3つの切り口からつかむ図解中国経済 1.9 証券市場に関する基礎知識
ポイント
現在の株式市場は、店頭市場を創設するなど多角化が進み、時価総額が日本と並ぶ。
対外開放も徐々に進展し、世界株式指数への採用や、上海とロンドンの市場が相互接続へ上海市場の業種構成は、東証より金融・エネルギーが多く、消費や情報技術が少ない
株式取引の中心は個人で約8割だが、株式保有では一般法人が約6割
近年、債権市場が急拡大中で、残高は日本円換算で約920兆円。特に、対外開放を促進
株式市場
特殊な株式市場の形成過程
2004年には「中小企業板」が、2009年には「創業板(ChiNext)」が、2012年には店頭市場の「全国中小企業株式譲渡システム(新三板)」が新設され、2010年には信用取引と先物取引が解禁されるなど制度面の充実も進んでいる(図表-1)。
そして、中国の株式市場は時価総額で米国に次ぐ世界第2位の地位を日本と競うほどに成長した。
株式市場の対外開放
中国本土と香港で株式相互取引を可能にするストックコネクトを開始、2014年には「滬港通(香港と上海証券取引所の相互接続)」が開通、2016年には「深港通(香港と深圳証券取引所の相互接続)」が開通、そして2019年6月には、英国との間でも「滬倫通(ロンドンと上海証券取引所の相互接続)」が開通した。
また、2018年6月には米MSCI社(Morgan Stanley Capital International)が新興国株指数に中国A株を組み入れたのを皮切りに、2019年6月には英国のFTSEラッセルも中国A株を組み入れた。
MSCI社のACWI(All Country World Index)に占める中国株のシェアは2018年末時点で3.3%弱と、世界GDPに占めるシェア(約15%)と比べて極端に低いだけに、中国市場の対外開放の進捗状況を睨みながらも、中国A株の組み入れ比率は徐々に上昇していくと見られる(図表-2)。
なお、中国の対外・対内株式投資はともに概ね増加傾向にある(図表-3)。
業種構成の特色
上海総合指数の業種構成を見ると(図表-4)、東証株価指数(TOPIX)と比べ、金融では26.8ポイント、エネルギーで7.9ポイント上回る一方、一般消費財・サービスでは13.2ポイント、情報技術では5.5ポイント下回る。
世界的に影響を与える投資環境変化が起きた際に、東証と上海総合で反応が異なることがある背景には、こうした業種構成の違いもある。
さらに、同じ中国でも上海と深圳では大きく異なる。
構造改革の先行指標としても深圳市場の今後の動きが注目される。
投資家構成の特色
上海証券取引所が公表した投資家に関する情報を見ると、保有シェアでは一般法人が61.5%で過半を占めている(図表-5)。
一方、売買シェアで見ると(図表-6)、個人が売買の主役となっており82.0%を占めている。
保有でトップの一般法人は1.9%に過ぎずバイ・アンド・ホールドの色彩が強い投資家である。
中国の債券市場
債券市場の概要
中国の債券残高(人民元建て)は、中央国債登記決済有限責任公司の統計によると、2018年末時点で57兆6184億元と、日本円に換算すれば約920兆円に及ぶ規模に達した。
2008年の15兆1102億元に比べると約4倍に膨らんでいる(図表-7)。
債券種類別の内訳を見ると、2018年末時点では(図表-8)、国債のシェアが24.9%、地方債が31.4%と政府債が過半を占めている。
また、債券市場の投資家構成を見ると、商業銀行が3分の2を占める主要プレーヤーである。
しかし、域外機関と呼ばれる海外投資家は2.7%と低位に留まっている(図表-9)。
ボンドコネクト(債券通)
ボンドコネクトは、2017年7月、海外の機関投資家を対象に、香港経由で中国本土の銀行間債券市場で取引を行う制度(ノースバウンド)として始まった。
そして、これを機に中国本土の債券が国際的な債券指数に組み入れられ始めている。
また、債券取引に使う通貨は、海外の機関投資家が保有していた人民元でも、外貨を必要な都度、人民元に両替しても良く、QFII制度のように中国本土向け投資運用枠は設定されていない。
その結果、中国の対内債券投資は急激に増加してきている(図表-10)。
なお、将来的には、中国本土の投資家が香港市場で債券売買を行えるサウスバウンドも創設されて、双方向のクロスボーダー債券売買制度とする計画である。
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