他の星から(1)
1.ひとりよがり
『自分』について
2年○組 西野七瀬
今朝、学校に来る途中、道端でアリを見ました。アリは何匹も集まって一生懸命、大きな昆虫の死骸を運んでいました。私はしゃがみこんで、上からその様子を眺めていました。死んだ昆虫。それを運ぶアリたち。それを見つめる私。私は5分くらい、そうしてアリががんばって少しずつ昆虫を運んでいく様子を見ていました。
アリはあんなに大変な仕事を文句も言わず(しゃべれない)、みんなで力を合わせてやっていました。アリの一生はどうなっているのでしょうか。働きアリとして生まれて、毎日毎日働き続けて、そのことを特に疑問に思ったりせず、いつか力尽きる時まで(もしくは他の巣のアリに噛み殺されたり、人間に踏みつぶされたりするまで)生き続けるのでしょうか。
私は、自分自身が明日も明後日も、何年先もこのまま生きていく姿が想像できません。こんな不完全な『自分』を抱えてやっていける自信がないのです。
アリのように余計なことは一切考えず、目の前のことに黙々と取り組めたらいいのに。
『自分』を変えたい。
何度もそう思ってきました。でも一体、どうやったら『自分』を変えられるのでしょうか。『自分』で『自分』を変化させる?ブラックジャック先生が自分の怪我を自分で手術したみたいに?でも心を手術することはできない。大いなる矛盾ですね。途方にくれてしまいます。
しかし、私は一つ良い方法を思いつきました。私の中から、ほんの少しでいい、『自分』から切り離した部分を作ることです。『自分』の思惑にとらわれない独立機関を。その独立機関をまず、力の強い何かによって強制的に変えてもらいます。今までの『自分』とは違う何かに。そして、その変化した独立機関が残りの『自分』をちょっとずつ、ちょっとずつ変えていってくれればいい。
そうすれば私は、少なくとも今の『自分』とは違った自分になることができるはず。ブラックジャック先生が救ったピノコが、ブラックジャック先生の心の孤独を少しずつ融和していったように。
必要なのは何らかのきっかけ。私にとってのピノコを見つけることです。それからそのきっかけを逃さず受け入れるだけの覚悟。この2つがあれば人はきっと生まれ変われるんだと思います。
あ、ところで。アリって実は砂糖とか甘いものはそんなに好きじゃないそうです。昆虫とかから摂れるタンパク質のほうがアリにとって貴重で好まれるそうです。テレビで言っていました。
常識だと思われていることでも、意外と真実は異なるってこと、ありますよね。
終わり。
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(続く)