請求です。

 ヤジ排除の件では、男性(大杉)に対する排除行為、女性(桃井)に対する排除・つきまとい行為の二件について告訴し、そして両方とも不起訴となった。だから、それぞれについて不服を申し立てています。


 今回、大杉の件について、検察審査会・付審判請求の結果が出ました。しかし、結果はどちらも道警の主張をなぞっただけの不当なものでした。


2020年10月21日 検察審査会が「不起訴相当」決議(大杉の件)


 札幌検察審査会は21日、排除された男性から特別公務員職権乱用などの容疑で告訴され、札幌地検が不起訴処分とした複数の警察官について、「不起訴相当」と議決した。
 議決によると、警察官らは昨年7月15日、札幌市中心部の演説会場で警備活動をする際、前首相に「帰れ」などと声を上げた同市北区の団体職員大杉雅栄さん(32)の体をつかみ、移動させるなどしたとされる。
 検審は、大杉さんが前首相の支持者から拳で腕を押されていたと認定。「けんかの危険性が迫っていると判断できた」と指摘し、警察官職務執行法を根拠に大杉さんのみを移動させたのもやむを得ないとした。大杉さんが「ばか野郎」と侮辱的な言葉を連呼したりしたとも認め、暴行などに及ぶ危険性が高いと判断でき、「警察官の職務執行は許容できる」とした(北海道新聞の下記記事より抜粋)


 検察審査会は、裁判員裁判と同様、ランダムに選ばれた一般市民が集まって開かれる会で、検察の決定について第三者の立場から検討し、その妥当性を判断します。決定内容によっては、強制的に起訴がなされることもありますが、上記の「不起訴相当」という決定ではなんともなりません。



2020年11月27日 付審判請求が札幌地裁によって棄却(大杉の件)


 続いて付審判請求について。こちらは裁判所(札幌地裁刑事第3部)が審査を行い、必要があれば強制起訴をすることもできる制度です。しかし、結果は「請求棄却」でした。つまり、裁判所としては「刑事裁判は開かない」ということです。

札幌地裁(駒田秀和裁判長)は27日、排除された男性が、警察官の行為が特別公務員職権乱用罪などにあたるとして刑事裁判を開くよう求めた付審判請求を棄却する決定を出した。男性側は札幌高裁への抗告を検討する。
 男性は札幌市北区の団体職員大杉雅栄さん(32)。
 決定によると、警察官らは昨年7月15日、同市中央区の演説会場で、前首相に「安倍辞めろ」などと叫んだ大杉さんの腕をつかみ、移動させたなどとして付審判請求された。
 決定理由で駒田裁判長は、大杉さんが聴衆から腕を押されるなどしており「大きなトラブルに発展するおそれが高かった」と認定。街宣車に駆け寄った大杉さんの行動は著しく不審で、警察官から見れば「前首相に危害を加える可能性が高かった」とし、警察官職務執行法に基づく制止は許容され得るとした。
 27日に記者会見を開いた弁護団の斎藤耕弁護士(札幌)は「排除を安易に認めれば、市民は声を上げられなくなる」と強調。大杉さんは取材に「客観的な証拠に基づく事実認定とは思えず、納得できない」と話した。道警は「コメントする立場にない」としている(北海道新聞の下記記事より抜粋)


 こちらの決定も基本的には警察の主張をなぞったものでした。

 これまで、検察や警察、公安委員会がヤジ排除問題について見解を発表することはありましたが、司法機関である裁判所が判断を下すことはありませんでした。つまり、今回の決定は「初めての司法判断」。そして、その結果は極めて不当なものでした。


決定についての受け止め


 検察審査会に関しても、付審判請求に関しても、その審査内容は外部から全くうかがい知ることができません。おそらくは、これまで検察が作成し、また収集した捜査資料・証拠に基づいて、審査をしているのでしょうが、排除された当事者を呼び出して話を聞く場面もありません。

 このような「密室」での審査については、その妥当性について疑義を挟むこともできず、文句を言うことすらできないわけです。「不当だ」と唱える以前に、そもそも中身が見えない「ブラックボックス」であり、非常にモヤモヤした気持ちが残ります。

 事実認定についても、疑いがあることについて断定しているように見える部分もあり、それらについてもモヤモヤ感が残ります。

 また、国賠訴訟を争っている最中に横槍を入れるように「札幌地裁としての決定」として棄却決定を出してくるのは、「いやな感じ」です。

 もちろん、刑事事件と、民事の国賠訴訟とでは判断基準が違います。そのため、「ヤジ排除問題は敗北した」ということではありません。今後も国賠訴訟はまだまだ続くので、ぜひご注目ください。

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