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再び身軽になって歩くのだ

ナイフとツェルト。

極論すれば、それだけでもいい。
たまには、そういうのもいい。

いや、そういうのがいいのだ ―― 。


中学生の頃に読んだアウトドア系の雑誌。
いまを基準にせずともかなりの硬派である。

野山を歩き。
日が暮れればその片隅に潜み。

そしてまた歩くのだ ――。

そんな記事に魅せられてしまった。
痺れてしまった。


が、実際には難しい。

さすがにテントは用意した。
シュラフは薄めにした。

身軽なのがよかった。

どうとでもなるだろう、で、
ある程度まではその通りになる。

が、それは、若さと運だろう。
ある程度からは蛮勇である。

いや、最初からか。


ナイフとツェルト、か。

ナイフは銃刀法が怖い。
刀身が短くても軽犯罪法がある。

ツェルトは、簡易テントである。
軽くて小さい。たまに欲しくなる。

が、基本的に緊急用である。
うまく扱うには経験が必要だろう。

ともあれ。

‥‥。

ああ、また、どこかへ行きたい‥‥。


よせばいいのに。

必要そうなアイテムを羅列してみる。
Excelに、だいたいの値段を入力していく。

結果は一瞬で出る。
風情もへったくれもない。

そして天を仰ぐ。
もとい、天井を見つめる。

なんと低いことか。


いや、しかし。

こんなものは、気持ち次第なのだよ!

わざわざ声に出してみる。
脳裏にはランバ・ラル。

‥‥。

なんか、もう、駄目な気がしてきた。

いや、そんなことはあるまい。
随分と小さいが、ゼロではない。

こんなことを書いている。
未練はあるのだ。間違いなく。

しかし、それよりも家族なのだ。

今は。

‥‥。

今は!

そう、今は、だ!


だから。

もう少し距離を置けるようになったら。
もう少し子供が大きくなったら。

体力だ。
筋力だ。

一朝一夕にはいかない。
長期戦だ。

時間はある。
ちょうどいいじゃないか。


ふと、なにかが囁く。

キャンプでしょ?
もう少し気楽なものでいいんじゃない?

お手軽な、
グランピングとか、河原でBBQとか。

やかましい!

いいんだよ!
ナイフとツェルトなんだよ!

そういうのが好きなんだから!!


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