#016. 初詣初逃

その昔の仕事始め。

挨拶がほんの数秒長いだけで何事もなく年末の続き。みんな黙々とモニターに向かっている。少ししてノックの音が。社長であった。

みんな、初詣に行くぞ！
‥‥は？

てなもんで、強制参加イベントである。

仕事始めは挨拶して酒をすすって昼頃に帰る。世間にはそういう会社があると聞いた。だいぶ前のことなので絶滅したかもしれない。少なくとも私は見たことがない。忘年会で大騒ぎする会社なら知っているけどともかく。

近所にわりと有名な神社があった。着いてみると大行列がぐるりと敷地を囲んでいる。境内を覗き込む。遠目に本殿が見える。少し考えた。参拝の平均時間を求めた。長蛇の列。ざっくりと数える。そして掛け算。

１月４日である。寒い。吹きっさらしである。ざっと２時間。これで風邪をひいたら労災になるのか。給与を割り算して時給を求める。作業の進捗状況はどうか。

天秤を揺らす。
うむ、帰ろう。

正月早々さっさと逃亡しましたとさ。