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立証責任は道警にあり! (ヤジ排除国賠第10回期日報告)

 2021年7月18日のヤジ排除裁判も無事に終わりました。傍聴に駆け付けてくれたみなさんには感謝いたします。

今後の裁判日程について


  まずはじめに次回裁判期日について。

 今回の期日の中で、証人尋問に出廷する証人が決まり、次回はついに裁判のヤマ場である「尋問」を迎えます。みなさん、ふるって傍聴にお越しください。

<裁判日程>

①9月9日   10:30- 被告側(警察官)への尋問
②9月10日 10:00- 原告側(当事者・目撃者)への尋問
(③9月13日 予備日)

上記は裁判の開始時刻ですが、傍聴のための抽選整理券配布は30分前までになっています。お間違えの内容にお願いします。

 これまでの裁判は10分程度で終わることが多かったですが、この日は午前・午後を使って尋問を行います。長丁場になりますが、どうぞよろしくおねがいします。

 

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裁判長による見解


 この日は、これまでの懸案事項だった「証人尋問に誰を呼ぶか」が一旦、決着しました。実は、証人については道警側の当初主張がほぼそのまま通った形になりましたが、この決定はヤジポイ側としても悪いものではありませんでした。どういうことか、以下に解説します。

 ここ何回かのヤジ排除裁判で話し合われたのは、「尋問に誰を呼ぶか」ということでした。尋問とは、本人や証人が法廷で発言し、それに対して弁護士や裁判官が質問するという、刑事ドラマでよく見るアレです。道警側は、現場にいた警察官4名を呼ぶといい、ヤジポイ側は「裁判で報告書が出ている警察官約20名を全員呼べ」と主張。やり取りは平行線をたどってきました。

 この日も同様のやり取りになるかと思われましたが、証人の選定に関して、広瀬孝裁判長から以下のような見解が示されました。

①本裁判における「適法性」の立証責任は道警側が負っている
②道警が数名しか証人として呼ばないのは構わないが、逆に言えばその数名で「適法性」を立証しないといけない
③なお、反対尋問に晒されていない警察官報告書は評価しない

 なんのことか分かりづらいと思いますので、順を追って説明します。

①立証責任は道警側に


 一般的に、公務員による違法行為を問う国家賠償請求訴訟では、裁判を起こす側(原告)が、その違法行為を立証する責任を負います。つまり、「公務員の行為について、その違法性をきっちり証明できなければ負け」となるわけで、これは原告の側が高いハードルを課せられていることになります。

 それに対してヤジ排除裁判では、有形力の行使(強制排除や付きまとい)が行われたことは動画などの証拠で既に明白であり、その大枠の事実自体には特に争いがない。問題は、その排除行為が警職法などの法律上の要件を満たすのかどうか、という点です。そして、この「適法(てきほう)性」を証明する責任(立証責任)はあくまで道警の側が負っている、ということを裁判長は口にしました。つまり、もしも「適法だったのだ」ということをきっちり証明できなければ道警の負けになる、ということ。これは大きな違いです。

 通常の国賠訴訟では、事実関係に争いがあって「どちらとも言えない」グレーな状態であると裁判所がみなした場合、原告に不利な判決が出るのに対して、ヤジ排除裁判では道警が不利になる。現在、この裁判で試されているのは、あくまで道警側なのです。

②道警は少ない証人で適法性を証明する必要がある

 そして、この「適法性の証明」を行う上で鍵となってくるのが現場の警察官の証言です。特に尋問の中で「現場はこのような状況で、それゆえにこう判断し、このように動きました」という証言の首尾一貫性や説得性がテストされることになるのです。

 裁判長はこうした枠組みを示した上で、「少ない人数しか呼ばないのはいいけど、裁判所としてはその少ない証言を元に適法性のテストを行います。それでいいんですね?」と問うたわけです。これは道警の弁護人にとってはプレッシャーになったのではないでしょうか。

③警察官報告書の位置づけ

 「反対尋問に晒されていない警察官報告書は評価しない」というのはどういう意味でしょうか。これは道警側がこれまで大量に提出してきた警察官報告書をどう扱うかということです。

 ②でも述べたように、裁判長は「あくまで尋問を通して証言の説得性、信ぴょう性をチェックする」という態度を示しています。逆に言えば、「尋問によって内容のチェックができない報告書は、事実認定や判決文を書く際の参考にできない」ということです。裁判長の言葉を借りれば、「よほどのことがない限り事実関係の認定の基礎には置かない」ということ。
 道警さん、わざわざ作成した報告書が無駄になって残念でしたね。


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(道警側の提出証拠リスト。警察官の報告書がたくさん載っている)


 最終的には、道警側から警察官4人(うち一人は体調に問題があり、出廷の日時等は未定)、ヤジポイ側から4人(原告2人と、証人2人)の計8人に対して尋問を行うことが決まりました。なお、今回採用されなかった警察官に関しては、証人としての採用「却下」ではなく「保留」で、今後の進行の中で、裁判所が必要と判断した場合には追加で呼ぶこともありうるとのことでした。

まとめ


 ①~③をまとめると、道警としてはこれまで提出してきた報告書がほとんど役に立たず、あくまで少人数の証人で排除が合法であると証明しないといけない、ということです。
 「疑わしきは被告人の利益に」という「推定無罪の原則」は刑事裁判の基本ですが、少なくとも今回の民事裁判には当てはまらないということです。わかりやすく言えば、「疑わしきはヤジポイの利益に」なるということなのでしょう。

 裁判官という人々が内心でなにを考えているのかはわかりません。しかし、法廷でのやりとりを見ている印象としては、広瀬孝裁判長からは冷徹な印象を受けないし、柔らかい態度でお互いの話を聞く誠実さを持っているように感じます。その上で、道警に対して不利に思える「指針」を示してきたので、こちらとしては言うことはありません(などと言って油断しているとひどい判決が出たりするものですが……)


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広瀬孝裁判長(HTBのニュース映像より引用)


 今後、道警側としては少ない証人に猛特訓を施して、証言を固めてくる可能性が高いでしょう。原告側弁護士としては、それをいかに崩していけるのかが問われます。その意味で、決して安心することはできません。

 しかし、今回のやり取りで今後の予定や見通しが固まってきたように思います。今後は、ヤジポイ側も尋問に向けて対策を練りたいと思います。

 今後とも、ご注目ください!

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