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好きすぎて嫌いになる

寒くなると飲みたくなるものが僕にはあった。家でも飲めて,自販機やコンビニにも置いてあって気軽に飲めるあいつ。上手く飲むためのコツがあって,そのコツをなぜか人それぞれ持ってたりする。おしるこや甘酒ももちろんおいしいけど僕は迷うことなくあいつを選んでいた。
そうです!!
「コーンポタージュ」です!!

子どもの頃は好きすぎて毎日飲んでいました。どんぶりに粉末のコーンポタージュを3つ入れて大盛にして飲んでいました。
このままでは,「コーンポタージュの飲みすぎでなんやかんやなって死んでしまう」と中学2年生の時に思い,自分ルールを作りました。コーンポタージュを飲んでいい期間を次のように決めました。
「コーンポタージュが飲める期間は1年のうちに,1月1日~家の近くの自販機からコーンポタージュがなくなるまで」

春夏秋冬いつでも飲んでいましたがこのルールを決めることで冬しか飲めなくなりました。冬しか飲めない特別な飲み物にしたせいで,飲める期間の間は信じられないくらい飲んでいました。朝昼晩。おやつ。夜食に。胃袋にすき間ができたら飲んでいました。狂っていたんだと思います。たぶんというか絶対中二病だと思います。ルールを作ってそれを人知れず守っている自分のことがかっこいいと思っていました。

このルールは簡単そうに見えてなかなか守るのが難しいものでした。コーンポタージュを選ばなければいいだけですが,自分が選択することのできない食事では残すしかないのです。給食や親戚の結婚式などこのルールのせいで大好きなコーンポタージュを残したり誰かにあげたりしていました。好きな物が目の前に出されても飲むことができないなんて,とんでもないルールを作ってしまったと激しく後悔したこともあります。

このルールは結局,大学を卒業するまで続けました。成長するにつれコーンポタージュが不意に出てきたときの断り方が雑になっていて,「コーンポタージュアレルギーです。」とよく言っていました。人前で飲まないようにして家でしか飲まなくなっていました。「隠れて飲むコーンポタージュもおいしい」とか一人でダサいことを言っていました。

コーンポタージュが好きで好きで大好きだったのに,毎年1月1日に解禁になってしこたま飲んでいたのに,突然嫌いになってしまいました。
急においしいと思えなくなってしまいました。
飲むと幸せな気持ちにしてくれていたコーンポタージュが,飲んでも一口でもういらないと思ってしまうくらい不快な物になってしまいました。
きっと中学の時の同級生に「あのルールまだ守ってるの?」と聞かれて
かっこつけて「子供じゃないからそんなルール守るわけないやん」と守ってるくせに守っていないと嘘をついたせいだと思います。
それか,単純に味覚が変わったかです。

コーンポタージュのことが嫌いになって10年ほど経ちましたが,今では飲めるけど前ほど好きではないくらいになりました。
僕がコーンポタージュを嫌いになったのか
コーンポタージュが僕を嫌いになったのか
どちらかわかりません。
好きすぎて嫌いになってしまうなんてことは,みんなが経験しているくらい当たり前のことだと思います。だから,あれだけ好きだったコーンポタージュのことが嫌いになってしまったことも大人の階段を上ったと思えばわるくないかなと思えるようになりました。

何度も幸せな気持ちにしてくれたコーンポタージュに僕は依存しすぎていたのかもしれない。これからは大人の付き合いができるようにほどよい距離感を保っていこう。

明日,自販機にあったら飲んでみよう。


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