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糸 〜せりBDE回顧録(1)〜


2024年2月20日にバーレスクTSで行われたせりのバースデーイベント振り返り。SPパの考察だけでえらいことになったので、前編としてお届けします。

#せりは怖くない

オープンメンバーでそのパワフルでアクロバティックなポールダンスで我々を魅了するせり。最初の印象はずばり「ちょっと怖そう」だった(今となっては笑い話)
思い返してみると、たまたまの巡り合わせやと思うけど、初期にせりが心から笑ってるなーという場面に遭遇した記憶はあまりない。それでも会う回数を重ねて打ち解けていくうちに彼女の表情はどんどん柔和になっていった。そんな頃につけたハッシュタグが

#せりは怖くない

である。「孤高のポールダンサー」(個人的感想)というイメージから一皮剥けて、2023年に入ってからは色んな演目のクィーンを歴任する目覚ましい活躍の一方で「マイク嫌い」「一度笑いのツボに入ると立ち直れないゲラ体質」と色んな魅力が発掘でき、相方であり我が推しのなみと揃って来店時には居てくれないと寂しい存在である。せりのバーイベは昨年も参戦し、2代目鬼👹(キルディスクィーン)誕生の瞬間に立ち会えたわけだが、更にパワーアップしたせりが見られるはずと期待して参戦した

今だから言うけど #せりは怖くない ぶっ込んだ時内心ビクビクしてました😂

SPパ〜Prisoner of love〜

今回のSPパのコレオグラファーはようちゃん。今まで数々の作品を手掛けてきているが、個人的に1番感情揺さぶられたのは昨年のせなBDEで演じられた『PAIN OF BEAUTY』
ショーダンサーの光と影を見事に表現していた。

そんなようちゃんが創り出す新たな世界に大きな期待があった訳だが、告知の画像で一際目立ったのが今回のバースデーイベントのテーマカラー「白」の衣装に身を包んだメンバーをつなぐ赤い「糸」である。
日本人にとって赤い糸で直ぐに連想されるものと言えば「運命の赤い糸」。それだけではなく、よく考えると糸編の漢字って面白いなーと、多分にこじ付けあるけど(笑)そこはショーの感想の部分で筆者なりに表現してみたい。

そして使用される楽曲は宇多田ヒカルの「Prisoner of love」我々世代には少し懐かしい選曲だなーと思ってたら、ちょうどようちゃんが配信でこの曲を選んだ理由を話してたのを聞き、改めて歌詞を見直してみた。我々日本人は「Love」という単語から真っ先に想像するのは男女の間での愛だが、もちろん様々な人と人の間で愛は存在する、この曲の歌詞はその様々な愛の形を内包する形で成立してんだなーと今更ながらに宇多田ヒカルの凄さに感服してしまった。

少し話はそれたが、上記のような世界観でせりの今までの軌跡を辿る、という壮大とも言えるテーマ。これを調理するんだから観る側も消化不良になりかねない(とようちゃん本人も言っていた)。確かにショー全体の構成や流れを見るだけでも成立していた。しかし、このショーの本領はポイントごとに見返すことで感情の揺さぶりが何倍にもなって襲ってくる所だった。筆者も電車で見てて、不意に気づいたポイントで思わず涙しそうになる、そんなパフォーマンスでした。

ここからは歌詞ごとのパフォーマンスによる個人的な解釈です⚠️

『平気な顔で嘘を付いて笑った。嘘ばかり付いて楽ばかりしようとしていた』

冒頭のなみとの絡み。普段の通りステージに立ち踊ってる彼女たち(つまりは日常)の中で、ふとしたタイミングで手を差し伸べたなみの手を解くせり、その後交わることのない視線。意を決したせりの目線の先にはなみの顔はない。せりに激しく押し寄せる後悔。
人は時に真剣に向き合うことを恐れ、楽をする(逃げる)。それは本能であるし、過去の経験からそれが後悔を産むことを知っていても拭い切れぬ悪癖である。それは本文を読んでいる皆さんも必ず経験したことがあるでしょう。

『ないものねだりブルース みな安らぎを求めている 満ち足りてるのに奪い合う 愛の影を追っている』

一度振り解いた糸をもう一度2人で分かち合うことで「絆」とせず、専ら我が身にしまい込むことで人は「縛」られる。この縛りから解放されたい。救いを求めるように手を必死に伸ばすせり、しかし誰とも重なり合うことのない視線と指先。いつしかせりの背中を大きな闇(黒い大きな布)が覆う。
人と人の繋がりほど脆く危ういものはない。これがせりの人生の一幕だったとするならば、この無為な日々が果てしなく続くかもしれない辛く長く孤独な冬の時間だったのかと思う。そしてその先にちらつくのはショーダンサーとしての「終」の文字だったのかもしれない

『退屈な毎日が急に回り出した 貴方が現れたあの日から 孤独でも辛くても平気だと思えた』

このまま闇に覆われてしまった方が楽なのか、そんな時に現れた救世主はきっとなみだったのだろう。止まっていた歯車が再び回り出すその前の一瞬を切り取ったシーン。一点(方向)を見つめるなみ。せりの糸は私が絶対に「紡」いでみせる、そんな覚悟を感じた。

決意を秘めて真っ直ぐ前を見つめるなみ

『Oh もう少しだよ Don’t give you up Oh見捨てない 絶対に』

苦悩するせりを囲むメンバー達。前半にも同じような構図が見て取れた。ここでの象徴的な対比は歩みのスピード。前半がせりのことを気にかけない自分のスピードだとすると、このシーンはまるで「私はここにいるよ」とアピールするかのようにゆっくりと歩を進めている。そしてついに邂逅を迎えるかのようにようちゃんがせりを覆っていた闇を引き剥がす。
次に現れるのはせな。「見捨てない 絶対に」これまで幾度となくこの世界の先輩として背中を見せてきたであろうせなの力強いアクションによって、せりの手が固く握られる。4人がせりに注いだ愛が泉となって、点から「線」へ変わり始めた瞬間。

『残酷な現実が2人を切り裂けば より一層強く惹かれ合う いくらでもいくらでも頑張れる気がしてた』

それでも戸惑い・葛藤の渦にまだ取り残されている感覚に苦しむせり、そこにあの日と同じように手を差し伸べて、扉を開けてくれたのはやっぱりなみだった。もうこの手を2度と離したくはない。そんなせりの懇願を笑顔で迎えて「辛かったね。今までよく頑張ったね」とポンポンと頭を撫で、せりの一歩にそっと背中を押してあげる。その先にはジア。満面の笑みでせりを迎える。それが「おかえり」なのか「やっと来たね」なのかは分からない。でもせりを後ろから抱きしめるジアの、絶対に離さない!私たちの中に「納」まらなきゃダメなんだからね!という固い決意の抱擁だった

第2の涙腺崩壊ポイント。なみの優しい愛がせりを包み込む

『ありふれた日常が急に輝き出した 心を奪われたあの日から 孤独でも辛くても平気だと思えた I’m a prisoner of love』

5人の時間が動き出した。視線の先には大切な仲間達がいる。もう怖くはない、自らの殻を破って羽ばたいてみよう!(その瞬間にそっと腰に手を回して支えるジア)前半とは見違えるせりの躍動感と空気が一変したことを前半の寒色一辺倒から光溢れる感じ(まるでせりの心の氷🧊が溶けていく様)に照明でも表現してたのが印象的

救いの手、って真正面からきつく握る形もあれば後ろからそっと添えてあげる形もあると思う


『Stay with me, stay with me, My baby, you love me, Stay with me, stay with me, 一人にさせない』

最後に改めてなみとデュエット。前半と構図は同じであれ、何もかもが違っている。自分には安心して身を委ねることができる大切な存在があることの喜びと感謝が全ての動作に読み取れた。そこからせなの元へ。あの日の感謝を伝えたのだろうか。せなの慈しみ深い笑顔がせりを優しく包んだ。

そして最後に現れたのは告知画像の「赤い糸」この素晴らしき仲間達に出逢えた運命への感謝を胸に、そして絶対に離さないように「縫」いつける。そんな最後の表現だったと思う。

離さない。絶対に
この絆がずっと続きますように

これ書いてる途中に何度も動画見返して、その度に涙が溢れました。決して華やかで映えるショーではないと思います。でも一つ一つの動きに意味があり、オーディエンス個人が一つの解釈にたどり着ける。そんなショーにも価値があると個人的には思います

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