銭湯のバイト

知らん間に夏休みが終わって、知らん間に冬用の布団を出さなきゃいけん時期になってた。
ここ最近は知らん間に泥酔して、知らん間にお気に入りのショルダーバッグの紐が切れてたり、知らん間に駅の階段で3回くらい転んでた。

そんな感じで、大学を卒業するまでに半年もないのに掛け持ちのバイトを始めた。
銭湯の受付のバイトだ。
時給1300円で、おじいちゃんやおばあちゃん、ヤクザみたいな刺青入った客たちに愛想良くするだけの簡単なお仕事。
簡単なお仕事すぎてあまりにも暇なので、最近はメモ紙で折り紙を作っちゃったりしてる。
簡単なお仕事すぎてあまりにも暇なのだが、別の学生バイトの人が年末年始帰省するので、私が代わりにバイトに入らなければいけなくなった。
年末年始に実家に帰ったとて、やることはないし、どうせ来年から地元に近いところで働くので別にいいんだ。
ただ今月週6でバイトをし、残りの1日は卒論を書き書きなので、やはり生活がままならなくなってきた。そういうことが重なると、母親の飯が食べたいなと思います。

実家はオール電化住宅だ。厳冬といわれたある年、風呂が沸かせなくなったことがあった。沸かすための機械が凍ってしまったのだ。
平日の20時過ぎのこと。風呂に入れないのは辛いから地元の温泉に行こうと、夜のドライブをした。
とても寒くて、吹雪いている。そんな平日の夜の温泉なんて本当に人がいない。はしゃいじゃってサウナに入ったり、全裸でタオルもかけずふやけるくらい寝湯に浸かったり、露天風呂で特技の平泳ぎを披露したり、母親と近況報告的な話をしたことを思い出す。
ホカホカして父親と合流し、セブンティーンアイスを買ってもらって、マッサージチェアでダラダラした。そういう非日常的な出来事にワクワクしていた。
次の日は普通に学校へ行き、帰宅すると風呂を沸かす機械は直っていた。それ以来、凍ることはなかった。

ホクホクしてるおばあちゃんが外を見て、最近は天気が悪くて嫌だねと言ってきた。
そうですね〜。寒いし、風邪ひかないようにしてくださいね。
あなた最近働き始めたの?若い人がいるとここが明るくなっていいわ。じゃあ、おやすみなさい。
1週間前からバイトで働いてるんですよ。湯冷めしないように気をつけて帰ってくださいね。おやすみなさい。
おやすみなさい。

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