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NEO
2017年4月23日 21:31
5.笑顔の化身 不思議なことに、2人だけの空間で沈黙が続くことに抵抗を感じる相手とそうでない相手が存在する。相手はただ黙っているだけなのに、① その人のまとう雰囲気② 普段の言動③ 匂い④ 自分がその人をどう思っているか⑤ そして、その人が自分のことをどう思っていると自分が思っているかそういったものが落ち着く相手かそうでないかを決定づけるのかもしれない。 七瀬にとって奈々未は
2016年4月4日 14:24
4.孤独兄弟 迎えの車が来る間、七瀬は家の前の道路から目の前に広がる光景を眺めていた。 いつもと同じ光景だ。しかし、まるでだまし絵を見ているときのような違和感がその中には潜んでいる感じがした。 七瀬と反対側の歩道を、犬を連れた老人が歩いている。朝のこの時間によく見かける老人だ。 その老人が連れている小型犬は、ペット服を着せられている。 七瀬はあれ?っと思った。 その老人はい
2015年7月2日 23:37
3.他の星から 落ちる時に七瀬が感じたのは恐怖ではなく、孤独であった。自由落下する七瀬の体を止められるものは何もなく、誰もその時の七瀬に干渉することはできなかった。そのことをまざまざと実感した七瀬は、今まで感じたことのないほどの孤独感を覚えた。 そして、実際には落下している時間は10数秒程度であったはずだが、七瀬にとってその時間はとてもとても長く感じた。その引き伸ばされた落下時間の中で、孤
2015年7月2日 23:35
2.私、起きる。 なぜ私は今、地上200mを超える断崖に立っているのだろう。 七瀬は訳が分からなくなった。 目下には、まるで誰かとても几帳面な人が丁寧に書き上げた精密で広大な絵画のような世界が広がっており、現実感と遠近感を失っていた。 強い風が吹きつけたとき、恐怖が七瀬のつま先からあっという間にせりあがってきて、全身を駆け巡った。 現地の若者たちが七瀬の頭にヘルメットをかぶせる
2015年7月2日 23:33
1.ひとりよがり『自分』について2年○組 西野七瀬 今朝、学校に来る途中、道端でアリを見ました。アリは何匹も集まって一生懸命、大きな昆虫の死骸を運んでいました。私はしゃがみこんで、上からその様子を眺めていました。死んだ昆虫。それを運ぶアリたち。それを見つめる私。私は5分くらい、そうしてアリががんばって少しずつ昆虫を運んでいく様子を見ていました。 アリはあんなに大変な仕事を文句も言わず