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ヴェラキッカ感想-ノラについて-※ネタバレ注意



ミュージカル「ヴェラキッカ」を初めて見たとき、ノラの美しさ、オーラ、その不思議な存在に心を奪われ、徐々に顔を出す不気味さに背筋がぞくっとし、そして切なさ、儚さに涙を流していました。

まさに美弥さんにしかできない役でした。

想いが溢れすぎてせき止めきれないので、ノラについて考えたことを一旦吐き出させてください。

※以下、目次を含めてネタバレしかないので、未見の方はご注意ください。

 

3人のノラ


物語に登場するノラは3人いると思います。

★シオンが共同幻想で作り出したノラ

★本物のノラ

★シオンのために生まれたノラ

登場順に上げましたが、本物のノラ以外は全て幻です。

それぞれ3人のノラについて、設定や人物像を見ていきたいと思います。

 

★シオンが共同幻想で作り出したノラ


・シオンがイニシアチブを掌握しているヴェラキッカ家の人たちだけが見ている幻

・ヴェラキッカ家当主

・家訓により、ヴェラキッカ家の全員から愛されている

・シオンには見えないし、声も聞こえない

・登場するたびに服装や髪型が変わる(見ている人によって変わる?)

・行動や言動は共同幻想の中で統一されている

特にその仕掛けに驚かされたのは、登場するたびに姿形が違うことです。

明言はされていませんが、ノラを見たことのないシオンが生み出した幻のため、「愛してやってくれ」という命令通りに、見た人が愛するための理想の姿をしているのではないかなと思います。

誰が見ている姿か断定できるのは、カイのみが幻を見ている状態で登場する、立派なブロンドの巻き髪に赤い豪華な服装のノラです。女性とも男性ともつかない姿なのは、ノラの性別すら知らないことを表現しているのでしょうか。いかにも誇り高い名家の貴族といったたたずまいをして、優雅に踊る姿、カイの考える理想のキョウダイ像と本物のノラとの差に涙が止まりませんでした。

また、行動や言動が共同幻想の中で統一されているのも注目すべきポイントだと思います。

シオンが見せている幻なので、ノラに個別の人格や意思はないはずです。

ということは、この行動や言動はシオンの考えが反映されているのだと思います。

興味深いのが、このノラは誰も愛さないということです。

「愛されてみたい」というノラの願いは叶えたけれど、「誰かを愛してみたい」という願いは共同幻想の中で叶えることはないんです。

これは私の願望も入っているんですが、シオンはノラが愛するのは自分しかいないと潜在的に思っているんじゃないでしょうか。
幻想を愛するハリボテの愛ではなく、本物のノラを唯一愛している自分だけが愛することを教えることができて、「愛してみたい」というノラの願いを叶えることができる…と。
もしそうだったら、めちゃくちゃ拗らせてて最高だなっていう妄想です。

 

★本物のノラ


・光の届かない鉄の扉で閉ざされた屋敷の地下室に幽閉されていた

・世間的には死んだとされた

・後妻、シオン、ロビンのみが幽閉されたノラを知っている(カイは存在には気づいていた)

・幽閉中はシオンだけがノラの話し相手だった

・シオンの不在中に衰弱死

本物のノラが不憫すぎて辛いです。

回想のノラの発言が純粋で、無垢で、優しくて、それが更にノラの不憫さを助長させていて…。

だってカイのせいで幽閉されてしまったのに、「カイは元気?」って聞くんですよ?

成長したシオンは、しゃべり方も青年になっていくのに対して、ノラの幼さの残る声やしゃべり方がかわいくて、かわいそうで。

シオンの不在中に衰弱死してしまったというのも辛すぎます。

食事は今までと同じように与えられていたとしたら、ノラが衰弱してしまう原因は、シオンの不在ですよね。シオンは自分が居なかった「孤独」によってノラは死んだと思っているんだとしたら、辛すぎませんか?
ただ、自分を責めて、いきついた先が、「家族から愛されるノラ」という共同幻想を創るっていうのが、完全に自分本位で、最高にTRUMPでした。

 

★シオンのために生まれたノラ


・カイがシオンのイニシアチブをとり、生まれた幻

・シオンにしか見えていない

シオンのイニシアチブをとったカイは、「愛するかどうかは自分で決めたらいい」と命令します。

そうして生まれたノラの幻は、ふわふわの白髪に白い服で幼さやイノセントな雰囲気を感じさせるものでした。この姿は、愛する事を強制されているわけではないので、理想というよりも、鉄の扉越しにずっと想像していたノラなのではないかと思います。

最初にシオンがノラと対面するシーンを見たときは、「イニシアチブのこんなに優しい使い方があるの???よかった!シオンおめでとう!最高のハッピーエンド!!」って思っていたのですが、よくよく考えたらメリーバッドエンドでしたね。本物のノラの気持ちはそこには存在せず、ヴェラキッカの一族とシオンとノラの幻だけが幸せな結末。最高のメリバ!!!

 

まとめの感想

まずはじめに、ノラの限界オタクのうわ言をここまで読んでいただきありがとうございます。
ヴェラキッカは愛の物語でした!メリバだろうとなんだろうと、愛の物語でした。だいたい、実体のないものへ捧げる愛の物語が、実体のないものを愛しているオタクに響かないわけがありません。
この作品に出会えてよかったし、美弥様のノラに出会えてよかったです。

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