
Yahoo! JAPANの“リッチ広告”に見る、ユーザーに受け入れられやすいブランディング広告のクリエイティブ
はじめに
こんにちは、デザイナーの高田です。
以前からこのnoteでは、動画視聴後の検索行動を促すための広告クリエイティブの特徴をまとめた「サーチリフトのための4原則(前編、後編)」や、Yahoo!プレミアム広告やYahoo!広告 ディスプレイ広告に動画を掲載する上で基本的に留意すべきポイントをまとめた「動画広告の4原則」など、広告クリエイティブに対するノウハウをお伝えしてきました。
今回のこの記事では、PC向けの広告商品である「Yahoo! JAPANブランドパネル」のうち、特に“リッチ広告”と呼んでいる以下の商品を対象に、「どんなクリエイティブ上の特徴を持った広告がユーザーに受け入れられやすいか」ということをお伝えいたします。
・Yahoo! JAPANブランドパネル トップインパクト パノラマ
・Yahoo! JAPANブランドパネル トップインパクト クインティ
・Yahoo! JAPANブランドパネル トップインパクト スクエア
マーケティングファネルと「Yahoo! JAPAN ブランド効果測定」について
具体的なポイントに触れる前に、マーケティング活動全般で用いられる考え方「マーケティングファネル」と、ヤフーが実施している調査「Yahoo! JAPAN ブランド効果測定」について少し説明させてください。
マーケティングに関わる方にとっては基本的な知識かと思いますが、ユーザーがある商品を購買するまでにたどるプロセスを分解し、説明するときによく用いられるモデルとして「マーケティングファネル」というものがあります。
AIDMAやAISAS、その他近年ではActionやShareの中身を分解したようなモデルもありますが、ヤフーは以下のようなモデルを参照し、それに応対する「Yahoo! JAPAN ブランド効果測定」という調査を行っています。
今回の記事では、このマーケティングファネルの各段階、つまり「広告を見てもらうユーザーの状態」別で特に留意すべきポイントを軸に、リッチ広告のクリエイティブTIPSについてご紹介できればと思います。
この記事の画像中に掲載されているリフト値は以下の条件で調査を行った結果です。
Yahoo! JAPAN自社調べ(2019年10月~2020年6月)
対象案件中、調査項目の要素があった場合の平均値とNorm値で⽐較
認知・興味関心を引きたければ、「広告の意図、商品の世界観」がわかりやすいように伝えよう
まずは、認知・興味関心を引きたい場合のクリエイティブについてお伝えします。
ウェブサイトはコンテンツを利用しに来訪するユーザーが大多数です。その中で認知していない、商品に対する知識もない状態から広告に目を向けてもらい、さらに何かを覚えてもらうことは大変です。Yahoo! JAPANのトップページで、特に目立つ形で配信されるリッチ広告においても、その課題には向き合う必要があると思っています。
では、できるだけユーザーの利用目的を阻害せず、可能なかぎり興味を持ってもらえる人を増やすにはどのようなクリエイティブを心がければよいでしょうか。
私たちの提案としては、リッチ広告の特徴である広い掲載面を活用し、広告の意図、商品の世界観がわかりやすいように作ったクリエイティブを見せることがよいと考えています。
例えば、以下のようなものです。
サイドパネル上部にブランド名を配置
ページ左右端に表示されるサイドバナーの「上部」にブランド名を配置した広告は、「ブランド認知」のスコアが基準値と比較して3.1倍のリフトを見せています。
下部ではなく上部に掲載することによって、コンテンツ閲覧を阻害しないながらも、Yahoo! JAPANの閲覧開始後すぐに目に入ることから、細かなクリエイティブよりも先に、ブランディング広告を打つ上で大前提である、どんな会社が扱っている商品であるかをインプットしてもらえます。
動画冒頭2秒までにブランド名の入ったカットがある
動画冒頭5秒以内に、質問・問いかけ文言や、広告意図が伝わる文言がある
Yahoo! JAPANのリッチ広告も、動画を使用する場合「アウトストリーム」の動画広告として分類できます。そのため、動画を入稿する場合は「動画広告の4原則」のように、できるだけ早いタイミングでブランド名や興味を引くような文言を掲載することが望ましいです。離脱してしまうユーザーには最低限の情報を見せることができ、継続視聴するユーザーにはより詳しい情報を伝えることができます。
比較・検討を本気で行ってほしければ、「選んでもらうためのきっかけ」を伝えよう
次に、商品の認知はしているが、購買にあたって比較・検討段階のユーザーに、より前向きに購入を検討してもらうためのクリエイティブについてお伝えします。
購買の検討においては、ユーザーによって、商品にどういった要素を求めているのかが異なることがよくあります。これを踏まえてディスプレイ広告(運用型)を出稿する場合は、訴求やターゲット別にクリエイティブを作り分け、それぞれのクリエイティブに適したターゲティングで配信したり、一斉に配信を行ってパフォーマンスの良かった組み合わせに予算を寄せるといったことがあるかと思います。
それに対して、リッチ広告ではどのような方針を採れば良いでしょうか。こちらに対しては、選んでもらうためのきっかけ、つまり「フックになりそうな要素」ができるだけ多くの人に届くようクリエイティブを作成することが良いと考えています。
例えば以下のような表現はどうでしょうか。
メッセージの登場回数を増やす
フックになるポイントを複数回にわたって説明することにより、1つ目の訴求ワードではささらなかったユーザーにも、2つ目以降のワードには食いつくかもしれません。
メッセージの種類を多く掲載する場合、通常のバナーの広告枠では情報が過剰になってしまうケースがありますが、リッチ広告の場合は掲載面も広く、複数の掲載位置を有効に使用することにより、情報が多くても整理して見せることができます。
キャンペーン名などのロゴをサイドバナーに配置
サイドバナーは表示領域も大きく、商品のビジュアルやイメージを伝えるために適した場所です。文字情報に関してはロゴの配置が一定の条件付きで可能なため、LPにキャンペーンロゴを設定・掲載した上で、サイドバナーへも併せて掲載することで、ブランド名だけでなく、ユーザーによりフックとなるキャンペーン情報も訴求できます。
お得な訴求を入れる
キャッチコピーと同様に、お得な訴求は多くのユーザーに対してのフックになると推測しています。プロモーション内容によっては価格やセール訴求ができないケースもありますが、ページの中央カラムにあるセンターバナーや、ブランドパネル部分で伝えられると良いのではないでしょうか。
購入意向を高めたり、獲得につなげたければ、ユーザーの気分も盛り上げよう
最後に、比較検討も行った上で、購入意向の向上やクリックの後押しをするようなクリエイティブについてお伝えします。
この目的で広告を出す際に一番ケアしたいユーザーは、過去の広告やその他の施策によって、ある程度ブランドや商品への知識がある人たちです。その上でさらに新しい情報だけを軸に訴求しても、情報が細かくなりすぎたり、過度に説明的すぎるものになると思われます。
そこで私たちは、この段階の広告では言語的な訴求だけでなくグラフィック的な工夫も取り入れ、言語化できない魅力によってユーザーの気分を盛り上げ、商品を訴求していくことが良いのではないかと考えています。
例えば以下の表現などは、広告で伝えたいメッセージを補強することができ、ユーザーの気分を盛り上げることにつながるのではないでしょうか。
紙吹雪・光沢などの賑やかし表現がある
一見ありきたりかもしれませんが、汎用性が高くいろいろな広告で見られた表現です。写真素材がある程度決まっていても比較的取り入れやすい表現として使用できると思います。
複数の領域にまたがった大きな画像が配置されている
リッチ広告は複数の画像素材を掲載する商品ですが、それぞれの画像の表示位置を考慮してクリエイティブを作成することで、1枚の写真を大きく見せることができます。大きく画像を表示することで、商品の魅力となるポイントを、リアリティを持って細部まで見せることができます。
画像を4〜5点配置し、バリエーションを見せる
商品を大きく見せることが必ずしも魅力を最大限に訴求できるとは限らない場合は、画像の掲載点数を多くし、バリエーションを見せるのはどうでしょうか。クリック後に得られる情報の想像がしやすくなり、CTRの向上につながっているのではと推測しています。
まとめ
もう一度振り返りまとめると、広告の目的に合わせて、以下のようなポイントを抑えてクリエイティブを作成することを推奨いたします。
ぜひ、広告の目的とブランディング指標に目を向けていただき、リッチな掲載面をご活用いただければと思います。