たぶん大丈夫だって
「たぶん大丈夫、たぶん大丈夫」
胸の中で呟く。ハート型の入れ物の中の、変に波打つどす黒い液体、地元の海の凪を思い出す。
「たぶん大丈夫」なんて言葉はただの気休めでしかない。高校生の頃に定期テストの直前にクラスで飛び交っていた「たぶん大丈夫」とか、酒を飲んだ後にふらっふらになりながら言う「たぶん大丈夫」とか。根拠もない、空虚な言葉だなと思う。
それでも、「たぶん大丈夫」と言ってしまう。
根拠のない言葉は私の安心材料となり、寒い朝に私を包む温いピンク色の毛布のように感じる。
しかし、根拠のない言葉で身を守っても現状の不安は拭いきれないし、むしろ不安感は空から落ちてくる焼夷弾みたいにチラチラと私を攻撃してくる。
だから「たぶん大丈夫」なんて言ってもどうしようもならないことは、何年も前からわかっている。
人と話してるときの私は楽観的な性格に見られるなと、ここ最近感じる。
「まあなんとかなるよ〜!たぶん大丈夫だよ!」
人と話していて不安になっても、その表情は見せちゃだめだ。根拠のない言葉で、自分を守れよ。でも、相手には言っちゃだめだ。根拠がないからね。自己暗示でしかないんだ。凪を想像して、温い毛布で夢を見なさい。本当の大丈夫なんて、多分来ないから。