蛤御門で道を踏み外したらしい
会社を辞めると宣言した数日後。
夕方の休憩時間。
廊下の端っこのベンチに座り、
ひとり、ひっそりと本を読んでいた。
司馬遼太郎。
燃えよ剣。
主人公は土方歳三。
幕末のお話。
ここで唐突に運命の分岐点が出現した。
隣のグループのAさん。
グループリーダーでもあり、
全体のまとめ役でもあった。
色々あって(語りたいけど省略)、
色々とお世話になった人だった。
なに読んでるん?
栞を挟んで本を渡す。
へー、司馬遼太郎かー。
それはそれとして、
といった感じで本が戻ってきた。
辞めるんだって?
よかったら、うちに来んか?
真意は永遠の謎となったが、
なんであれ、嬉しかったのは確か。
その数分後。
また別のグループのBさん。
同じ機能の担当で、
やたら気さくな人だった。
なに読んでるん?
栞を挟んで本を渡す。
ほほう。
蛤御門か。
来島又兵衛か。
面白いところだな。
邪魔しちゃ悪いな。
と、そそくさと去っていった。
後日、Bさんに、
行くところ無かったら連絡くれよ。
どーとでもしてやっからさ。
なんてことを言われ、
どーとでもしてもらった。
Aさんの会社は名の通った大企業であった。
Bさんのは、まぁ、零細に毛が生えた程度。
ついさっき、
たまたま蛤御門という単語が目に入った。
蛤御門と聞くと、この、
私が道を踏み外した第一歩を思い出す。
思えば、変な条件ではある。
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