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映画ライド・オンはオタクの夢の詰め合わせだった

 映画ライド・オン(龍馬精神)はジャッキーチェン初主演から50周年の記念作品でもあり、日本では5月31日から絶賛公開中です。

 この映画を字幕と吹き替え計4回観たジャッキーチェン好きな女が、少しでも興味がある人が増えますようにと願いながら書いています。
13年ぶりの来日で、子供の頃から大好きだったジャッキーを生で観られた興奮で今もドキドキが止まりません。 
(核心には触れませんが多少ネタバレもあるので気をつけてください。)

初めて会えたジャッキーは本当にカッコよくて
日本のファン思いでした


一言でいうと、今作はオタクが観たかったジャッキーが詰め込まれています。

近年のジャッキー映画
 あなたのジャッキー好きはどこから?
 私は間違いなく、酔拳やプロジェクトA、ポリスストーリーなど、ジャッキーを代表する彼がスタントマンとして命をかけて演じた作品からです。ジャッキー映画と言われて、同じく全盛期の香港映画時代のジャッキーを想像する方が多いと思います。
 故に最近の作品のレビューをみると「アクションが少ない」と物足りなさを感じてる人も多い様に感じます。
 批判覚悟ですが、正直に言うと私も手放しで全てを褒めてはいません。
大前提として私はジャッキーチェンのファンです。今年は70歳のジャッキーですが、なお現役でアクションをする彼の姿に勇気をもらえます。
 ただ、ある作品で、ジャッキー扮する役がいわゆる見せ所で密室での脱出劇を繰り広げた時は悲しい気持ちになりました。(好きな方、申し訳ございません。もちろん作品としては好きです。)
その作品は、ミステリ要素もあって脱アクションを目指す試みはわかるものの「往年のジャッキーの動きはもう期待してはいけないか、つわものたちの夢のあと…。」と、いちファンとして映画館でスクリーンを観ながら苦い気持ちになったのです。
 また、近年の多くの作品は、主役はジャッキーであるものの、バディ役として若手のアクション俳優(だいたいイケメン)を器用して、派手なアクション部分はその若手に任せているイメージでした。

心の変化
 ジャッキーを追っている方は分かるかもしれませんが、何度あったか分からない引退宣言。ピンと来ない方はジブリを想像してください。だからこそ、これを観たらもうスクリーンで会えないのか…毎回腹づもりをして観る作品たち。
「映画に出てくれてるだけで幸せ、そこにいてくれるだけで感謝」という、強めな感情になっているのは確かなのです。
辞める辞める詐欺はオタクが勝手に育つんですね。
そう、彼が笑ってくれてるだけでいい
私が好きなシーンを紹介します。
 近年の作品、映画「カンフーヨガ」は最後カンフーでもヨガでもなくダンスで終わります。そう、ジャッキーが踊るのです。
ボリウッド映画の様に、数分前まで敵だった人も、敵味方関係なく全員で踊ります。
 急に真面目な顔からおどけた笑顔になるジャッキーを見てください。守りたい、この笑顔。
このシーンが大好きで何度も観てしまいます。
つまり、もう私はジャッキーにアクションは求めていないんじゃないかと思っていましたが、この映画がもう一度心に火を灯してくれたのです。

こんなジャッキーがみたかった!が詰まってる
 今回のライドオンも「ジャッキーのアクションが少ない」というレビューがついていたのですが、私はそう思いません。むしろ、近年のジャッキー作品では珍しく、アクション部分の多くはジャッキーがほぼ担当しています。(最後に供述しているのですが、果敢にアクションに挑戦する馬を操る為でもあります。)
 今作は、私たちの惚れ込んだジャッキーを魅せてくれていると思うのです。
 いいですか?目をつぶってください。飲み屋で喧嘩をして、椅子を使ったトリッキーなカンフーアクションをするジャッキーを想像してください。はーい、目を開けて。
 一対多数で相手に圧倒的アドバンテージがあるにもかかわらず、丸テーブルや椅子を駆使して敵を翻弄する、『プロジェクトA』、『奇蹟ミラクル』などでよく観たジャッキーが想像できましたか?見えましたよね?今作は、あの時のジャッキーがスクリーンに居るのです。
 借金取りのチンピラが食べ物で足を滑らせてトンチな声をあげたり、一緒に戦うと思った愛馬がいきなり腰を据えて休憩を始めたり、お馴染みのユーモアも健在です。

つまり、オタクが観たかったジャッキー
 今回、ジャッキーは香港映画界で伝説的なスタントマンとして名を馳せていた主人公を演じるのですが、完全にジャッキー自身とメタ構造になっています。
 実際に彼が挑戦してきた、地上3階から地下1階までのポール滑降、時計塔からの落下、傘を使ったバスへの飛び移りなど、様々なスタントシーンを実際に私たちにも見せることによって、すんなりとスクリーンの彼をジャッキーと落とし込めます。
 数々の体を張ったアクションをしてきたジャッキーだからこその説得力がある役ですが、全アクション俳優へのリスペクトが込められたのが今作品です。
 ジャッキーが出演してきた作品のオマージュがたくさんあるのもファンには堪らず、酔拳、THE MYTH/神話、プロジェクト・イーグル、レットブロンクス、WHOAM I?、ナイスガイなど、どこかで観たシーンや衣装で私たちの熱い記憶を掘り起こしてくれます。
 また、セルフオマージュだけではなく、ブルース・リーが演じた黒い仮面のヒーローに扮するジャッキーも観られます。
かつてジャッキーがブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』にアクションエキストラとして参加していたからですね。

 本当に個人的にグッときたのは、娘にキザと言われてしまう、歯の浮くような台詞を言う、甘いクサ〜い台詞を言うジャッキーを久しぶりに観られたこと。
 良き師ポジションを演じることが多くなった近年には無くて「これこれ!痒いところに手が届いてる〜」と唸ってしまいました。

 今作の監督、ラリーヤン監督はゴリゴリの往年のジャッキーファンで、持ち込みによって実現した作品です。(ソースは舞台挨拶より)
 どれくらいファンかと言うと、最初にアクションの掛け声をかけた後、その作品内に生きるジャッキーに見惚れてしまい、暫くカットをかけられなかったそうです…わ、分かる〜。
 セルフオマージュを嫌う方ももちろんいると思うのですが、これはここまでファンとして彼の解像度が高くなければ、実現し得ない作品だと思います。つまりジャッキーオタクの夢を詰め込んだ幕の内弁当の様な映画が完成したのです!ディープなファンからライトなファンまで楽しめます。

そしてセルフオマージュって店じまいなのでは、と焦る方へ…大丈夫です。
集大成の様な作品ですが、まだまだジャッキーは辞めへんで〜!作品をたくさん撮っており、スクリーンからの引退はまだ先だそうです。嬉しすぎる。


いや、自分はジャッキーもアクションも好きじゃないんだけど!な方へ
キャッチコピーは、「これが人生の集大成! アクションのち、涙。」
涙と入れるだけあって、随所で家族愛、動物愛、年齢を重ねてキャリアへの葛藤と、しつこいくらい泣かせにくる作品となっています。お子さんにも分かりやすい内容です。

現在は終了してしまいましたが、2週間限定で中学生までのお子さんは100円で観られる取り組みを新宿ピカデリーがしていて画期的だと思いました。こういう試みが今後も続くと嬉しいです。

 アクションについてしつこく述べたものの、実は物語は主人公の愛馬、チートゥが中心です。
そのチートゥなのですが、馬界にアカデミー賞があるならば受賞しているレベルで活躍します。劇中、間違いなく身体を張っていたのはチートゥでしょう。
 映画の本筋は、主人公が愛する息子当然の馬の所有権争い、法廷での戦いになります。
流石に法の下ではカンフーだけだとどうにもならず、(ジャッキーも法には負けるんですね。)
あることがきっかけで疎遠になってしまった娘を頼り、親子の仲が変わっていくーーーがあらすじです。
 なので、初めてのジャッキーにもぴったりな作品となっています。是非、ハートフルストーリーを劇場で楽しんでください。



最後に
飛ぶのは簡単、でも辞めるのは難しいとスタントマンとしての精神を、ある意味「依存性」の様に例えるシーンがあります。
ということで私もnoteを辞めるのは難しく、久しぶりに帰ってきました。
基本はアニメや漫画に対して感想を残していきたいなと思うのでよろしくお願いします。

指差しのあと、手でハートを作ってくれました

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