私も思い出の街も変わっていく。
懐かしいなぁという感覚は、思い出と何かがセットになって発生している気がする。
当時よく聴いていた音楽だったり、よく食べていた定食屋さんのご飯、あの子がつけていた香水…etc。五感が刺激されたものが記憶となって残っていて、ぼんやりとその頃の感覚が戻ってくるのかなと思う。
つい先日のこと。
ロゴ制作でお世話になった社長さんが、別のお店をオープンされるということを伺い、プレオープンにお邪魔することに。
ロゴを担当したお店 「Rural Coffee.」
<1杯のコーヒーから都市と地方を結ぶ>
お店の雰囲気はコンセプトそのもの。
東大前駅ほど近く。お近くの方は是非 :)
SNSをチェックしてみると、名前もお店の雰囲気もすごくかわいらしい!
これはもう行く前からワクワクである。
micro craft Ice cream factory 「hete」
小さなアイスクリーム工場がコンセプト。
毎日手作りのアイスが食べられる。
名前もまたかわいいです…。
どこら辺かな〜と住所を調べていると、渋谷の富ヶ谷周辺とのこと。
ふむふむ。もうここ数年は渋谷方面に足を運ぶ機会が少なくなっていたけれど、あの頃の感覚がむくむくと湧き上がってきた。
「よし…“あの街“から向かってみようかな。」
「あの街」とは、渋谷区桜丘町。
私が大人になって最も長く通った思い出の街だ。
お店までは代々木公園へ向かうようにいけば到着できるのはなんとなくわかった。なので、とあるルートで歩いて行くことにしたのである。
(ちなみに緊急事態宣言中なので、しっかりマスク着用で余計な道草は一切しないルールだ。)
スタートは「代官山駅」から。
渋谷駅じゃないの?と、思う方もいるかもしれないが、この桜丘町は代官山方面に向かう途中にある。センター街や109がある道玄坂方面とは異なり、なんというかいい意味で渋谷にいることをあまり感じさせない。裏道も多く、のんびりしたエリアである。
少し思い出話にお付き合い願いたい。
20代半ば頃。
職種は同じだが、違う場所でも経験を積みたいと思い転職した。
その勤務先があった場所が渋谷区桜丘町だ。
名前に「桜」がついているように、桜並木になっている坂があり、毎年春になると綺麗な桜を咲かせる。
私はここで大人になってからの恩師と思える人に出逢え、共に悩んで解決しあえる同僚に恵まれ、プロデューサー(夫)とも出会いなんと結婚までするという人生のターニングポイントと言える経験をした。
職場を離れた今も交流は続いていおり、本当にありがたいことである…。
イラストを描いていこうと決めたのもこの職場で出逢った同僚の方がきっかけだった。
私でも忘れていたメモ書きに描いたイラストを、大事に集めてくれていた人だった。そのことを知った日には、お酒を呑みながら自宅で静かに泣いた。今でも思い出すと泣ける…。
そんな人たちと過ごせた職場をまずは通りすぎる。変わらない建物。雰囲気も変わっていない。ただ、中で働く人たちはずいぶん入れ替わってしまった。
あの頃よくお世話になった近くのミニストップはいつもの場所でお客さんたちを迎え入れていた。今ではもう知らない店員さんが対応中だ。
途中、お世話になったパン屋さんも元気に営業されていてほっこり。
(明日のパンを買う為という名目でここで寄り道してパンを買った。ご容赦願いたい…)
どんどん進んでいくと、ちょっとした時に反省会という名目で愚痴りながら呑んでいた憩いの居酒屋さんはもういなくなっていた。
お世話になっていた建物も老朽化の影響で取り壊しが決定した為、今はもう行き来することはなくなっていることを聞いた。
実は、この桜丘町は区画整理のこともあり沿線側のお店もほとんどなくなってしまっている。
あの頃あった本屋さんも、カフェも、居酒屋さんもみんないない。あるのは、「確かあそこにはあのお店が…」という想像だけになってしまった。
渋谷は近年特に変化を続けている大都市。
もう私には追いつけないかもというスピード感が、このエリアにも来ているのかなと思った。
そう、街は変わっていくのだ。
歩き続けた先に、小さな名所である桜並木の坂に辿りつく。ここだけはそのままの光景だった。
また今年の春もまた綺麗な桜を咲かせてくれるのだと思う。
私ももう都内にはいない。
やっていることも昔の職種とは全く異なっている。
それでも、私はまたこの街にいる。
あの頃とはまた違う縁で、このエリアからほど近い場所まで向かっているのだ。
街も人も変わっていくけれど、そこにあった感情や出会い、匂いは見えない形でそれぞれ残っていると思う。懐かしい気持ちになるというのは、もしかしたらそういう部分もあるんじゃないだろうか。
思い出話も今の私のこともまだまだ思い浮かぶし、書きたいな〜と考えているうちに「hete」さんに到着。
美味しいアイスクリームをいただきながら、あの頃の自分と思い出の街に思いを馳せる。
これからの自分と新しい街にもワクワクすると同時に、月日が経ったことも忘れないようにしなきゃな…と、歩き疲れた足が身に沁みたのだった。