5個までだもんね。
「お迎えにあがりました。」
仕事帰り、家に帰る途中にある甥っ子の家に寄った。
誕生日プレゼントを買う約束をしていたのだ。
こないだ、甥っ子に誕生日プレゼントを何がいいか、母経由で姉に聞いてもらったところ、「ばあばに頼んだからもうない。」との回答をいただいた。
仕方ないので、一緒に近所のコジマに行こうと伝えてもらったら、甥っ子から「わかった。」と返事をもらった。
今日はそんな無欲な甥っ子を欲まみれにしてやろうという魂胆である。
コジマに向かいながら、甥っ子からいろんな話を聞いた。
今日は都民の日で学校がお休みだったこと。
お昼ごはんはうどんを食べたこと。うどんはまあまあで今日の夜は大好きなマグロを食べること。
ポケモンフレンダを遊んだこと。
今日が都民の日だったことも忘れていたし、ポケモンフレンダも初めて聞くゲームだった。
コジマのおもちゃ売り場に着く。
カゴを持たせて、「とりあえず欲しいもの全部カゴに入れてみて。」と伝えた。
甥っ子は「お金たくさんかかっちゃうよ。」と恐れ慄いていた。
一瞬ビビった後、どんどんカゴの中におもちゃを入れていく。
「もうない。」とはなんだったのか。
一通り入れてもらった後、カゴを見ると、アニアの恐竜まみれのカゴが出来上がっていた。
甥っ子はアニアというフィギュアが好きなのだ。身体がバラバラに動くところがお気に入りらしい。
「この中から5個選んでいいよ。」と伝えたら、すごく吟味した後5個に選んでいた。
私はこの時侮っていた。
子どもとは、欲しいものを得るためには残酷なほど、手段を選ばないことを。
5個選んだ後、1体入りのアニアの箱を3体入りのアニアの箱のがいいなと言って交換していた。
「5個までだもんね。」と無邪気に甥っ子は言う。
実質それは7個だ。でも普段何もあげてないから、たまにはいいかと買ってあげることにする。
レジに向かう前に、自分が欲しいポケモンのフィギュアを見た。これが全ての間違いであった。
一緒に見た甥っ子は見つけてしまう。
テラスタルオーブを。
テラスタルオーブとは、ポケモンをテラスタル状態にできるオーブのことだ。
簡単に言うと、ポケモンを進化させるみたいなイメージ。
売っていたテラスタルオーブは、来る時に話していた、ポケモンフレンダで使えるらしい。
ポケモンフレンダで光るテラスタルオーブが気になりすぎて、買ってあげることにした。
「5個までだもんね。」とアニアを1個削った甥っ子に後押しされた。
しかし、ここで問題になるのは姉の機嫌である。
只今、合計金額は約8000円。
八木野家、甥っ子への誕生日プレゼント平均は3000円だ。大きく逸脱してしまってる。
アニアの棚の前でしゃがみこみ、甥っ子と作戦会議が始まった。
私「こんなたくさん買ったら、ママに怒られちゃうかもしれない。」
甥「怒られちゃうかなぁ。大丈夫だよ。(自信なさそう)」
私「甥っ子くんが怒られるの大丈夫なら買うよ。」
甥「うーん、大丈夫、怒られない。やぎのちゃんが、買うのが嫌じゃないなら大丈夫だよ。」
私「わかった。とりあえず、ババ(おばあちゃん)に買っていいか相談してみようかな。」
甥「だめだよ。そんなことしたら減らしなさいって言われちゃうよ。」
お互い責任の押し付け合いである。
甥っ子は、怒られることより、今欲しいものを買う選択肢を選んだらしい。
結局私が全てを被って買ってあげることにした。
甥っ子は家のルールで、switchなどのゲームを買ってもらえない。
お友達の誕生日プレゼントと言ったら、switchのソフトが定番だそうだ。
だったら、それくらいの金額のものを買ってあげてもいいんじゃないか。
子どもは、自分で基本的に購入権を得られない。
だから、その時欲しいものが提示されると、それを手に入れるためにあの手この手を使うのだなと思った。
思えば私も祖父に甘えて、母に内緒でおもちゃを買ってもらい、後でバレて怒られていた。
結局子どもは物欲に抗えないのだ。大人もだけど。
案の定帰って2人で怒られた。
ババに「すぅちゃん(私)も子どもの頃おじいちゃんと同じことしてたわねぇ。一緒ねぇ。」と言われた。
協議の結果、私からのクリスマスプレゼントは、私がクリスマスに甥っ子に会えないので、今回とまとめて買ったことになり、クリスマスプレゼントはなしになった。
私もクリスマスプレゼントはもらったことがない。