ろくろを回す~天ライ編~

今から六年前、私は( ^ω^)天使はライブハウスにいるようですζ(゚ー゚*ζという作品を書いた。
簡単に言うと推し活の話だ。オタクになりたてでなんもわからん状態の主人公が、周囲のオタクに教授してもらいながらチケ発を頑張ったり遠征したりガチ恋などをする。
私の代表作のような扱いになっているし自分でも気に入っている。完結してもう随分経つのにいまだに感想をいただくこともある。ありがたいなと思っている。

そもそものきっかけ

スレでも一部言及があった通り作者である私自身もオタクだ。当時は某歌手を追いかけまわしていて、九州民のくせに月三回本州に遠征するというだいぶヤベェことになっていた。
私は積極的に交流を持つタイプではなかったものの、あちこちうろついている内に自然と知り合いが増えた。私にオタクのいろはを教えてくれた人、チケ発や物販を協力してくれた人。皆優しかった。だいぶヤベェことになっていた私と仲良くしてくれるくらいなので全員ぶっ飛んではいたけど、皆と一緒にいる時間は心地良かった。

この瞬間を永遠にしたいな、と思った。
「感情には寿命がある」というのが私の持論だ。その方向が正であれ負であれ使い切ればおしまい。めちゃくちゃに湧いて最前でペンラを振っている熱量でさえいつかは消える。
好きでいられる時間は限られている。それはどうしようもなくていつか訪れる未来だと知っていたから、この最高な時間を書き残しちゃお!と思った。それが「天ライ」の始まりだった。

じゃあどうする?って話

とはいえ実際書けるんか?と不安になった。
ブーン系で推し活がテーマの作品なんて見たことがない。少なくとも私の知る範囲ではなかった。ブーン系民がオタクに耐性があるのかすらわからない。多分に脚色を加えてもオタクの狂気ぶりにドン引きされて終わる予感しかしない。
つーかオタク用語通じるんか?あまり注釈つけすぎたら白けそうだしなるべく入れたくないな。最前はギリ通じる?いけてる?なんとかなれーッ!という感じで始めた。

ちなみにのちに違う界隈の友人と話したところ、当時自分の界隈で使われていた「在宅(現場=ライブには来ない口だけのにわか野郎的な蔑称)」が友人の界隈では「音源オタク」と呼ばれており全然通じなかった。文化の違いってこういうことかと学んだ。

なんか書けた

最初は無理だと思ったものの、なんとか形にはできた。ビビりながらスレを立てたところ乙も貰えた。なんとかなった。したらばに移行して読者層がマイルドになったっぽい印象あったけど、マジでそれに救われた。VIPに投下してたらキメェとボコられて終わったと思う。
話数を重ねるうちに乙が増えた。ここが好きとかここが良かったみたいな詳しい感想を書いてくれる人も出てきて、長文をくれる人もいた。元追っかけニキ(ネキかも?)の古傷を疼かせるなどもした。元追っかけニキ(もしくはネキ)、元気かな。

その頃も追っかけは続けていて、仕事と追っかけと執筆という三足の草鞋を履いていた。私は気分が乗った時に文章を書かないと一生書けないタイプだから現場帰りの飛行機で泣きながら書き溜めをするという奇行に走ることもあった。
当時は今に輪をかけて頭のおかしいオタクだったので、遠ざかる推し(の現場)を見ながら涙を流すという状況に酔い「エモい……」と泣いていた。バカがよ。

そんな風に異常オタクムーブをかましながら執筆を続けた。幸いストーリーの展開は決まっていたので筆が止まるということもなくサクサクと書き続けることができた。
ただ追っかけのほうには陰りがあった。知り合いが何人も降りたり(注:担降り=オタク用語でファンを辞めることを指す)私自身も思うところがあり、終わりに近付いているというのは感じていた。
天ライを完結させて、たくさんの人からねぎらいの言葉を受けた。イラストもいただいたし、漫画も描いてもらった。本当に嬉しかった。
それと同時に、やっぱりどんなことにも終わりはあるんだな、と思った。だったらもういいかと思った。天ライが完結して数か月後、私は推しを降りた。執着を捨てるのって結構しんどいんだな、と知った。

そんなこんなで

オタクの話を書くのは楽しいので、他にも短編でいくつか書いた。最近の推し活ブームもあってか天ライ投下時よりすんなり受け入れられた……と思う。とはいえ私の書く話は☆オタク最高☆推し活最高☆キラキラハッピー☆的なオタク賛美が全くないので、推し活ブームの恩恵を掠め取ってる感が否めない。

(゚、゚トソン 崇高なる消費のようです
ミセ*゚ー゚)リミセリは配信者にガチ恋しているようです
( ^ω^)僕が神様を殺すまで のようです
この辺。だいたい登場人物が破滅してる。つーか今気付いたけどオタクが破滅する作品しか書いてない。
神様~は推し活作品に分類していいのか微妙なラインだけど、昨今流行りの「夢中になれるものに出会えて人生変わりました!」をクチャクチャにする話だから入れた。ひろゆきを引用するガキより逆張りえぐいな。

最近はというと、野球選手をゆるく推したり、最推しのフィギュアやぬいを作ったり、ブーン系じゃない小説を書いてみたり、本を作ってみたり、なんかいろいろやっている。楽しい。これは天ライでも書いたけど、依存先を分散するのはマジオブマジ大切なので私は常にこれを心掛けている。

天ライを読み返すたびに、ああこんなことあったな~と懐かしくなる。当たり前にすべてが体験談ではないけど、たとえば作中に登場する箱はよく通っていた場所だったり、キャラクターの台詞の一部が友人の発言を引用したものだったりする。
もはや遠い記憶になった今でも、あの時間は確かにあったんだと思うことができる。だから私は、この作品を書いてよかったと、心からそう思っている。

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