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2023年ベイスターズちゃんとバント

ヘッダーはhttps://www.youtube.com/watch?v=UN1nSuC6gQoより


はじめに

 10月4日の対ジャイアンツ戦をもって横浜DeNAベイスターズのペナントレース全日程が終了しました。昨年度2位の実績やサイヤング賞投手バウアー選手の加入などもあり、優勝候補の呼び声も高かった今シーズンですが、結果としては3位という形に。少し残念ではありますが、2年連続のAクラスによりポストシーズンへの出場は叶いました。あきらめ悪く日本一を目指すベイスターズをいちファンとして応援していく所存です。STL最下位で暇だし。

 さて、シーズン最終戦後、9回のバント攻勢もあってか自分のなにげないツイートがちょいバズりしました。

 プチ赤味噌状態になり、この投稿への反応で埋まったXの通知を眺めていてあることに気づきました。

「阪神もバント多くね?」

 昨今ではセイバーメトリクスの観点から送りバントは否定される事が多く、行われるたびにタイムラインがデータオタクのアナフィラキシーショックで阿鼻叫喚の地獄絵図と化しています。しかし、優勝チームが多用する戦術なのであれば、それがただの逆張りということにもなり得るわけです。ということで、もう少し細かく比較してみることにしました。

ベイスターズとタイガースの比較

 ベイスターズは今シーズン142個の犠打企図で106個の犠打を成功させました。対してタイガースは125個の犠打企図で105個成功させています。企図数の差で見ると17個であり、これを多いと見るか少ないと見るかは人によるかと思います。個人的には多いには多いと思うのですが、一方で8番打者の出塁率などで投手のバント数がたまたま10個程度違ったりすることもあるのでは?とまずは考えました。

 そこで、打順別のバント数を見てみることにします。幸い(?)今年のベイスターズの先発打順で8番投手のケースはなく、またタイガースもかなり打順が固定されいていたので、精度はある程度保証されると考えています。

打順別バント数

 打順別バント数をまとめたものが上の表になります。結果としては投手のバント数はほぼ変わらないということになりました。ちなみにタイガースの先発2番は1試合を除き全て中野選手で彼自身は22-21、成功率95%と圧倒的です。すご。

 それよりも目を引くのは「タイガースは先発1,3~6番にまったくバントをさせない」ということです。
 大山選手、佐藤輝明選手、助っ人のノイジーミエセス両名などは当たり前かもしれませんが、ルーキーの森下選手や昨年度も6犠打を記録している小技の効きそうな近本選手も企図から犠打が0であるというのは衝撃的です。
 また、打席数チーム内上位10人のうちで犠打を記録したのは中野選手、木浪選手、坂本選手、梅野選手の4人で合計66-60 成功率91%(梅野選手は1-1なので実質3人です)、企犠打が記録されている野手は全部で10人でした。

 一方のベイスターズはとにかくバントがだいすきです。
 バントが記録されなかった打順は主に佐野選手、宮﨑選手が入った3番と牧選手固定の4番のみ。いわゆるクリーンアップと呼ばれる打順でもバントをさせていたことがわかります。
 打席数チーム内上位10人で犠打を記録したのは関根選手、桑原選手、京田選手、大和選手、山本選手の5人で合計63-40 成功率63%(???)です。ちなみにバウアー選手のバント成功率は71%です。全員エリックにバント習ってきなさい。また、企犠打が記録されている野手は全部で16人でした。
 余談ですが50打席以上立って企犠打0は7人いて、そのうちの1人が梶原選手。ですが三浦監督の気持ちになって考えてみると彼は足の怪我がなかったらそのうちバントしていそう。

 これらの結果はバント以前に「ベンチが信頼できる打力の野手が何人いるのか?」みたいな話に落ち着きそうなところではあります。月並みな表現ですが、打線が線になっていた今年のタイガースは強かったし、ベンチワークもそれを邪魔していなかったということなのかなと思います。クリーンアップの長さ3倍のチームには勝てん。

バントは有効だったのか?

 ベイズターズとタイガースのバントの質の差を見て個人的には割りと満足してしまったので軽くになってしまいますが、バントが有効だったのかについても考えてみます。

 まずバントの目的のひとつとして挙げられるのが「併殺の回避」です。今年のベイスターズの併殺数は103で、リーグで3番目の多さです。ただし、バントをさせなかった選手が牧選手、佐野選手、宮﨑選手、大田選手、ソト選手といった併殺の多い選手たちであること、Aクラスで同じくバントの多いタイガースは併殺が少なく、逆にバントの少なかったカープは併殺が多いことを踏まえると、特に下位打線においては併殺回避に一役買っていた可能性はあると感じます。

 また、塁状況別の得点期待値・得点確率についても触れておきます。

https://baseball-datapark.skr.jp/arekore/run-expectancy/より
左が得点期待値、カッコ内は得点確率

 これはこれで面白いな、というのが第一感としてありました。横浜ノーアウト三塁得点確率100%ベイスターズ。
 一応バントと関係のありそうなところを見てみると、ノーアウト一塁から2アウト二塁では得点期待値は微増、得点確率も5%ほど上昇、ノーアウト一二塁から1アウト二三塁では共にある程度上昇、と意外にもバントは効果的と捉えることもできなくはなさそうな数字となっています。もちろんここには1アウトからツーベースなども含まれているので一概にどうこうというわけではありませんが、方針として1アウトを捧げてでも二塁に人を置くということをした成果は単年では出ていると言えるかも。得点確率には去年からその傾向があったようなので、そういったところに今年のバント攻勢の狙いがあったのかもしれません。

でもこれはやめようね


おわりに

 実は今年のベイスターズとタイガースには面白い共通点があります。チーム打率.247、チームOPS.674がそれぞれほぼ同じなのです。ぱっと見の攻撃力は優勝チームと遜色ないのが今年のベイスターズでした。しかしチーム得点数はベイスターズが517点、タイガースが553点と大きな差が生まれています。
 「ヒットがなくても」「1点を取りに行く野球」、こういった言葉を三浦ベイスターズではよく耳にします。とはいえ内野ゴロの間に1点を取りたければ、犠牲フライで1点を取りたければ、ヒット以外で1点を取りたければ1アウト以下で三塁にいなくてはいけません。1つのアウトを二塁に送るためだけに使うバントは、手堅くなどなくむしろその先で確率.247のヒットを期待するギャンブルのようにも思えます。

 個人的に、野球の面白さはどこまでいっても運がつきまとうところにあると思います。バットをキツく振りボールに当てればなにかが起きる可能性が生まれるのが野球というスポーツです。
 今年度がFAイヤーだった柴田竜拓選手は打率.143、OPS.504と低調な成績に終わってしまいました。四球÷三振が1であること、3割前後に回帰するとされるインプレー時の安打確率BABIPが.152だったことから、不運が原因と見ることもできるかもしれません。とはいえ一度バットを寝かせてしまえば幸運を得ることはできなくなります。柴田選手は66打席で7回犠打を企図していますが、それは可能性の芽を10%多く摘んでしまっていることと同義ではないでしょうか。

 長々と書きましたが、バントの是非には様々な議論があるところです。そんななかで勝つためにそれが必要だと結論づけたのであればファンはそれを応援するだけです。来年のベイスターズがバント多用で優勝して世界中のオタクたちにごめんなさいを言わせる球団になってくれるか、バントを減らしてくれるかのどちらかを祈って筆を置きたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 

出典

犠打数などはデータで楽しむプロ野球様(https://baseballdata.jp/)より、2023年塁状況別得点確率・期待値はプロ野球データパーク様(https://baseball-datapark.skr.jp/)より引用させていただきました。


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